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記事: 第12話:『メカ作監の重田さん召喚ですっ!そして、プロデューサーのやるべき仕事とは?』

第12話:『メカ作監の重田さん召喚ですっ!そして、プロデューサーのやるべき仕事とは?』

第1巻の発売が始まったと言うことは、第2巻の発売も近いと言うことです。

制作現場では、制作進行たちが一生懸命、第2巻、第3巻と進めていますが、制作スケジュールがどんどん遅れて行きました。

 

そして、監督の福田さんから相談が来ます。

「アニメーターの重田(智)さんを呼んできてくれないか?」。

「もうひとつお願いがあるんだど……」。

 

そうなのです、第1巻に重田さんは入っていなかったのです。

当時、サンライズでは、メカ作監と言う役職で、ロボットやメカの修正、作画統一などを行う作画監督さんがいました。

 

福田さんは、「サイバーワールドの構築に重田さんの力が必要だ。そして、サイバーマシンの走行シーンを描くにあたり重田さんのセンスが欲しい」と、わたしに言ってきました。

 

すぐに、重田さんと連絡を取り、会いました。

 

わたしは、状況を説明し、是非とも参加して欲しいとお願いをしました。

当然、重田さんはその段階で持っている仕事はやらないといけないので、終わり次第スタジオに入ってもらうことになりました。

 

あとで、重田さんと色々話し合ったら、古里が重田さんに声をかけなかったので寂しい思いをしていたこと白状してくれました。

わたしは、なんと、スタッフとして参加したいアニメーターに気が付かないでいたことを非常に反省しました。

これは、アンテナを貼って、敏感に嗅ぎ取らないといけないと感じたものでした。

 

実は、わたしは重田さんとは、勇者シリーズの時に会っているのです。

その時、わたしはまだ制作デスクで、ロボットの変型合体シーンを描いて欲しくて、やってもらえないとか勧誘に行ったのです。

別件があって、忙しく参加にはなりませんでした。

もしかすると、そこで断られていたこともあって、わたしのアンテナ、センサーが鈍っていたのかも知れません。

 

いまになってですが、「サイバーフォーミュラ」を、大々大好きな重田さんの参加ありがとうございました。

 

重田さんは、サイバーワールドのなか、レースシーンの作画も素晴らしいのですが、特にピット内などの描き込みは見事です。コードやパイプ、様々な機械が置かれたシーンなどは緻密に修正を入れます。こだわりがサイバーワールドを際立てさせます。

重田さんの原画や作画監督をやったシーンの見どころは、レースシーンだけでなく、止め絵の描き込みも見つけて是非とも観て欲しいのです。

 

あと、重田さんとは、とっておきの昔話があります。

わたしが、スタジオ・ジブリ時代、制作進行だった頃、とある作画会社に「天空の城ラピュタ」の動画の受け渡し、受け取りで伺ったのです。

実は、その会社に重田さんがいたようなのです。

「古里さんの声聴こえていましたよ」と言われました。

ただ、重田さんが玄関まで受け取りには出てきてくれていないので、会えていないのです。

会いたかったなあ~、残念。

 

そして、わたしが大決心をするタイミングが近づいてきました。

福田監督のもうひとつのお願いです。

 

制作現場の作業が遅れてしまい、納品スケジュールに間に合わせることが出来なくなったのです。そこで、発売スケジュールを再構築するためにバップに伺うことになりました。

まずは、謝罪し、理由を話して、新しい発売スケジュールと宣伝を考えることになりました。

わたしは、清水の舞台から飛び降りる覚悟でいましたので、数日前から緊張につぐ緊張でした。

 

発売まで少し時間が出来たわけですが、そこで、品質を落とさず、福田監督のやりたいことを堅持しつつ、前に進めるしかありません。

バップから戻り次第、制作進行、設定制作を集めてスケジュールについて、色々話し合いました。

 

