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記事: 第2回:『わたし33歳、プロデューサーになったときのむかし話』

第2回:『わたし33歳、プロデューサーになったときのむかし話』
ふるさとP

第2回:『わたし33歳、プロデューサーになったときのむかし話』

25歳の夏、株式会社サンライズに入社し、制作進行、途中から設定制作として「ミスター味っ子」を担当し、設定制作として「勇者エクスカイザー」。制作デスクとして「太陽の勇者ファイバード」「地球の勇者ダ・ガーン」「勇者特急マイトガイン」「勇者警察ジェイデッカー」「黄金勇者ゴルドラン」を制作しました。そして、33歳頃「勇者指令ダグオン」の企画が始まった頃、色々考えることがあった悩み多き時期でした。アニメ業界に21歳で足を踏み入れてから32歳まで、早いもので12年ほど経っていました。わたしは、サンライズの前に、日本アニメーション、スタジオジブリを経てそれなりのキャリアがありましたが、サンライズ歴は8年くらいです。同期がどんどんプロデューサーになっていくのを見ていました。ですが、わたしは呑気ですから、早くプロデューサーになりたいと考えたこともなかったのです。でも、その当時の上司との相性があまり合わなかったのです。そこで、上司と会話をしても、アニメの企画や制作に対して違和感を感じていました。そして、ついに、当時の上司の上司である、吉井プロデューサーに相談に行ったのです。色々考えていることを話ましたら、いきなり斜め上からの言葉を発したのです。

プロデューサーになるか?と。

わたしの頭のなかは、「????」のオンパレードです。「え、この人なに言ってるんだろう?」と思いました(笑)。実は5年くらい前、吉井さんに「将来なにをやりたいか? なにになりたいか?」と聞かれて、「プロデューサーになりたいです」と答えたことがありました。そのときは「じゃあ(「ファイバード」の)デスクな。宿題としてオリジナル物の企画書を書いてこい」と言われたので、まずワープロを電気やさんに買いに行きました(笑)。徹夜して、2、3週間くらいで企画書を書いて提出しました。そんな経緯があったことを、一瞬で思い出しつつ吉井さんには、「(プロデューサーに)なりたいです」と答えました。すると当時、総務だった中川さんに会いに行けと言うのです。中川さんに会うと、3本ある企画の中から「どれをやりたい?」と問いかけてきました。わたしは、これ!と指さしたら、どれやりたい?と改めて問いかけて来るのです。……覚悟を決めて「新世紀GPXサイバーフォーミュラ(以下、サイバーフォーミュラ)」をやります!と伝えると、今度は上司の指田さんに会いにいけと。待っていた指田さんは、ニヤニヤしながら「福田(己津央)監督が書いた企画書だ、読んでおけ」と企画書をポンと手渡されました。いまでも思い出しますが、上井草駅から少し歩いたところにあったロイヤルホストで指田さんと会った記憶があります。ちなみに、いまは違うレストランになっています。

 

そして、ついに福田監督に会うことになるわけです。なにかのRPGみたいな始まりだなと思いながらも、いやいやおかしいだろう素晴らしいアイテムや軍資金をもらえたわけでも仲間が増えたわけでもないのに、丸裸で福田監督に会うの?って(笑)。あ、でも、福田さんは怖い怖い、大魔王様ではないですよ(笑)。そんなギャグみたいな展開で私のプロデューサー人生は始まりました。吉井さんは、わたしの心の奥底にあった次のステップに進みたいと言う気持ちを察したのだろうと思います。ちなみに、総務の中川さんが出した3本の企画のなか、残る2本のタイトルは伏せておきますが、どうして覚悟を決めて「サイバーフォーミュラ」だったのか?を書きます。わたしは、「勇者エクスカイザー」から上司が吉井プロデューサーになります。そして、「勇者エクスカイザー」の第1話の演出家が福田己津央さんでした。第1話の絵コンテ、演出、また、オープニングやロボットたちの変型合体を絵コンテ。演出も担当するのですが、福田さんのロボットバトルがひたすらカッコいいのです。わたしは、日本アニメーションとスタジオジブリで見てきた演出家の誰とも違う才能を持った福田さんは、「勇者エクスカイザー」の後半時期は、テレビシリーズ「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」の監督に起用されて以降活躍するのですが、この「サイバーフォーミュラ」のプロデューサーが吉井さんでした。わたしは、勝手に縁があると思いました。吉井さんの作ったアニメのOVAからプロデューサーになる。そして、ロボット、メカアクションのめちゃカッコいい演出をする福田さんが監督するわけですから、プロデューサーをやりたいと考えるわけです。ただ、この「サイバーフォーミュラ」は、当時制作状況が悪くて、外注スタッフに好まれてはいませんでした。だから、「サイバーフォーミュラ」でプロデューサーをやると言うのは、新人のプロデューサーである自分がきちんとやれるのか?と。それより、プロデューサーって何をやるんだ???と、課題が山積みでした。

