第4話:『サイバーは、素敵な出会いから始まりました』
吉井さんから始まり、中川さん、指田さん、福田さん、両澤さんに会いました。
次は、福田さんに言われた件、キャラクターデザイン原案を描いてもらうために、いのまた(むつみ)さんに会わなければいけません。
わたしは、名前は知っていましたが会ったことがないので、吉井さんに電話連絡してもらって、紹介してもらいました。
上司をこき使う新人プロデューサーです。
いま考えると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
吉井さん、いま更ですが「あのときは、本当にありがとうございました」。
そして、西武柳沢駅の近くの喫茶店「宮殿」で会うことになりました。
実は、この喫茶店は、2024年現在もあります。
吉井さんのおかげで、無事にいのまたさんとお会いし、2歳年齢が上がるそれずれのキャラデザインを描いて欲しいこと説明をしました。
いのまたさんは、「わたしで良ければ描きます」と、笑顔で承諾してもらいました。
後で福田さんにいのまたさんがやりますと答えてくれたと伝えると、良かったとばかりにほっとした表情になりました。
いのまたさんには、ずっと後になりますが「舞-HiME」では制服のデザインを描いてもらっています。わたしがサンライズを辞め、起業後、オリジナル企画書用にたくさんキャラクターデザインを描いてもらっています。どこかで皆さんにお見せしたいなあ!と願うばかりです。
次にやることは、いのまたさんのキャラクターデザイン原案を元にアニメーション用の設定を描いてくれるアニメーター選びです。
福田さんは、ここで幾つかのオーダーを出しました。
ひとつめは、アニメ用のキャラクターデザインを描いたアニメーターが総作監もすることでした。
ふたつめは、デザイン&総作監はサンライズのスタジオに入って欲しい、でした。
と言うことで、わたしの仕事は、スタジオライブの吉松孝博(テレビ版「サイバーフォーミュラ、OVA版「11・ZERO」のデザイナー&総作監)さんのスケジュールなどの状況確認です。
バタバタと連絡を取ると、スタジオライブさんからの返答は「吉松くんのデザイン作業はやれます、ですが、総作監は他の作品との兼ね合いで無理です」となりました。
このことを福田さんに伝えると「わかった。それでは、古里さんが描かせたいアニメーターはいますか?」と問いかけられ、久行(宏和)くんの名前を出しました。
久行くんは、勇者シリーズからの付き合いで、メカ作監から作画監督になったアニメーターさんです。さらに「勇者警察ジェイデッカー」は、各話作監がゲストのキャラクターデザインを描くシステムだったのです。
わたしは、久行くん作監話数のゲストデザインはセンスあるなって思い、好きだったのです。
その時から、いずれ、自分がプロデューサーになった時に、デザインの仕事をお願いしたい、と考えていましたので実現したことは嬉しかったです。
どんどん会う人が増えていきます。
マシンデザインの河森(正治)さんにも声をかけてOKを頂きました。
わたしは、河森さんに会うのも初めてだったのですが、「超時空要塞マクロス」などテレビや映画を観て、メカデザインと監督など多才な方だとずっと思っていました。
「サイバーフォーミュラ」のマシンデザインも魅力たっぷりですから、そんな素晴らしいクリエイターと仕事が出来ることは楽しみでした。
余談ですが、「幻夢戦記レダ」や「ウインダリア」のいのまたさん、「超時空要塞マクロス」の河森さんは、若い時から活躍しているので、わたしよりかな~り年上だと勘違いしていたのは内緒です。ゲホゲホ。
河森さんとは、デザイン上がりの催促を夜遅めに電話しましたら、車のデザイン談義であっという間に1時間、もしかすると2時間経っていたことを記憶しています。
勇者エクスカイザーの時、設定制作としてメカデザイナーさんとの会話は楽しかったのですが、河森さんとの会話はめちゃくちゃ楽しかったことを記憶しています。
特に車のことではピニンファリーナやジョルジェット・ジウジアーロのデザイナーの作ったデザインは流麗で美しいですよね!など色々話した記憶があります。
河森さんがサイバーフォーミュラ世界において、数社の車メーカーの役割もしているんだって考えると、凄すぎます。ここでは、世界観作りの大切さなど学びました。
