コンテンツへスキップ

カート

カートが空です

記事: 第17話:『大切な特殊効果、撮影、編集、ビデオ編集のこと書きます』

第17話:『大切な特殊効果、撮影、編集、ビデオ編集のこと書きます』

「サイバーフォーミュラSAGA」全8巻中、第1巻から第4巻あたりの記憶はありましたので、色々書くことが出来ました。

しかし、後半の巻数に起きたこと忘れてきています。

 

と言うことで、いままで書いていないアニメ制作の現場のことを少しだけ書きます。

 

今回は、アニメ制作にとってとても大切な部門の方々です。

特殊効果、撮影、編集、ビデオ編集のことをちょっと書きたいと思います。

 

「サイバーフォーミュラSAGA」において、「特殊効果」は大切なのです。

エキゾーストパイプから出る煙などは、エアブラシを吹くことが多いです。

止めのマシンなどのボディのディテールアップ(質感特効)としてエアブラシやレタッチを多用することがあります。

 

サンライズでは、昔から専門の特殊効果のスタッフがおります。

ロボットアニメ、アクションアニメの多い作品なので必要不可欠なのです。

金属の質感などのエアブラシ、レタッチなど対応します。

勇者シリーズでも随分とお願いしました。

ロボットやジェット機、ミサイルなどの噴射にブラシを吹きます。

ちなみに、ブラシの色で味方機か敵機かを見分けるテクニックもあるのです。

爆発も同様で爆発の煙のフォルム周辺にブラシを吹くことがあります。

ブラシなど使って写真のようにリアルな質感にすることもあります。

ちなみに、特殊効果の方のスタジオに行くと、写真のようにリアルな質感を入れたエンジン部などを壁に飾っているのを見た記憶があります。多分、ご自身の仕事のサンプルのような意味もあったのかなと思います。

 

大昔、撮影処理の透過光が使えないときに、ブラシで光のフレアやハロなどを吹いてもらっていました。

「SAGA」だと、走っているマシンの風切をブラシワークで表現などしていますね。

わたしは、特殊効果さんのやっている仕事として、このブラシは伝統工芸のような匠の世界を感じていました。

 

現代は、デジタルでブラシワークのようなことを行ったり、アフターエフェクトなどを使って効果を入れたり、足したりしていますね。

撮影スタッフやCGスタッフが特殊効果的なことを手掛けたりとデジタル化だからこその新しい取り組みや見せ方があります。

しかし、基本は個人個人のセンスが幅を効かせる世界なので、バンバンチャレンジしてカッコいい効果を見せてくれることを願っています。

 

でも、アナログ時代の職人の世界も好きなのです。

 

「撮影」。これはどうしても最後に集中する仕事です。となると、どの作品でも最後のしわ寄せが撮影にたまってしまい、我々が都度迷惑をかけている職種です。

当時の撮影は、いまのパソコン作業ではないです。

カメラにフィルム(16ミリor35ミリ)を入れて、セル画、背景など合わせて1コマ、1コマ撮影となります。

1秒24コマ、テレビシリーズだと本編約21分ですので、何コマの撮影が必要になるのか?です。それも、リテークカットもあるので、2倍近くの撮影をしています。

さらに、透過光のカットの場合は、都度フィルムを巻き戻して実際の光を入れて撮ります。

 

その……、撮影さんに「サイバーフォーミュラ」が嫌われている理由のひとつ。

マシンが走る地面の背景です、テレビシリーズの頃は3枚の地面を置き換えて撮影していました。この置き換えで移動している地面(道路)に見えるのです。

背景は、セルの一番下に起きますので、1コマずつセルと背景をタップから外して、取り換えながら撮って行くことになります。と言うことで、非常に手間がかかるのです。

OVAシリーズから、地面の背景は3枚から2枚になりました。

それでも、置き換えの手間は同じですが、効率は良くなっている感じです。など、地味で手間のかかる「サイバーフォーミュラ」は撮影が大変だと言うことになるのです。

また走るマシンの風切ブラシなども置き換えが必要です。ブラシはとても取り扱いが難しいのです。ブラシに触れるとすぐにキズになりますし、さらに大判セルでブラシと言うシチュエーションは、撮影まで運ぶ制作進行たちも気を使うので嫌なものでした。

