【前編】なぜ?グッズクリエイター「いいじゃん」がTEKKEN8プロゲーマーB君選手を応援することに!?

今回は、株式会社いいじゃんの代表 鈴木将史(以下、鈴木)と、EVO Japan 2025のTEKKEN8部門に出場するB君選手(以下、B君)の対談・前編です。
――まず、そもそも「いいじゃん」って何?

B君:
確かに面白い名前の会社ですよね。鈴木さん、「いいじゃん」の会社紹介をお願いできますか?
鈴木:
はい。「いいじゃん」は香港を拠点に、グッズメーカーとして2019年に開業しました。
アニメ、ゲームのライセンスを正式に取得し、その関連グッズの企画と製造、そして販売まで行なっている会社で、特徴としてはまず代表であるわたし自身がガチンコのゲーマーで、あとアニメも好きです。だからユーザーの気持ちを乗せた商品企画やデザインをすることにこだわるし、特に日常使いできるとか、誰かに自慢できるとか、コミュニケーションのきっかけになれることを意識して仕事をしてますね。
もうひとつ挑戦しているのが、世界に向けて販売しているというところで、グッズ欲が満たされてない人が、まだまだ世界中に沢山いると思って、主にEC経由で海外向けに販売してます。
社名のとおり、皆さんから「それ、いいじゃん!」と言ってもらえることを意識しています。
なぜ香港の会社がTEKKEN8のesports選手を応援するのか?

――なぜ、アニメ・ゲームグッズのメーカーがB君をスポンサードすることに?

鈴木:
それを話す前提として、まずはわたし自身の話からしましょうか。
わたしは典型的なゲーセン育ちでして、たとえば大学生時代には「鉄拳タッグトーナメント」「鉄拳4」などをプレイしてました。その時の経験から、ゲームセンター(以下、ゲーセン)に関する仕事をしたいと思って、新卒でナムコ(現:バンダイナムコエクスペリエンス)に入社しました。そして念願のロケーション部門の仕事に就けたんです。
その時に培ったナムコの教え、つまり「ゲームを遊んでくれるお客さんが、喜んでもらえるような考え方」が身体に沁みこんでいて、それが今のグッズデザインやアイデアの根幹になっているんだと思います。
B君:
ゲーセンの店長さんだったんですね。ゲームをするお客さんの考え方とグッズを手に取る感覚は似ているかも。
鈴木:
そうなんです。2019年にナムコを退職して「いいじゃん」を立ち上げたのですが、これまでお世話になったゲーム・アニメ業界に還元・貢献したいっていう気持ちがずっとあったんですよ。
まさかり仁さんから、このスポンサードのお話をお聞きして、わたしらしい形として次の世代の応援をするというのは素敵かなと思いまして。まさかり仁さんには二つ返事で、わたしがスポンサードするならば世界に羽ばたくような若手の選手を応援したいんですとお伝えしました。

B君:
めっちゃ嬉しいです。ぼくがスポンサードのお話をいただいたときに思ったのが「相性最強」だったんですよ。ぼくもゲームやアニメがめっちゃ好きで、オタクなんです。でも自分の好きな作品は欲しいグッズとが中々出ないんですよね。そういったファンを助けてくれる会社があるのが嬉しかったし、さらにぼくを応援してくれるなんて。鉄拳のライセンス選手の一番若手で良かったです(笑)
もちろん一人でも頑張れるんですけど、応援してくれる人がいるから頑張れるっていう気持ちは、やっぱ絶対にあるんですよ!
鈴木:
わたしも応援する選手が決まったので、次のEVO Japanが楽しみになりました。
やっぱ、おもしれえじゃん「鉄拳」って。

――B君から見たesportsシーンにおける「鉄拳」の現在地とは?
B君:
ぶっちゃけて話していいですか?
2025年の現時点で、鉄拳は格ゲー業界二番手の立ち位置にいると思うんです。だけど、ぼくは鉄拳が一番になれる可能性はあると思っています。
ぼくの体験談ですが、世界を見れば地域によっては鉄拳の方が人気なところもあります。それが顕著なのが、サウジアラビアでした。去年のEWC2024のLCQ(最終予選)に参加した時、鉄拳の参加人数が一番多かったんですよ。
鈴木:
そうだったんですね!わたしもYouTubeで見ていましたが、それは知らなかった、びっくりです。
B君:
だからぼくは全然、鉄拳は負けてないなっていう印象はあります。だからこれからどう伸ばしていくかが重要で、プロライセンス選手や、企業プロプレイヤーの課題だと思ってます。
実際にTEKKEN8は、まだまだポテンシャルのある作品だと思っています。やっぱ、おもしれえじゃん「鉄拳」って。
本当に面白いんですよ、このゲーム。もう、なんかすごい。… って感覚的になって語彙力無くしちゃいましたけど(笑)あとは逆に鉄拳プレイヤーってゲームや世界観が好きすぎて、悪口言っちゃう人もいますけどね(笑)

