記事: 第71回:『舞-乙HiME、BGMの作曲は梶浦由記さん、そして挿入歌もありました』
第71回:『舞-乙HiME、BGMの作曲は梶浦由記さん、そして挿入歌もありました』
前回に引き続き「舞-乙HiME」の音楽のお話です。
アニメ本編を彩る音楽は、梶浦(由記)さんの書くBGMとなります。
どうしてもBGM(背景音楽)と書いてしまいますが、わたしは背景にではなくアニメ本編を飛び越えて前面に出てもらって良いと考えています。
音楽が主張して欲しいので、梶浦さんに「舞-HiME」のときにお願いしました。
2004年当時、運良く担当してもらえたのです。
シリーズ2作目となる「舞-乙HiME」の音楽も担当して欲しいと思っておりましたが、スケジュールが合うのか?とドキドキでした。
音楽プロデューサーでありランティスの社長でもある井上(俊次)さんに確認してもらいました。
後日、梶浦さんに「やります」と返事をいただきました。
本当に嬉しかったです。
そして、音響監督と小原(正和)監督、わたし、バンダイビジュアル国崎(久徳)プロデューサー、ランティス井上さんとで本編のためにメニュー打ち合わせからの、メニュー作成。
メニューとは、シナリオや絵コンテからオトメのマテリアライズシーン、舞闘シーン、学園生活シーン、エルスティンの悩みシーン、暗躍するシュヴァルツシーン、ニナのハルモニウムシーンなどそれぞれのシーンを想定して、使うであろう尺(分数)も考えて、発注メモを作成するのです、そのメモをメニュー表と言います。
出来上がったメニューを元に、梶浦さんとの打ち合わせを行いました。
1回の打ち合わせで、26話数全部の発注は出来ません。
通常2回、13話までと、後半26話までと2回に分けて発注することが多いです。
「舞-乙HiME」は、ラストの20~26話用とで計3回になったような気がします。
となると、納品データを3回に分けていただくことになります。
手元にデータが届いてパソコンで聞く音楽。
iTunesからiPodにデータコピーして、ヘッドホンで聴きまくりです。
さらに、CDに焼いて車のなかでも聴きました。
聞くとどんどん「舞-乙HiME」の世界観が広がります。
「舞-HiME」に引き続き「舞-乙HiME」も、梶浦サウンドにて視聴者の皆々様に贈ることが出来て、本当に安心しました。
出来た曲を聴いて気がついたことがありました。
「舞-HiME」は、梶浦サウンドとしてど真ん中の曲だと思いました。
そして、「舞-乙HiME」では、「舞-HiME」の系譜にはあるのですが、新しい試みがあるように感じました。
特に、後半話数のハルモニウムを弾くニナが街に巨大な影となって現れるシーンであったり、敵シュヴァルツのスレイブの登場から街の破壊シーンだったりと、戦う相手の大きさ、サイズがデカいのです。
「舞-HiME」にもチャイルドがいますが、でも、「HiME」対「HiME」いわゆる、「人」対「人」のバトルがメインとなります。
「舞-乙HiME」も確かに「オトメ」対「オトメ」のバトルもあります。
しかしそこには、「オトメ」における代理戦争が物語の骨子にあったりもします。
さらに「オトメ」対「スレイブ」が見せ場にもなっていますし、また、航砂空母などでかい艦が出てきます。
またスレイブは、有る種怪獣みたいなものです。
と言うことで、戦闘曲のサイズ感のアプローチが違っていると思うのです。
サンライズ的巨大ロボット物のテイストもあるのが「舞-乙HiME」ではなかろうか?と思った次第です。そんなことを考えながら、梶浦さんの曲を聴きました。
当時梶浦さんの幅の広さに感動していたそんな記憶があります。
ちなみに、わたしは、マテリアライズの台詞とともにオトメの変身のところに流れる曲は好きです。
また、時折メロディのなかに「舞-HiME」のメロディが混じるのも好きです。
音楽がふたつの作品をつないでくれます。
絶妙なタイミングで「舞-HiME」が流れて来ることでテンションが上がります。
それこそ、梶浦さんあっぱれとなるわたしなのです。
梶浦さんのライブに数回行ったことがありますが、この数年は行けずにおりました。