 

デジタル化のいま、ブラシセルにキズが付くことはないです。

良かったなって思います。

 

「編集」作業。こちら撮影が終わってフィルム現像してから焼いたラッシュフィルムを切ってつなぐ作業です。

実写映画は編集命とも言われます。

はい、アニメの編集もとても重要かつ大切です。

ただ、実写と違って絵コンテがあるのでカットをつなぐ順番通りにつなげて、気になるカットの間やアクションの一部を切ることになります。

テレビシリーズだと5時間から長いと8時間くらいで編集作業は終わるかなと思います。

これが、実写だとたくさん撮影したラッシュから、それぞれを並べて、編集するわけですが、監督の頭のなかにある順番を試しながらつないで行くこととなるのです。いわゆる、絵コンテと言うガイドの有り無しで作業時間は変わりますね。何日もかかると聞きます。

 

いまでも、思い出すのは、編集時にあるアクションカットを絵コンテの順番通りにつなげていたのですが、とあるカットとあるカットを入れ替えたらめちゃカッコいいつながりになったことがあります。ちなみに、編集マジックでシーンの入れ替えも経験しました。

シナリオ、絵コンテ時よりストーリーが分かりやすくなったことがあります。

福田監督もそうですが、演出家さんは、1コマ切るか、2コマ切るか?にこだわります。

1秒24コマのなかの1コマなんて、と、考えますよね。でも、この1コマが重要なのです。あと、音をどう入れるか?も想像しながら切っていくこともあります。

いわゆる「間」が大切って奴ですね。

編集によって、その話数の出来不出来が決まる場合もあるなって思うわたしです。

 

「ビデオ編集」。これは、納品前の最後の仕事です。

1990年あたりまではビデオ編集はありませんでした。

OKカットのネガをつないでプリントを焼いてもらって「初号」と呼ばれる試写を行い、最終チェックをして、プロデューサー、監督、局のプロデューサーのOKが出るとそのプリントを納品するのが普通でした。

また納品プリントには音声も焼き込まれています。

つまり画ネガと音ネガを合わせてプリントを焼くんですね。

わたしの記憶だと1996年はビデオ編集がありました。まず、画ネガをテレシネをかけてビデオ編集用のデータに変換します。

当時のテレシネは、プリントを映写してそれを特殊なビデオカメラで撮影するシステムでした。ちなみに「SAGA」は、つないだネガを映写してテレシネします、理由はプリントを作る時間がなかったのです。

他の理由として、ラチチュードの広いネガからのテレシネの方が色味が綺麗で階調も深いのです。

ただし、通常はプリントからのテレシネなのです。

 

と、ビデオ編集データに変換し、ついにビデオ編集をします。

ギリギリまでのリテーク作業のカットを差し込み、文字などの入れ込み、ビデオエフェクトをかけて納品に向けてビデオ編集作業が夜から朝まで続きます。

 

わたしは、「SAGA」から、「舞-乙HiME」まで同じスタッフさんに担当してもらいました。

東京現像所の加悦英之さんです。

「電童」のときは、制作現場のことや作品のこと、当時の作品の売れ行きなど情報交換しました。

「クラッシュギアターボ」「マシンロボレスキュー」、そして、「舞-HiME」のころになると、アニメの専門用語と言うより、古里用語(わたしの適当なお願いの言葉)でもすぐに分かってもらえる付き合いとなっていました。

夜中から朝方までの作業が多かったので、時間もあって色々会話しましたね。

 