 

そんなこんな経緯でOVA「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」のプロデューサーとして福田さんと一緒に作品を作っていくことになりました。本当にたいへんな作品ではあったのですが、そのおかげでいいこともたくさんありました。以降、「GEAR戦士電童」「クロスアンジュ~天使と竜の輪舞」「グレンダイザーU」と、福田さんと一緒に仕事がやれました。わたしは、福田さんの才能に対して素直に尊敬しています。また、新人プロデューサーであるわたしに、アニメの企画から脚本作り、音楽、営業宣伝などについても福田さんから教えてもらったことが多いです。面白いもので、制作進行がやれるから制作デスクが上手か?は別物です。また、制作デスクが上手いからプロデューサーがやれるのか?もまた別です。仕事はかなり似ているのですが、それぞれ役目が変わっており、違うスキルやテクニックが必要になります。また、プロデューサーになったから、教科書があるわけでもないし、参考書があるわけでもないのです。それこそ、「勇者エクスカイザー」で吉井さんが何をやっていたのか?を思い出し、進め方、フローチャートを自分なりに書いていくしかないのです。そこで、次に何をやるのかと、分からないことを一番聞いたのが、福田さんでした。福田さんはすでに、テレビシリーズ、OVA2本を経験していましたので、先輩です。ですので、音響監督との打ち合わせはどうするの?作曲家との音楽打ちって何?とか、スタッフとして誰を参加させたいのか?キャラクターの年齢が上がるのでほぼ全員を描き直したいので、キャラクターデザイン原案として、いのまたむつみさんに描いて欲しいので連絡を取って欲しいとも言われました。わたしは、名前は知っていましたが会ったことがないので、吉井さんに電話してもらって、紹介もしてもらいました。上司をこき使う新人プロデューサーです。いま考えると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。吉井さん、今更ですが、「ありがとうございます」。ここで紹介してもらったいのまたむつみさんには、舞-HiMEでは制服のデザインを描いてもらっています、起業後、たくさん企画書用にキャラクターデザインを描いてもらっています。

 

いのまたむつみさんは、2024年3月10日に天に旅立ちました。

猫が大好きな氏ですから、虹の橋の向こう側で猫ちゃんたちが迎えに来ていたのかな?って想像します。

そして、わたしは2月28日にとあるデザインの打ち合わせで会っていたのです。と言うことで、どこかでいのまたむつみさんとの思い出を書きたいと思います。

 

 兎にも角にも、新人プロデューサー1年生のわたしが、当時「サイバーフォーミュラ」という作品に関わって、楽しかったこと面白かったこと、勉強になったこと、ヨタヨタしながら奔走したことを書きたいと思います。すでにTVシリーズで人気を得て、OVAが続いて作られていたので、実績を持っていない新人プロデューサーのわたしにとっては、アニメ制作以外の部分でもさまざまな知識を得ることが出来ましたし、なによりも様々な方々と出会えたことが宝です。福田監督は言わずもがな、いのまたむつみさん、マシンデザイナーの河森正治さん、キャラクターデザイナーの久行宏和くん、メカ作監の重田智さん、作曲家の佐橋俊彦さん、エアーズ(ランティス)の井上俊次さん、ライターの両澤千晶さんなどなど、上げるときりがないですが、誰もがかけがえのない存在となっています。

さらに、ヒットすることが前提のような「サイバーフォーミュラ」という作品に最初に巡り会えたことで、貴重な成功体験を積むことができたことは、とある日の吉井さんの一言「プロデューサーになるか?」から始まっています。アニメ街道をひた走る自分にとって、ブーストがかかった忘れられない記憶です。かなり、漫画か小説のような展開なので、どこか嘘っぽいですが「事実は小説より奇なり」なのです。

 

次は、本格的に動き始めた「サイバーフォーミュラ」の制作のよもやま話。大切なスタッフ選びなど、書きたいと思います。

 

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

1961年5月3日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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