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記事: 第15話 :『ラピュタ、勇者シリーズとオリジナルアニメを作ることが普通でした』

第15話 :『ラピュタ、勇者シリーズとオリジナルアニメを作ることが普通でした』

わたしが、20代の進行時代、設定制作、デスク時代。

当時、仕事を覚えたスタジオジブリ「天空の城ラピュタ」もオリジナルアニメ。

サンライズでは「勇者シリーズ」等、担当している作品がオリジナルアニメだったので、自分にとってオリジナルアニメを作ることが当たり前であり普通なことでした。

いわゆる、空気を吸う、ご飯を食べることと何ら変わらないのです。

 

オリジナルアニメを企画し制作することに何の疑問も抱きません。

 

さらに加えるならアクション物、メカ物、ロボット物を作りたいと言うのが目標でした。

それは、「勇者シリーズ」をやったことに起因しています。

 

また、高校生のときに見たサンライズ制作の「機動戦士ガンダム」が自分の趣味嗜好に刺さったからです。

小学校時代から「マジンガーZ」「グレートマジンガー」「UFO ロボグレンダイザー」「ダンガード A」「無敵超人ザンボット 3」「無敵鋼人ダイターン 3」など青森県で放送したロボットアニメは観ていましたので、どれも面白く、ワクワクしました。

これら作品は漫画原作もありますが、オリジナル物の側面が強かったと思います。

子供時代、多感な中学・高校時代に見た、触れたものは後の自分の趣味嗜好、考え方など支配します。

 

東京に出てきてから見た「伝説の巨神イデオン」は、親子ケンカ、コミュニーケーション不足から起きる事件が人類だけでなく宇宙をも破滅に導いていく物語。人の愚かさが描かれており、色々な意味でオリジナルアニメの持つ深さを考えました。

 

前回書いた人形劇「新八犬伝」や「日本神話(スサノオノミコト)」もわたしの趣味嗜好をかたち作っていると思います。と、言うことでわたしが考えるオリジナルアニメには、これらの因子が何らかのかたちで入っています。

 

さらに、最初にプロデューサーとして担当した「サイバーフォーミュラ SAGA」がオリジナル物です。

これも卵から孵ったヒナが最初に見たものを親と思うことがあるように、新人プロデューサーが最初にやった仕事が「サイバーフォーミュラ SAGA」だったのも大きな理由だと思います。

 

いわゆる「三つ子の魂百まで」と言いますが、確かにそうだなって思います。わたしはオリジナルアニメを作りたかったのです。と言うか、それ以外のことを考えたことがないのです。

 

 

話は少し逸れますが、福田監督の趣味嗜好、好きな漫画などの一部、わたしも読んでいたりします。

例えば、漫画家の和田慎二さんは、福田さんも、わたしも大好きな漫画家さんです。

ちなみに、和田慎二さんの作品は「スケバン刑事」「超少女明日香シリーズ」「ピグマリオン」「忍者飛翔」などがあります。

 

ですので、「電童」のときに各話のシナリオ打ち合わせ時の例え話として、漫画のネタなどを出すときに、それ分かる分かるって思うことが多かったです。で、福田さんの思考が少しだけ理解出来、どんなアニメを作りたいのか?が少しだけ見えるのは助かりました。

ただ、ライターの皆さんは、そのタイトルを知っているとベターですが、知らないと伝わらないことになるので大変です。

「クロスアンジュ」のときに、福田さんは「忍者飛翔」のことを良く話していました。でも、それがわかるのは、わたしだけなのです。でも、ライターの樋口くんも知ってるかも。樋口くんは、古里が好きな漫画をなぜか読んでいることが多いのです。

 

特に「電童」は、オリジナルアニメを作ることにおいてとても大切なことを実践し学んだ時期でもあります。

キャラクターの作り方、事件の用意、主役を始め各キャラクターの出発点のモチベーションとゴールを作ることの重要性を知った時期でもありました。

 

1995 年から 1999 年「サイバーフォーミュラ SAGA・SIN」「電童」の 3 作は、オリジナルアニメの作り方、考え方、それらの思考など一から勉強をした時期と作品です。

また「アウトロースター」は、伊東先生の趣味嗜好を踏まえてやりたいことを目の前で見ることが出来た大切な作品です。伊東先生の「こだわり」が素敵な世界を生み出して行くことを知りました。

 

これらのタイトルを経験出来なかったら、オリジナルアニメ大好きな古里はより存在しないと言っても過言ではないです。

 

と言うように、わたしの「アニメ道」が少しずつ更新され、前に進んでいまの自分なんだなと考えます。

 

