コンテンツへスキップ

カート

カートが空です

記事: 第13話:『全て中途半端だった自分がやれることがアニメだった(前編)』

第13話:『全て中途半端だった自分がやれることがアニメだった(前編)』

今回は、20歳の頃カメラマンの道を諦めて、漫画も、小説も、書けない才能のない自分がなぜアニメ業界で頑張って来れたのか?を思い出して書いてみたいと思います。

 

第1話の自己紹介編に書いたように、子どもの頃、漫画が好きでした。

理由を考えてみました。

 

わたしが、4歳 5歳の頃、母親が古本屋から、「週刊少年マガジン」、「週刊少年サンデー」、「ぼくら」などを買ってきて枕元に置いていたのです。

絵本は数冊しかないのですが、漫画雑誌は10冊以上ありました。

ですから、寝る前に子守唄変わりに、漫画雑誌を読んでいたのです。

いま、考えると不思議です。漫画が好きになるようなシチュエーションしかありません。

2021年夏に母は他界していますので、聞くことは出来ません。

単純に、古本で安かったから買ってきたって言いそうですが(笑)。

 

でも、そのおかげで、漫画大好きな子供になり、また、大人になっても漫画を読むそんな人間になっております。

 

子供の育て方とし、うちの親は失敗したのではないでしょうか?

 

小学生時代。SF小説やジュブナイル系のドラマ、特撮物なども好きでした。

特にテレビが好きになりました。

テレビは、黎明期だったために視聴率命だけでない、地味なものから実験的なことまで、あらゆるジャンルのドラマや番組がありました。

 

いま思うととてもラッキーな時代、環境でした。

間違いなくテレビが花形だった時代でした。

 

映画が斜陽になって、娯楽の王様として居間にどどんと鎮座していたテレビに子供のわたしは必死にかじりついて観ていました。

 

今回と次回は、テレビドラマ、漫画、小説、音楽などのタイトルをたくさん書いております。皆さんが見たこともない、知らないタイトルが多いと思うのですが、これらがいまの古里を作っているのは事実なのです。また、子供の頃見たこと、触れたこと、興味を持ったことが、自分の知識の源になり、趣味嗜好からの個性につながって行っていると思うのです。

と言うことで、皆さんにとって知らないタイトル、物語を書いてしまうのですが、お許しください。

 

昔からのことわざにある「三つ子の魂百までも」。

意味は、「子ども時代に得た性格は、年老いても変わらない」こと、です。

 

「孟母三遷の教え」。これは、中国の故事、孟子のお母さんの言葉です。

意味は、「子供の教育には良い環境が大切だ」と言う意味です。お墓のとなりにいたとき葬式ごっこをし、市場に引っ越しすと商人の真似事をし、そして、学校のとなりに引っ越しすることで礼儀作法の真似事をし立派な人間になったことになります。

 

これらのことわざにあるように、子供の頃に見たもの、読んだものが大人になっても支配しています。

子供の頃に自転車に乗れるようになると、大人になっても乗れる、みたいなことなのでしょうか?

いわゆる子供の頃の体験が、自分を作るんだなって思うばかりです。

 

 

わたしの父親は靴職人。母は和服の着物仕立て屋でしたが、子供の頃からイラスト(挿絵)が得意で、10代にノートに描いたイラスト(挿絵)を見たことがあるのですが、とても上手です。色を着けている絵もありました。

わたしはそこまで描けないです。

母の夢は、東京に出て、イラストレーター(挿絵家)になりたかったようです。

青森県の田舎にいた母の夢は叶うことはありませんでした。

だからなのか、漫画本を買うことに抵抗がなかったし、アニメを一緒に見てくれました。

わたしが、アニメの仕事に就いたのは、そんな母の別なかたちで夢の具現化になったのかも知れません。だから、やらせてくれたのかも知れません。

でも本音は、田舎に帰ってきて欲しかったのだと思います。

でも、諦めてくれたのも、このあたりが関係している気がします。

 

 

さて、改めて小学校3年生、家にモノクロのテレビがやってきたあの頃。

大阪万博があり、よど号ハイジャック事件などのきな臭い事件があった時代。

大学紛争が終焉を迎えた時代。田舎の青森県、わたしがいた小さな町には全く関係ない事件の数々。戦後の復興のために働いていた大人たちの持つエネルギーの大きさがまだ残っていた時代に思います。子供ながらに、田舎にいた自分にとっても、良く分からない前向きなエネルギーを感じていた気がします。

 

テレビは茶の間の主役です。

そんな頃ですから子供向けのみならず大人向けの番組も見ていました。

両親と一緒に、千葉真一「キーハンター」や「バーディ大作戦」、「アイフル大作戦」、「太陽にほえろ!」、「探偵物語」、「俺たちの勲章」etc。警察物、探偵推理物など楽しく観ておりました。いまでも、警察物、推理物のドラマがあります。さすがに90分のドラマは減りましたが、でも、「相棒」、「科捜研の女」などいまも普通に放送しています。50年経ったいまでも、同じようなジャンルのドラマが放送されて、それなりに視聴率を取っているってことは、好きなものなど基本人間って変わらないものなんだなって思います。

 

ふと、思い出すのが「キーハンター」です。夏になると幽霊が出てくるホラー系の物語になるのですが、怖いけど観たいと言った相反する心でテレビの前に座っていました。

 

三船敏郎「荒野の素浪人」、萬屋錦之介「破れ傘刀舟悪人狩り」などの時代劇なども大好きでした。

現代、時代劇は激減ですね。NHKのBS放送があるくらいでしょうか?確かに、わたしも最近の時代劇は見ないから、もっと若い方はより見ないですよね。

 

