第6話:『アニメ誌の役割ってなんだろう?』
「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」のタイトルがいつ決定したのか?覚えていないのです。ただ、第1巻の発売日が1996年8月に決まり、その前に色々発表しますので、1996年春前には決まっていたと思うのです。
スタッフで幾つかタイトル案を出しました。
数字で行く案。
英字一文字で行く案。
英字数文字で行く案。
漢字で行く案。
そして、幾つかの案のなかから「SAGA」に絞られます。
漢字で書くと「性」であり、読み方として「さが」となります。
【辞書にある意味として、生まれたときから持っている性質や運命のこと。
人間性の高潔さという観点からは打ち克つべきといえる弱さ・卑しさ・いやらしさの現れであり、どんなに高潔な人格でも完全には逃れがたい種類の欲求であるなどに用いられることが多いといえる。】
日本語の意味を踏まえながら英字に置き換えしました。
そうなると、「SAGA」は、下記の意味合いとなります。
【英語のSAGAもアイスランド語を由来とし、「武勇談、冒険談、大河小説、年代記」という意味を持ちます。いわゆる、叙事小説。また、壮大な歴史物語や冒険物語、ファンタジーなどで使われます】
この日本語と英語の意味が合体して、どちらの意味も、物語に入っているのでしっくり来るよね!と言うことで決まった記憶があります。
主人公ハヤトの持つ天才の悩み、名雲の兄の想いを成し遂げたい気持ち、それぞれのキャラクターたちの持つドラマを中心に、人が持つ業の深さの表現こそ、本作のOVAで表現すべき裏テーマの「性」なのかなと……そうなるとぴったりはまるタイトルではないだろうか、と思うばかりです。
ちなみに、次のタイトル「新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN(以下、サイバーフォーミュラSIN)」の「SIN」の英語の意味は「罪」となります。人は、みな「罪」を背負っているってニュアンスです。また、「サイバーフォーミュラSIN」の主人公は、どちらかと言うと加賀ですので、加賀の背負う罪ってなんだろうか?名雲の背負った罪とは?など、「SAGA=性(さが)」から「SIN=罪(しん)」へのタイトルに込められた意味を考えてみても面白いのではないでしょうか?
さて、発売前に近づくとプロデューサーのやるべき仕事として告知、宣伝があります。
宣伝媒体として、当時OVA(オリジナルビデオアニメーション)を主に紹介する月刊誌「アニメV」がありました。
学研「アニメディア」の兄弟誌のようなポジションだったかなと思います。その誌面で、「サイバーフォーミュラSAGA」の描き下ろしや特集を組みたいと編集長から連絡をもらいました。
「アニメV」の三木編集長と、色々お話をしましたら、わたしと同じ年齢でした。
世代間ギャップがないなどがあり相談しやすかった記憶があります。
他の作品も含めて色々相談して特集など組んでいただきました。
また、前作の「11」「ZERO」にファンがしっかりいることも理解しており、新しい「サイバーフォーミュラSAGA」にも既存ファン、新規のファンが生まれると考えてくれ、好意的に接してくれたと思っています。
この時代、インターネットが普及していない時代ですし、携帯などありません。さらに、SNSなどありません。いわゆる、宣伝媒体として週刊誌、月刊誌などの紙雑誌に活躍の場がありました。表紙になって、本屋に並ぶと嬉しかったものです。また、特集ページが10ページとか組んでもらえると、なんだかヒットしているように見えますので、意味があります。
そんな紙媒体がまだ強かった時代です。
ですから、編集長に限らず、担当編集さんとも仲良くなったそんな時代でした。
作品によっては、「今月のアンケート結果は◯位になったよ!」と電話をくださるとあるアニメ誌の編集長がおりました。視聴者、お客さんの声を聞ける場所として誌面があったので、その情報をいただくのですが、そんなやり取りを編集長と出来る良い時代だったなと今更ですが、思い出します。ちなみに、携帯のない時代ですので、会社のスタジオに電話がかかっているのです。良く、わたしがスタジオにいることが分かって電話をして来たのかが不思議ですが……いまと比べて流れている時間がゆっくりだった気がしてなりません。
わたしは、「サイバーフォーミュラSAGA」と合せ技で、同時期にTVシリーズで動いていた「星方武俠アウトロースター(以下、アウトロースター)」もアニメ誌にアプローチしていました。OVAとTVアニメと2作持っていたので、各アニメ誌の編集長に直接会いに行ってプレゼンしました。また、「アニメージュ」、「ニュータイプ」、「アニメディア」以外に、1998年頃に新雑誌「AX」、「電撃B-magazine」が刊行しました。わたしが、日本アニメーションに入社した頃にも、「ジ・アニメ」、「マイアニメ」など増えて、数年後に休刊しました。他にも、「アウト」、「アニメック」などもありました。これも、いまはないです。
そんなアニメ誌のこともどこかで書きたいと思います。