でも、わたしは思うのです。誰も知らない、見たこともない完全なオリジナルの物語を作り出すのは出来るのか?と。

良く考えてみると、誰も知らない世界、誰も知らない物語って、それを作り出しても誰も分からないのでは?と思う自分がいます。

例えば、主人公が人として生きてそれらの感情のなかに起きる事件だからこそ、視聴者は感情移入出来ます。もし擬人化などで動物のかたちをしていても、なかにある感情は人間のものがベースになっています。

その時代の文化を知り、ルールのなかで生きるからこそ物語が伝わります。

さらに、二千年以上の歴史の中、幾多の物語が生まれて消えていったでしょう。

 

シェイクスピアやグリム童話などなど。

日本人なら誰でも知っていると思う桃太郎、金太郎、浦島太郎のような昔話。

古事記や日本書紀、古今和歌集など。

同じ人間である限り、恋愛、友情、裏切り、復讐、冒険、成長劇、夢の実現、未知への挑戦など、それらが都度テーマとなり、主人公を待つゴールにある達成感が物語の見どころになって来たと思うのです。

 

いまの時代は、見る方も作り手も、様々な事象や色々な人間模様を知っていますし、たくさんの物語の情報があります。

だからこそ、これらのなかから斬新な組み合わせ、その、目新しさがオリジナル作品のひとつにもなるのかな?と思うのです。

 

組み合わせ方がオリジナルだと言うのも、オリジナル作品にもなるのでは?と思うのです。

 

あと、アニメに与えられたメリット。

絵が動く(絵だからこそのデフォルメ効果)、色が着いてる、効果音、台詞の声、音楽が付いてます。

テレビやタブレット、映画館のスクリーンなどのメディアのなかで、これら全部が生かして表現される、それを「アニメの持つダイナミズム」と言っても良いかも知れません。

 

わたしは、この「アニメの持つダイナミズム」を最大限に生かすためにオリジナルの物語を作りたいと考えて「舞-HiME」など作ってきました。

 

小説なら文字と文章だからこそ生まれるダイナミズム。

漫画なら白と黒の線の表現、コマ割りと止め絵が持つダイナミズム。

実写映画なら、暗い中スクリーンで見る、人間や背景などリアリティ、声、音楽などのダイナミズム。

舞台なら、人間の持つリアリティと生(ライブ)の持つ日々の違いが観せるダイナミズム。

 

それぞれのメディアが持つダイナミズムを、見る(観る)時、読む時に最大限に感じることで、主人公への感情移入から感動や驚き、知識など得ることが出来ると思うのです。

 

わたしは、そのアニメのダイナミズムって何だろう?を常に探求したいと思っております。

主人公などキャラクターを絵として表現することで、抽象化、デフォルメなど駆使して、よりメッセージを伝えることが出来るのではないか?と考えるのです。

 

また、視聴者の夢や憧れを用意したいと常々思ってオリジナルアニメを企画、制作しています。

子供の頃に観たロボットアニメは、主人公が巨大な力を手にしてそれを制御し地球を守ることは、観ている子供にとって憧れになります。しかし、手に入れた力の代償として何らかの使命を与えられたり、運命に翻弄されたり、つらい冒険だったりします。

基本子供の目線からは、それら主人公たちは大変なことに巻き込まれていても学校に行かず、遊んでるようにも見えて、羨ましかったりします。

リアルに考えると、大変面倒なことになっていると思います。

ですが視聴者の子供たちにとっては、物語のなかの主人公みたいに自分も行動してみたいって思うのです。いや、終わってもらいたいわけです。

 

実際の自分は、田舎町の平凡な学園生活をしている訳なので、学校からの帰り道、ふと空を見上げると、「もし、ここで大きな隕石が落ちてきて、そのなかにいるロボットが僕を取り込んで、それで追ってきた敵を倒して宇宙に出るんだよ!!」みたいなことを夢想します。

 

また「うちの学校の裏に基地があって、そこに巨大ロボットが格納されてるんだよ!で、そこから、そのロボットが発進するんだ!!」なんてことを学校からの帰り道、友達と真剣に喋りながら歩いていたことを思い出します!

 

ああー、そうなんだ!!

 

あの頃の夢を実現化したいと言う欲求が、わたしを支配しているのかも知れません。

自分だけの思いだと無理なことが、才能豊かな仲間、スタッフたちの力を貰えたら夢を達成出来たんだなって思います。

 

追伸:

YOUTUBE「ふるさとPアニメ道」もスタートしましたので、ぜひぜひチャンネル登録の上、ご覧くださいませ。

🔻リンクはこちら

HTTPS://WWW.YOUTUBE.COM/CHANNEL/UC_JRVVLJSFUHGMXPCVYUQ5A

 

🔻ふるさとP写真録:今週の一枚

 

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

1961年5月3日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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