鈴木:
わたしも久々にTEKKEN8からカムバックしたから同類なんですが、長年やってる熟年テケナー(鉄拳プレイヤー)が多いって印象。本当に面白いからもっと若い世代のゲーマーに広まって欲しいと思ってます。
B君:
結局、ぼくたちテケナーにとっては、これが一番面白いと思って鉄拳をやってますので。だから、もっと盛り上げていきたいですね。その魅力を世の中に伝えて、いろんな企業様から協力を得て、もっと大きな大会が更に開催されるようになってくれたら嬉しいなって。
これが、ぼくの「鉄拳」のesportsにおける現状の見え方です。
鈴木:
わたしが元ナムコだからというだけではありませんが、「鉄拳」って昔から感情的に熱くなれるすごい稀有なゲームだと思います。
遠距離では相手のスカを狙ったり、近距離は展開の早い読み合いしたり。仕掛けの数が早くて多いから気が抜けない。間違ったら一瞬で倒されるみたいな。そうやってランクマやってると、どんどん温まるというか頭に来ることもあるじゃないですか。その本能的な楽しみに目を背けないゲームっていう印象です。
B君:
はいはい。いや、もうつい熱くなって、頭にきちゃいますよね。
鈴木:
だからB君みたいな競技シーンで戦う人って、相手のその状態を逆手に取れる冷静な人っていうイメージです。実にすごいなと。
鉄拳と他のゲームを比較するとかではなくて、それぞれの良さを楽しめばよいかと思っています。
メンタルやられて、普段ミスらないコンボを落として勝ち確を逃したり。

――esportsシーンの応援文化はどうでしょうか?
B君:
正直応援されると、めっちゃ力になります。 関西の人って、応援凄いんですよ。大阪の大会とかであったんですけども、マジで対戦相手にだけ声援が来て、自分だけ応援ゼロみたいなシーンが結構あったんですよ(笑)
本当にそれでメンタルやられて、普段ミスらないコンボを落として勝ち確を逃したり。
鈴木:
そうですか。やっぱりホームとアウェイでパフォーマンスが違うんですね。オフラインの対戦格闘ゲーム大会だから起きる現象ですよね、マインドゲームというか。メンタルが落ち着いてないと、二択の瞬間の駆け引きに影響があると。
観客にも伝わるわかりやすい読み合いの瞬間、やらかした時の悔しさがあるんだろうなぁ。

B君:
はい、だから、応援とかその会場のムードがその読み合いの精度に直結するっていうのは本当にあります。
応援が無いと、思い切った選択とかもできなくなっちゃって負けちゃった。みたいなことが結構あるんですよ。
鈴木:
確かに会場や、配信を見ていて伝わってくるときもありますね。
B君:
メンタルを維持するっていう意味でも、オーディエンスや身内からの応援っていうのは、すごく重要な要素になるんじゃないかなと個人的に思っています。
「いいじゃん」さん、読者の皆さん、ぜひ応援をよろしくお願いします(笑)
TEKKEN SHOP2024でいいじゃんのTシャツが売切れ続出

――昨年は「いいじゃん」からTEKKEN8のTシャツが販売されましたね。全キャラのデザインが揃っているというトンデモナイ企画だと思うのですが。

鈴木:
最初は、お付き合いのあるバンダイナムコエンターテインメントのアジア支社さんからご連絡をいただいたんです。シンプルなデザインでいいので、韓国での発売日イベント用にTシャツをつくってみませんかというオファーでした。
でもわたしたちってお客さんが欲しくなるもの、嬉しいものっていう企画に一貫してこだわっている会社なんです。だからあくまで例えばの話ですが、風間仁の顔だけがドーンと大きく正面に貼られているだけのTシャツとかは、個人的に欲しくないと思いました。
B君:
アニメグッズでそういうのたまにありますよね。ぼくもたとえ好きなキャラでもそういうのは買いません(笑)
鈴木:
日常で着たくなるデザインTシャツであることは「いいじゃん」の理念としてもちろんですが、その他にもどんな企画だと喜んでもらえたり、SNSやファンコミュニティで話題にしてもらえるのかな?ってことを普段から考えています。なので、「いいじゃん」らしい商品を作った方がいいよねと思って。
そんなときわたしが鉄拳5や6で使ってたレイ=ウーロン、ドラグノフとかのTシャツって見たことないよなぁって気付いて。
B君:
ああ、確かに見たことないかもですね。
鈴木:
それでその瞬間にひらめいて。全て決まったんですよ。TEKKEN8企画のスタート時点で「キャラクター全種を用意しなきゃいけない」と。これなら、絶対にお客さんは喜ぶよねって。いいじゃん、そうしよう!って。
急遽徹夜でプレイアブル全32種のキャラクターのTシャツデザインと提案書を作ってプレゼンさせていただいたところ、すぐにOKをいただき、本格的な制作に取りかかりました。

