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記事: 第77回:『サイバーフォーミュラSIN、オープニング主題歌「Pray」をLAZYが歌う!』

第77回:『サイバーフォーミュラSIN、オープニング主題歌「Pray」をLAZYが歌う!』

「新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN(以降、サイバーSIN)」第1巻発売が19981221日となりました。

本数は、全巻5本。

当時のわたしたちが作れる本数を考えました。そして、デスクと相談して決めました。

 

わたしは「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA(以降、サイバーSAGA)」を作ったことで、新作を作るにはどうすれば良いのか?を色々考えました。

そこで、やり方をガラリと変えることにしました。

全巻、ほぼ同じスタッフで作ることにしたのです。

絵コンテは福田監督が描く。キャラクター作画監督も久行(宏和)さんが担当し、メカ作画監督を重田(智)さんが担当と、全5巻ともに同じメンバーで作っていくのです。

原画マンなどは少し変化してもメインスタッフはほぼ同じで行くことで、クオリティを堅持することになります。

 

その変わり、発売スケジュールが、数カ月おきになります。

毎月発売とか隔月発売は出来なくなりますので、宣伝などは一工夫必要です。

ちなみに、この作り方に決めたことで、おのずとベストは、全5巻ではないか?となりました。

 

これらのお願いをバップに相談して、OKをもらいました。

 

「サイバーSAGA」の納品が終わったばかりで、さてさてどこから手をつけて行くのか?

リアルに色々決めていく必要があります。

 

一番最初に決めなければならないことは、何か?

 

それは、どんなお話にするのか?です。

物語を決めて、プロット、シナリオを書くことになります。

 

新しいサイバーシリーズを作ることが決まったとき、福田(己津央)監督が、わたしに「古里さん、誰の話を見たいですか?」と質問してきました。

わたしは、「加賀ちゃんの話が見たいですね」と答えました。

好きなキャラは誰と問われると、「ランドル」と答えますが、誰の物語を見たいか?となると、ブリード・加賀です。

加賀には「テレビシリーズ、11、ゼロ、SAGA」で、描いていないドラマがまだあると思ったのです。

 

さらに、加賀の物語をサイバーファンの方々も見たいのではないかな?と思ったのです。

 

福田監督、わたしともに、新作OVAでは加賀を真ん中に据えて行こうとなりました。

 

新キャラを出して、ハヤトと対決させるには、「SAGA」をやった経験上全8巻は必要だと思っていました。

今回は、全5巻と決めましたので、3巻少ないわけです。そうなると、新キャラを出すとその説明に12話使うのですが、それは無理です。

だからこそ、すでに説明のいらない既存のキャラクターに王者ハヤトに挑ませる必要があるのです。ただ、新型マシンを出すことになったので、そのマシンは見せる、説明する必要があります。

 

5巻(起承転結プラスα)と決めたことで、色々な制約が生まれてしまったのです。

 

その既存のキャラクターのなかでも、ドラマをまだ深堀りしていない、そして、人気キャラであることなど、色々なバランスのなかで、ブリード・加賀は最適解だったのではないだろうか?と思うのです。

 

あと、福田監督とシリーズ構成&シナリオライターの両澤(千晶)さんの間でも色々話し合って加賀で行くことになったと思うのです。

 

古里が見たいと言ったから決まるなんてことはないでしょう。

福田監督の腹づもりとして加賀の物語なら描けると決めたんだと思います。

 

とにかく、加賀のお話を描くこととなりました。

合わせて、加賀に乗ってもらいたい新型マシンも出すこととなり、それはマシンデザイナーの河森(正治)さんに発注することになりました。

 

キャラクターデザインについては、「SAGA」に引き続き久行(宏和)さんが描くのですが、「全部描き直すから」となりました。

 

美術やゲスト設定、小物設定などはシナリオが上がり、絵コンテに入ってから描いてもらうことになるので、まずは、両澤さんにストーリープロットに入ってもらいます。

合わせて、キャラクターのスペック、マシンのスペックを決めることで、発注して行きます。

 

とにかく、「サイバーSIN」が正式に動き出しました。ちなみに、この段階では正式なタイトルは決まっていませんが、わたしが書くときに混乱するので「サイバーSIN」と書きます。

 

「サイバーSAGA」のときと違って、何をどんな順番で進めると良いのか?が分かっていますので、まず重要な音楽をどうするか?を考えました。

 

1997年秋、レコード会社は、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」と同じエアーズに決まりました。ただ、ひとつだけ変化がありました。

音楽プロデューサーが代わりまして、井上(俊次)さんになりました。

井上さんとは、「サイバーSIN」を一緒にやり、「激闘!クラッシュギアターボ」、「出撃!マシンロボレスキュー」、「舞-HiME」、「舞-HiME」、「アイドルマスターXENOGLOSSIA」、「宇宙をかける少女」まで長く音楽プロデューサーをやっていただきました。