それこそ一丸になって前に進んでいたのですが、どうやればベストなのか?を出し合いました。クリエイター確保についてもみんなが頑張ってくれました。

 

わたしは、デスクと進行の仕事の差異は分かってきていましたが、このタイミングでデスクとプロデューサーのやるべき仕事の差異を理解した気がします。

同じ釜の飯を食った制作仲間を信じて、任せるところは任せて、わたしだけがやれること宣伝、商品化などもありますので、そこはガンガンやる!って感じです。

 

あと、確実に分かったプロデューサーのやるべき仕事があります。

それは、「最終的に自分が判断して決断すること」だと心に刻みました。

プロジェクトのリーダーになって、自分が決めると言うことは、失敗は自分が決めたからであり、成功は部下を始め仲間たちがもたらしたものだと言うことがわかりました。

 

いわゆる、プロデューサーとは「責任」を背負うことだと理解しました。

 

「サイバーフォーミュラ SAGA」については、お客さんは続きが見たいと言ってくれています。これは、嬉しい悲鳴です。モチベーションになります。

 

と、ここまで、とても大切な制作の仲間たちの話を書いていませんでしたので、少し書きたいと思います。

 

わたしが新人プロデューサーですので、進行チーフ、進行、設定制作、制作事務のメンバーもわたしとどう付き合えば良いのか?状態ではなかったのかな?と思うのです。

さらに、わたしも最初の頃、何をやれば良いのか?が分からないので、お昼に東京現像所にフィルムとラッシュの回収に走っていました。進行たちは朝まで仕事をしているので、昼の上がりを取りにいけないので代わりにわたしが行っていたのです。

 

ちなみに、ラッシュと言うのは、セル画と背景を撮影したフィルム(ネガフィルム)を現像してスタジオの映写機で動画を見るために作るプリント(ポジフィルム)のことです。

そのプリントをラッシュと言いました。バラバラのカットの上がりです。

その上がりを映写機にかけてスクリーンに投射してみます。

リテークならすぐに直すこととなりますね。

いまはデジタルなので、全てパソコン上の作業になるし、ハードディスク等でやり取り、あるいはサーバー上の管理になります。

 

第10スタジオのサイバー班は、こじんまりとした制作スタジオです。でも、ホットなスタジオだったと記憶しています。

福田監督、キャラデの久行くん、メカ作監重田さん他スタッフ、進行たちみんなで、CoCo 壱番屋のカレーを買ってきて食べた記憶があります。わたしも、買いに行ったことがあるのでとても懐かしいです。

 

アルバムを見ましたら、どこかに旅行に行ったときの写真はあるのです。

とても懐かしいです。当時の、みんなの顔が思い出されます。

制作の仲間たちがいて、みんながそれぞれの仕事をガッツリとやってくれていたことを思い出します。サイバーフォーミュラSAGAをどう作って行くのがベストなのか?を会議室で、喧々諤々、本音をぶつけ合って話し合った記憶があります。ここで出た様々な意見が、次の「SIN」の作り方につながっていくことになります。

 

一緒に仕事をした制作仲間たちのことですが、いまも業界に残っている人、また、他の業界に行った人とそれぞれの人生があります。

みんな、健康で活躍していることを願うばかりです。

同窓会ではないですが、会いたいなあと思います。

 

あと、「サイバーフォーミュラ SAGA」は、再来年 2026年で 30周年のようです。

いやはや、長い時間が流れました。わたしも、ギリギリ記憶が残っているこのタイミングで書けたのは良かったなと思います。

 

今回で第12話の原稿を書きました。

ここまでで、「サイバーフォーミュラ SAGA」前半までとなります。

今まで読んでいただき、ありがとうございます。

このあと、ちょっとだけ寄り道をしつつ、「SAGA」の後半を書いて行きたいと思います。

 

追伸:

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🔻ふるさとP写真録:今週の一枚

 

 

 

 

 

 

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

1961年5月3日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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