2025年9月20日土曜日に【TVアニメ『舞-HiME』&『舞-乙HiME』20周年記念 フィルムコンサート】で、久しぶりに梶浦さんにお会いできるのは超楽しみです。
次に書きたいのは、本編に流れる挿入歌のことです。
CD「Crystal Energy」のカップリング曲が「風と星に抱かれて…」という挿入歌。
アニメ本編第24話のなか、ニナがエルスティンの手紙を読んでの回想に入る挿入歌です。
梶浦さんの書いた曲ではないのですが、本編にマッチングしていると思います。
オープニング主題歌同様に、作詞・作曲:栗林(みな実)さんが担当しています。ただ編曲は大久保(薫)さんとなり、エンディング主題歌を担当している方になります。
ちなみに、オープニング主題歌の編曲家は、飯塚(昌明)さんです。
編曲家が違うのは、ランティスの井上さんの采配であり、このあたりの分担が面白いです。
ふとこの歌、栗林さんが、エルスティンの気持ちで書いているのかな?と思ったりします。
詩も曲も、世界観とエルスティンの物語、あるいは、ニナの物語とピタッとハマっていると思い、ダビングのときのことを思い出します。
あの頃は、アフレコ時はモノクロでしたが、ダビング時には何とかカラーにして望んでいたので、本編がカラーになった映像を見て、声、効果音、曲が加わることで、その話数の感動ポイントが増していくのです。
モニターを見ながら、挿入歌が加わることでより自分の感情にぐさっと刺さるなと感じた次第です。
もうひとつの挿入歌「星が奏でるものがたり」は、作詞:畑 亜貴・作曲:梶浦由記・編曲:安瀬 聖さんになります。
ここで、梶浦さんの曲、挿入歌が来ます。
この歌は、物語のキーポイントになっています。
アリカ、ニナ、マシロの誰が本当のお姫さまなのか?です。
と言うことで歌唱は、アリカ(CV:菊地美香)&ニナ(CV:小清水亜美)&マシロ(CV:ゆかな)が、シーン毎によって使い分けの歌になっています。
「舞-乙HiME」は、「舞-HiME」より挿入歌を増やしています。
人の声はある種楽器のなかでも、より目立つんです。
聴く方にアプローチする力は強いと思うのです。
「舞-乙HiME」の時代は、本編内で歌を歌う、つまりミュージカル風味のアニメは少ししかありませんでした。また、実際制作をするとなると、本当に困難が待っているのです。
歌に合わせて、口パクをしてアクションもする絵を描くとなると、アニメーターのなかでも上手な方でないと上がらないことも多く、スケジュールを圧迫します。
「舞-乙HiME」以降、色々な作品で本編に歌が入るタイトルが増えたと思っています。
わたし的には、後々に絡んだ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」もそんな作品の1本です。レヴューの作画カロリーは本当に高かったと思いますが、コンテ・演出家、アニメーターさんの表現力は目を見張るものがありました。
もし、わたしがサンライズを辞めないで、プロデューサーを続けていたら、「舞-乙HiME」以上に宝塚のニュアンスを持った歌って踊る系アニメを企画したかも?と思うことがあります。
でも、いつの日か、別な形になってでも、初志貫徹、やり抜くゾ!
女の子の主人公たちが歌って踊って、でもって変身アクションもあるような燃えと萌えが主張するアニメを作るぞ!と神や仏に祈っています。
「2025年9月20日土曜日」に【TVアニメ『舞-HiME』&『舞-乙HiME』
20周年記念 フィルムコンサート】が、松戸・森のホール21 大ホールで開催します。
昼の部、開場 12:00 開演 13:00
夜の部、開場 16:30 開演 17:30、となります。
「舞-HiME」「舞-乙HiME」のBGMを書いた梶浦由記さんが、映像にあわせて自ら演奏もします。
そして、挿入歌をアリカ役の菊地美香さんが歌います。
わたしもステージで少しお話ししますので、是非ともみんなで盛り上がりましょう!!

古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。
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