福田さんは、美術はTVシリーズからやってくれているアトリエ・ムサの池田(繁美)さんに引き続きお願いしたいとなりました。
そこで、連絡をしてスタジオに行きました。
わたしは、池田さんとは仕事をしたことがなかったのですが、初めてお会いした以降、「GEAR戦士電童」、「激闘!クラッシュギアターボ」と一緒に仕事をしました。
何度か会ってお話をしましたが、自分にとってスキルアップ出来ることを聞くことが多かったです。
例えば、設定を描くことは、鉛筆の線で表現するが、背景は筆を使って面で表現する。
面で表現と言うのは、鉛筆に置き換えると芯を寝せて描くみたいなことになるとのことです。
面、陰影で描くのが背景だと言われると納得します。
線と面、設定と背景、これには大きな違いがあるのですが、わたしは、どちらも美術として考えていましたので、大いに意識改革となりました。
設定は、鉛筆の芯を立てて線を引いて街や学校、基地、山々などを描いて行くんです。
つまり、絵を描くと言うことであっても、設定を描くのが向いている人と、背景を描くのが向いている人がいるってことをその時に知りました。
これは、アニメーターにも当てはまる部分があります。デザインに向いている人と動かすことに向いている人の違いです。
このことは、クリエイターさんの何を、どの部分を見ると良いのか?など、本質の部分を見る努力をしなければならないと、わたしは重要なことを教えてもらったと感謝しています。
音響監督には、TVシリーズから担当しているクルーズの藤野貞義さんにお願いしたいとなり、美術監督の池田さん同様、わたしは一緒に仕事をしたことがなかったので、連絡をとって挨拶に行くことになりました。
訪ねて行くとそこには、勇者シリーズで音響制作をやっていた千田(啓子)さんがいらっしゃったのです。知っている方がいることでちょっと安心したわたしでした。
音響関係、声優さん関係のことはこの先で書きたいと思っていますので、ここでは、藤野さんと千田さんに無事挨拶が出来たことを書きます。
千田さんから、「あら古里さん、プロデューサーになったのね、良かったわね、おめでとう」とにこやかに話してくださり、素直に嬉しかった記憶があります。
千田さんにも色々教えてもらいました。かなりディープな内容なので書けるのか?ではありますが、音響とは?声優とは?声優を選ぶとは?などわたしにとって、学びの場になりました。
福田監督と各クリエイターの打ち合わせもどんどん進んでいきます。
少しずつ、「サイバーフォーミュラSAGA」のアニメ制作が稼働してきました。でも、この時期はまだ仮タイトルで本タイトルは決まっていませんでした。
いわゆる「SAGA」と付いたのは、けっこう後だった気がします。
そして、制作マンとして大切なスタジオ、いわゆる制作現場も仮でしたが、やっと場所も決まりました。
さらに、大切なスタジオ名も決まりました。
サンライズは、第1スタジオ、第2スタジオ、第3スタジオと数字が付いています。
あの頃、若い数字に空きがなくて、後ろ側の数字の「第10スタジオ」の命名されたのです。わたしは、吉井さんにスタジオ名がないので付けて欲しいとお願いしましたら「第10スタジオ」と命名してくれました。
その後、わたしのスタジオ名は、「第8スタジオ」と変わっていきます。
この「第10スタジオ」は、わたしの最初のスタジオ名ですし、吉井さんが付けてくれたので、とても記憶に残り名前になります。
でも、「サイバーフォーミュラ」のタイトルから「第0(ZERO)スタジオ」にしたかったのは内緒です。
追伸:
YouTube「ふるさとPアニメ道」もスタートしましたので、ぜひぜひチャンネル登録の上、ご覧くださいませ。
🔻リンクはこちら
https://www.youtube.com/channel/UC_jrvVljSFUhGmxpCvYuq5A
🔻ふるさとP写真録:今週の一枚
古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。
1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。
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