でも、わたしが朝方3時くらいになると眠くなってしまいソファで寝てしまいます。

5時くらいになると納品フォーマットも終え、「終わりましたよ」と起こされます。

本当にわたしだけ寝てしまい、ごめんなさい。

 

実は、いまこの東京現像所の建物は残っていますが、フィルム関係、ビデオ編集などの業務はありません。

2023年11月末で全事業が終了しました。

時間の流れ、技術の進化、フィルムに変わってデジタルになりました。

映画館もフィルム(プリント)上映がなくなり、デジタル上映です。

 

調布にある東京現像所に、上井草にあるサンライズから車移動に25分かかりました。

実は、進行たちのなか誰が一番早く着くか?で競争していました。

若いですね。懐かしいです。

わたしはわたしで、当時、脇道を極めたなって思い出します。

 

しかし、いま同じ道を使って走れ!と言われると、嫌ですね。

一通や、めちゃ狭い道が多いので、緊張して走ることになるのです。

 

ちなみに、東京現像所に行くために深大寺の近くを通るので、初号後に深大寺のお蕎麦屋さんで食べるのは楽しみのひとつでもありました。

※いまは、ゲゲゲの鬼太郎モチーフの茶屋があります。

 

勇者シリーズの初号の帰りに吉井プロデューサーがこの深大寺のお蕎麦屋さんで奢ってくれたことを思い出します。

美味しかったです。

ご馳走様でした。

 

色々なスタッフの力をお借りし、出来たアニメ「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」です。

本当に、お世話になりました。

ありがとうございます。

 

 

追伸:

YOUTUBE「ふるさとPアニメ道」もスタートしましたので、ぜひぜひチャンネル登録の上、ご覧くださいませ。

🔻リンクはこちら

HTTPS://WWW.YOUTUBE.COM/CHANNEL/UC_JRVVLJSFUHGMXPCVYUQ5A

 

🔻ふるさとP写真録:今週の一枚 

 

 

 

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

1961年5月3日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

1コメント

サイバーのエフェクトを、どうやって作られていたのかずっと気になってました。
まさに職人技ですね。
一コマ一コマこの作業を繰り返されたと思うと気が遠くなります。
デジタルや3Dで表現される映像も綺麗ですが、サイバーのあの映像は手描きにしか出来ない表現だと思いました。
OVAは1話30分で見ていると、あっという間に終わってしまいますが、内容が濃くて何度も見返してしまいます。これからも何度も見返して行くと思います。
それくらい大好きな作品です。

なぎさ

コメントを書く

このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

全てのコメントは、掲載前にモデレートされます

他の記事

第16話:『SAGA時代~ビジネス(商売・事業)と経営の意味を知り始めたあの頃です』
ふるさとP アニメ道

第16話:『SAGA時代~ビジネス(商売・事業)と経営の意味を知り始めたあの頃です』

 「サイバーフォーミュラSAGA」のプロデューサーとして参加していたあの頃、わたしはアニメを作ること、作れることだけで幸せでした。 自分の思考が、制作進行、制作デスクの気分の延長線上にしかなかったと思います。   プロデューサーには企画・制作・宣伝以外に、『ビジネス(商売・事業)』と言う新しい仕事が加わっていることにまだ気がついていないあの頃でした。 当たり前ですが、会社は利益が生まれること...

もっと見る
第18話:『ブーストをかけてSAGAからSINへ……のつもりが?』
ふるさとP アニメ道

第18話:『ブーストをかけてSAGAからSINへ……のつもりが?』

前回も書いたように、「SAGA」の後半の記憶が薄いのです。 と、言うことで「サイバーフォーミュラSAGA」第8巻の納品を終えたタイミングまで時間を飛ばします。   当時のアニメ業界には、作品作りが始まる時に「打ち入り」と言うスタッフの顔合わせの会合があります。 「サイバーフォーミュラSAGA」でも打ち入りはやっているはずなのですが、全く記憶がありません。忙しすぎて、記憶が忙殺されたのでしょう...

もっと見る