 

まずは、井上さんに「サイバーSIN」音楽制作を正式にお願いをしました。

作曲家の佐橋(俊彦)さんは続行となります。

オープニング主題歌、エンディング主題歌、挿入歌については、わたしからのオーダーはありませんでした。

 

井上さんから「是非、一緒にやりましょう」と、心強い言葉をもらいました。

 

それから、色々打ち合わせを行いました。

ある日、井上さんがひとつ提案してきたのです。

「古里さん、実は、自分が昔所属していたグループLAZY(レイジー)が再結成するのです」と話しました。そして、「オープニング主題歌、コラボするのはどうだろう?」と言うのです。さらに、「いまから新しいアルバムを作るので、その中に気に入ったものがあればオープニング主題歌に使って欲しい」と言われました。

 

わたしは、自分が高校生時代にテレビのなかで歌っていたLAZYを思い出していました。

そうなのです。LAZYはわたしにとってテレビの中の人たちだったのです。

テレビに出ていた当時のメンバーは1718歳、「赤頭巾ちゃん御用心」と言う歌で一躍有名になった方々なのです。

年齢や歌の内容など諸々、アイドルグループ的意味合いが強かったと思います。

 

井上さんと色々話しましたが、本人たちはロックをやりたかったそうです。

だからこそ、目標とする音楽性について話し合った結果、数年後解散することになったようです。

 

そして、1997年秋「自分たちもおっさん(大人)になったし、ちょっと面白いことしよう」とみんなで話し合って再結成になったと井上さんは笑って教えてくれました。

 

新作アルバム「Happy Time」の収録が始まりました。

わたしも数回収録に立ち会いました。

曲が生まれていく過程を見せて(聴かせて)もらいました。

メンバーがそれぞれ好きに演奏していくのです。

 

樋口(宗孝)さん、タッパもあり腕も太く、力強いドラムスの音が鳴ります。

田中(宏幸)さんのベースは、なんだろう優しさを感じました。

高崎(晃)さんのギターは、ひたすらカッコいい。

ラストに、井上さんのキーボードで、メロディが加わります。

そして、作詞が上がり、ボーカルの影山(ヒロノブ)さんが歌います。

 

アニメソングの作り方とも違うし、ロックのメンバーが生み出す曲はとても大人っぽく聴こえました。

スローバラード風のロックです。

スタジオのスピーカーから鳴る曲を聴いたわたしの心に浮かんだ映像はアフリカの地を動物たちが移動していく雄大なものでした。

 

改めて、「サイバーSIN」だと、どうなるのか?と想像してみました。

「ああ、この主題歌は大人になったマシンドライバーたちの歌なんだ。ハヤトや加賀たちのためのバラードなんだ、さらにヒロインたちの祈りの歌でもあるんだ」と思ったのです。

 

タイトル「Pray(祈り)」と、井上さんに聞いたときに不思議と納得したものです。

 

当時、出来上がった歌をカセットテープにダビングしてもらって、車のなかで何度も聴きました。

そうすると、加賀のマシンが疾走する姿が見えます。

ハヤトのマシンが疾走する姿が見えます。

魅力的なドライバーたちのマシンが走る姿も見えます。

 

「サイバーSAGA」は、アップテンポの主題歌でした。

「サイバーSIN」では、いままでとは違うアプローチの主題歌として、とても素敵な歌をもらったと思いました。

 

福田監督に音源を渡して聴いてもらい、絵コンテを描いてもらうのですが、素晴らしいオープニング映像が出来たと思っています。

わたしは、アメリカの荒野をバイクで走る加賀が好きです。

 

実は、第5巻の新作エンディングの映像を見たとき、オープニング主題歌のバイクの加賀は、第1巻日本に行く前のものなのか?それとも、第5巻の全ての物語が終わったあと、心に自由を得た加賀が荒野を走っているのか?と勝手な想像したものです。

実際は、髪の毛を切っていませんので、第1巻ではあるんですが……、まあ、古里の妄想です。

 

 

最後に思い出すのは……。

2006年に田中さんが、2008年に樋口さんが天に旅立ちました。それを、わたしがランティスに行ったときに、井上さんから聞いたときの悲しそうな表情です。中高生時代からの付き合いのメンバーの旅立ちは本当に辛かっただろうな、と思いました。

 

わたしは、3回くらいスタジオに通って、挨拶して「Pray」が生まれるまでを、見る(聴く)ことが出来たのが思い出として大きいです。

あと、樋口さんの近くにシャ乱Qのはたけさんがいるのもびっくりしたことを思い出しますね。 

 

 

 

 

 

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

196153日生まれ。青森県出身。1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

20112月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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