「謎の円盤 UFO」、「サイボーグ危機一髪(600 万ドルの男)」「インベーダー」など海外SFドラマも見てましたね。洋画のテレビ放送も父親と一緒に観た記憶もあります。

また「木枯し紋次郎」役の中村敦夫さんが主人公の林冲を演じていた「水滸伝」、中国の古い時代の物語を日本人が演じると言う斬新な物語だったと思います。

堺正章さん主役の「西遊記」も面白かったです。

そして、アットホームなドラマ「ありがとう」、「寺内貫太郎一家」などなど。

教師物の走りかなと思う「ゆうひが丘の総理大臣」なども親と一緒に観ていました。

 

「ウルトラマン」から、「ヘンシンポンポコ玉」(男女が入れ替わる物語)、「猿の軍団」とこれは日曜日夜に放送していたように覚えています。

「アイアンキング」、「シルバー仮面」、「ジャンボーグA」のような変身巨大ヒーロー物。

石ノ森章太郎原作「仮面ライダー」、「変身忍者嵐」のようにヒーローが大きくならない特撮物。

「キャプテンウルトラ」、「スターウルフ」のような宇宙特撮物など、とにかく見れるものは全部見たと思います。ただ、青森県は局が少ないので東京のような本数は放送されませんのて、実際観た数はググッと少ない訳ですが!!!

 

そして、わたしにとって、かけがえのない物語、ある意味人生を変えたと行っても過言ではない人形劇「新八犬伝」との出会いです。その後の人形劇「真田十勇士」、「紅孔雀」なども好きでした。でも、わたしにとって「新八犬伝」の存在は半端ないです。

 

また、NHKで放送した実写のドラマ「タイムトラベラー」、「ねらわれた学園」、「暁はただ銀色」、「夕映え作戦」、「なぞの転校生」などの少年ドラマシリーズ。これも、わたしの趣味嗜好を大きく方向づけたドラマで、中、高校生たちの青春 SF ドラマ。1冊か2冊だけ捨てずに残しています。でも、いまは紙が茶色になっているし、老眼の自分には文字が小さくて読むのがとてもしんどいです。

 

これらは、子供だましでなく色々な角度からの SF 設定で、タイムトラベル物やもし何らかのことで負けると世界がなくなる的なピリッとした冒険譚が、多かった気がします。

これら原作の小説が載っている単行本はお金を貯めて買いました。わたしのなかの神様である SF 作家は、眉村卓さん、福島正実さん、光瀬龍さん、筒井康隆さんたちなのです。

 

ちなみに、筒井康隆さんが書いた小説はたくさんありますが、SFではない不思議な書籍があります。タイトルを「ベティ・ブープ伝」、これは必見です。

なんとアニメのなかのベティ・ブープを、まるで実在している女優のごとく書いているのです。田舎から出てきた女優の卵が脇役でスクリーンデビューし、その後主役を勝ち取り活躍して、そしてこつ然と消えるまでの歴史を淡々と書いている素敵な本でした。

 

 

改めて「新八犬伝」です。

わたしには兄弟がいないので人形劇「新八犬伝」にある 8 人の義兄弟、運命に導かれて集まると言うシチュエーションに釘付けでした。

心を射抜かれ持っていかれたのです。

自分が、アニメの企画をやるとどうしても、運命に導かれて集まる系の物語を用意したくなります。

 

それこそ、「舞-HiME」はそうなっています。

また、血のつながらない友が兄弟以上に絆が強いと言う設定も好物なのです。

 

続く……。

 

PS

次回、後編では、「好きこそものの上手なれ」でもないですが、好きは自分の行動を前向きにしてくれますし、前に進むための原動力になります。と、自分はなにが好きなのか?を一生懸命に模索したことを書きます。

 

追追伸:

YOUTUBE「ふるさとPアニメ道」もスタートしましたので、ぜひぜひチャンネル登録の上、ご覧くださいませ。

🔻リンクはこちら

HTTPS://WWW.YOUTUBE.COM/CHANNEL/UC_JRVVLJSFUHGMXPCVYUQ5A

 

🔻ふるさとP写真録:今週の一枚

 

 

  

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

1961年5月3日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

コメントを書く

このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

全てのコメントは、掲載前にモデレートされます

他の記事

第12話:『メカ作監の重田さん召喚ですっ!そして、プロデューサーのやるべき仕事とは?』
ふるさとP アニメ道

第12話:『メカ作監の重田さん召喚ですっ!そして、プロデューサーのやるべき仕事とは?』

第1巻の発売が始まったと言うことは、第2巻の発売も近いと言うことです。 制作現場では、制作進行たちが一生懸命、第2巻、第3巻と進めていますが、制作スケジュールがどんどん遅れて行きました。   そして、監督の福田さんから相談が来ます。 「アニメーターの重田(智)さんを呼んできてくれないか?」。 「もうひとつお願いがあるんだど……」。   そうなのです、第1巻に重田さんは入っていなかったのです。...

もっと見る
第14話:『全て中途半端だった自分がやれることがアニメだった(後編)』
ふるさとP アニメ道

第14話:『全て中途半端だった自分がやれることがアニメだった(後編)』

前回に引き続き、後半を書きます。   さらにさらに影響を受けたのは、ある音楽です。 アーティスト瀬戸龍介氏の「五六七(みろく)」のレコードにある「スサノオノミコト」です。和とロックが混じったプログレ。 それこそ、スサノオノミコトの物語を謡うのです。 ヤマタノオロチを退治するシーンもあるのです。 聴くと絵が浮かぶ、そんな歌と曲です。   高校生時代にラジオで聴いて、テレビでも見て、和楽器とエレ...

もっと見る