今でも、当時やり取りをした編集の方とライン、メールなどで情報交換しています。
とにかく、「アニメV」とは「サイバーフォーミュラSAGA・SIN」とお世話になりました。
しかし、この「アニメV」もなんと1998年に休刊を迎えます。残念でなりませんでした。
時代の流れとして、OVAが減り、扱えるタイトルが少なくなったのも一つの原因ではないでしょうか?それこそ、OVAのようなアニメが深夜に放送されるのが当たり前になるそんな時代でした。
そうだ、わたしが担当していた「アウトロースター」も深夜アニメでした。
あと、ムービックの商品企画の萩原(大輔)さんと出会ったのも、この頃です。
アニメイトショップの商品(グッズ)を開発している方でした。
『サイバーフォーミュラ、アウトロースター、エンジェルリンクス、電童、マシンロボレスキュー、舞-HiME、舞-乙HiME』の商品(グッズ)化に関わってくださいました。
萩原さんとどうやって知り合ったのか?誰に紹介をしてもらったのか?記憶がないのです。たまたま、萩原さんがサンライズに来ていた時にわたしも本社に顔を出して、そこで紹介を受けたのか?いくら考えても思い出せずです。
当時、たくさんの新しい方々に会う時期でした。
その出会いが、わたしにとって「宝物」になっていきます。
プロデューサーにとって、クリエイターの方々、出版社の編集の方々、音楽関係の方々、商品化等メーカーの方々、各方面のプロに出会い、つながり、色々な相談が出来るような関係を構築し、その広がりが、次のアニメーションを生み出せる環境になる!と言うことが、だんだん分かってきました。
プロデューサーに必要な要素として「人が好き、人を好き」でないといけない職種だと思うのです。当時、わたしは人と話すことへの苦手意識があまりないので、安堵したことがあります。
「サイバーフォーミュラSAGA」の第1巻の発売の頃、ムービックの萩原さんはどんなアニメグッズがあるのか?どんなアニメグッズが売れ行きが良いのか?など、詳しく教えてくれました。
勉強のために萩原さんとわたし、幾つかのアニメイト店舗めぐりもしました。
一緒に、秋葉原のアニメイトに行きました。ちなみに、いまのビルでなく違う場所にあったアニメイト秋葉原店です。
現在のように巨大なヨドバシカメラはありませんし、まだPCゲームやアニメ関連のショップがちらっとしかなく、メイド喫茶も数件しかなかった頃です。
秋葉原の街を歩いて、それぞれのショップの作り、通路と棚、商品の並び方などを自分なりに感じたことで感想を述べたり、色々ディスカッションした記憶もあります。
わたしは、アニメーションを作る人ですが、この時期から、商品を作って売る人のことも考える癖がつきました。
知らないこと、考えたこともなかったことを教えてもらいました。
萩原さんは、大切な先生のひとりです。
また、わたしが起業してからは一緒に「お伊勢参りの旅」に出たりもしました。
お互い、それなりの年齢になりましたので、のんびりした癒やしの旅など行きたいですね。
当時、色々なお店を見て回ることで、本や商品が店頭に並ぶことも、とても大切な宣伝の意味があることを知ります。
当然、ヒットした作品は多く並びます。
それは、お客さんとして見ると、売れているんだ、と、手に取りたくなります。
月刊誌など雑誌の表紙を飾ることも大切です。
わたしも、何度か表紙をもらいますが、簡単にゲット出来ないので、店頭に並ぶとそれはそれは嬉しいものでした。
本屋に行って、その本が後ろに隠れていると手前にそっと出してきたりしました。
ちなみに、これは、小説など単行本でも良くやりました。
本屋さんごめんなさい。
また、CDなども同様で、自分が関わったサントラや主題歌CDを、街のCDショップで見るとそっと前に出したりしました。
と、こんなことを書いていて、時代が相当に変わったことを認識です。いまは、本屋さん自体減っています。CDショップに至っては近くにありません。
さて次回は、「サイバーフォーミュラSAGA」の主題歌のことを書きます。
これも、知らないことばかりで、日々勉強なのです。
音楽プロデューサーの藤田さんに「デモを送りますね」と言われても、ピンと来ません。
なにそれ?です。
「デモ?」街にたくさんの人が出て、抗議活動をするってことか?
と言うことで、わたしは、「デモ」などの音楽関係の専門用語を覚えることとなります。
では、答えは次回に!!
追伸:
YOUTUBE「ふるさとPアニメ道」もスタートしましたので、ぜひぜひチャンネル登録の上、ご覧くださいませ。
🔻リンクはこちら
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🔻ふるさとP写真録:今週の一枚
古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。
1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。
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