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記事: 第16話:『SAGA時代~ビジネス(商売・事業)と経営の意味を知り始めたあの頃です』

第16話:『SAGA時代~ビジネス(商売・事業)と経営の意味を知り始めたあの頃です』

 「サイバーフォーミュラSAGA」のプロデューサーとして参加していたあの頃、わたしはアニメを作ること、作れることだけで幸せでした。

自分の思考が、制作進行、制作デスクの気分の延長線上にしかなかったと思います。

 

プロデューサーには企画・制作・宣伝以外に、『ビジネス(商売・事業)』と言う新しい仕事が加わっていることにまだ気がついていないあの頃でした。

当たり前ですが、会社は利益が生まれることで健全に運営出来ます。そうなれば、仕事をしている社員、外注になるクリエイターもその会社で安心して仕事により一層励むことが出来ます。

明日を心配せずに仕事に没頭出来ればより良いアニメを生み出すことが出来るかも知れません。

プロデューサーは、このビジネスと会社経営について目を向ける必要があります。

 

でも、当時のわたしは正直そこまで頭も身体もたどり着けていませんでした。

 

単純にビジネス、経営と言う言葉は知っていても、リアルに分かってはいませんでした。

 

でも、「サイバーフォーミュラSAGA」を作って行くなかで少しずつですが、商売や利益の意味を考えることが増えました。さらに、販管費のことも考えるようになりました。

スケジュールと制作予算の関係値は知ってます。

とっても、大切で重要ではあります。

 

仕事が早く終えるほど、次の仕事を入れることが出来ますので、人件費が分散します。

そうなると、手元に利益が残る可能性が高くなりますので、スケジュールを守ることは重要かつ大切です。

 

でも、アニメ制作は機械の手を借りずに、ほぼほぼ人間の手を使って生み出します。

さらに、創造(クリエイティブ)な仕事としてアイデアを思いつくなど時間が読めないことが多いです。

一瞬にしてひらめくこともありますが、何日経っても駄目なこともあります。

シナリオや絵コンテ、原画を生み出せない間、となりで待つだけの制作マンになってしまうので、とてもつらいです。

 

当然、制作は話し相手になったり、突破口を開いて、上がりが出るためにサポートするのですが、これもどのタイミングで声をかけるべきか?などタイミングが難しいです。

 

考えている邪魔をするだけのことにもなりますし、また、相手の性格にも反映することになり、早く声をかけて欲しい人、なるべく遅めに声をかけて欲しい人、それぞれです。

また、叱って欲しい人、褒めて欲しい人、うんうんと聞いて欲しい人と千差万別です。

クリエイターの個性に合わせて、我々制作マンは、細やかに対応して行くこととなるのですが、本当に人ほど付き合いが難しいことはないと思っています。

 

でも、わたしたち制作はそんなクリエイターたちから生み出される面白い、魅力的な物語、絵など上がるのをじっと待つしかないんです。

 

勇者シリーズを作っていた当時、夢ですが「監督の頭をコピー機と直結したら、絵コンテが印刷されたら良いなあ~」と考えていました!!

他の進行たちとこんなことを考えて、ワイワイと話した記憶があります。

 

アニメーターさんの頭とコピー機を直結したら、原画や動画が印刷されたら嬉しいなあ、と。

いまなら、監督の頭をパソコンに直結したら、CGが動いて映画が出来るなど、色々進化したものになりそうです。でも、最近の超AIの進化を見ると少し未来になると本当にやれそうな気がします。

電脳空間にダイブって感じになるのかしら?それって、まるで「攻殻機動隊」みたいだなって思ったりします。

 

前の原稿にも書いたグッズやCDなどの商品化、出版化のことから、キャラクタービジネスが分かってきました。

 

それぞれ、少しずつお金の流れ、利益構造を理解していきました。

 

素直に書きます。わたしは、全く経営側の勉強をしてきませんでした。

また、勉強出来る環境もありませんでした。さらに、そこに、目を頭も向けていませんでしたから、気づきが遅くトロかったんです。

いわゆる、アニメを作ることが楽しくて楽しくて、それだけで良いと思っていたからそこで意識が止まっていました。

お金儲けと言う言葉がありますが、それを言葉に出すことさえも悪と感じていたみたいなのです。

いまになって、当時の頃を思い出して考えてみるのですが、なかなかにピュアだったなと思います。本当に知らないって恐ろしい。

 

ありがたいことに、「サイバーフォーミュラSAGA」は、ヒットが約束されており、商品化なども相手会社さんからアプローチをいただけるタイトルです。

 

サンライズにとってわたしのような人間に「新人プロデューサー」をやらせたのは、本当に正しかったのか?ではあります(笑)。

もし、当時の上司がこの文章を読んだら「ヤレヤレ、お前は……」と頭を抱えるかと、思います。

 

でも、オリジナルアニメ大好きで、さらに舞-HiMEなど新しいジャンルへの挑戦もやって、相当な変化球ではありますが、新たな道筋を開拓したと思っております。

と言うことで、許してください。

 

また、当時は、TVシリーズ「星方武俠アウトロースター」も担当していましたから、OVA「サイバーフォーミュラSAGA」と、ふたつの作品を持って戦場にポイと投入されたのは、いま考えるとラッキーだったと想います。

「サイバーフォーミュラSAGA」は、ヒットが約束されているタイトルです。

また、「アウトロースター」も、伊東先生の知名度をお借りし展開しているわけです。

各アニメ誌やグッズメーカー方面から色々アプローチをいただきました。

 

わたしは、考えてもいなかった展開で新人プロデューサーになったのですが、その後は2作のタイトルを同時に持って前線に立たせてもらい実地訓練で覚えると言った流れでした。

 

机上論でなく、まずは経験することの大切さを知った時期でもありました。

楯も武器も持たずに、と2話で書きましたが、仕事をやって行くことで楯も武器も徐々に増えたし、大切な仲間を得ることが出来た、そんな時期でもありました。

 

 

追伸:

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古里尚丈(ふるさとなおたけ)

1961年5月3日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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