B君:
熱すぎる!!
鈴木:
発売後の反響もとてもよくて、よくぞクラウディオのシャツ作ってくれました!ドラグノフのグッズがでたぞ!というXでのポストを沢山見てちょっと泣きました(笑)プロレスTシャツ的な文法を意識したデザインもいいよねって意見も多くて、こだわった点が伝わったので嬉しかったです。
韓国での発売プロモーション時に、原田プロデューサーが当社のTシャツを着ていただけたのもXで評判になったんですよ。それで口コミが広がって、バンダイナムコエンターテインメントさんから特例的にオファーをいただき、日本のユーザーにも届けていいことに。そういった流れでEVO Japanで限定販売することになりました。
そうそう、ある夜にYouTubeを見ていたら、「ゲンヤの部屋」に飾っていただいていたんですよ。そしたら今度はアメリカやヨーロッパのプレイヤーさんからも多くのメッセージをいただきました。EVOラスベガスでも売ってくれよと(笑)
B君:
それは嬉しい悲鳴ですね(笑)鉄拳を「好き」な気持ちは世界共通なんだなぁ。
いいじゃんの鉄拳8全種キャラTシャツについて

――EVO Japan 2024 TEKKEN SHOPの当日はいかがでしたか

B君:
EVO Japan 2024で、ぼくは第1ターンだったので、朝一番で買いに行ったんです。プールを勝ち上がってから並んでいたら、もう既にいいじゃんのTシャツはほぼ売り切れでした。ぼくがお目当てにしていたアリサとヴィクターはなんとか買えました。
鉄拳のイベントでは見たことないぐらいグッズコーナーが大盛況でしたね。
鈴木:
いやほんとに有難いことでした。当日Xでお客様が口コミを広げていただいたおかげでさらに販売数が延びたのかなと。予想していた枚数では全然足りなくて、欲しい方全員にお届けすることができなかったのはわたしたちもとても悔しかったんですけど。
あとXで「ドラグノフのシャツをたくさん購入しました!作ってくれてありがとう!」という推しの方から報告があったりして、むしろわたしの方が感謝の気持ちでいっぱいになってしまい、思わず涙が溢れました。
B君:
激熱ですね!!

鈴木:
その後、昨年末に行われた「TWT 2024 ファイナル 超鉄拳祭」 渋谷会場に香港から視察に行ったんですけど、会場では結構たくさんのプレイヤーさんが、うちのTシャツを着てくれていまして。
B君:
それはさらに嬉しすぎる!
鈴木:
友達同士でポールとロウのTシャツを着てくれている方達が目の前を通った時に、嬉しくてまたちょっと泣きました。
B君:
それは泣けますよね。絶対!!!
鈴木:
この瞬間のために「いいじゃん」って会社は仕事をしているんだよなーっ、と思い改めて誇りに感じました。
この想いはこれからも変わることないでしょうね。グッズクリエイター「いいじゃん」らしい仕事ができたことがとても嬉しかったです。
可能な限り、全ユーザーを満足させる、宿命として。

――TEKKEN8のグッズ販売についてもうすこし教えてください。

B君:
ぼくは鉄拳のイベントで自分の好きなグッズを購入できたことが純粋に嬉しかったですね。
鈴木:
と言いますと?
B君:
今まで鉄拳のTシャツって、大会に参加した時にもらえるプロモーション限定配布が多いイメージだったんですよ。
そうじゃなくて自分の欲しいキャラのグッズが用意されたことが、ファンとして嬉しかったです。新キャラのヴィクターとかが、発売直後にすぐ手に入るっていうのはなんか凄くないですか。いままでイケおじキャラとかグッズ化されてこなかったから。
鈴木:
たしかにおじキャラはグッズ化が少ないですよね。
B君:
その時は何も知らなかったからだけど、後に知ることになる「いいじゃん」さんがそういう考えで動いててくれたんだなぁと。こういうファンに寄り添ってくれる会社があるんだ!っていうのが印象的でした。
鈴木:
そう思ってくれるのは嬉しいな。ただ、それって鉄拳プロジェクトが、TEKKEN SHOPを大型イベントに出店してくださったから実現出来たことで、そこが重要なんです。
鉄拳プロジェクトは、いまでもユーザーを大事にしている証拠だと思うんですよね。
B君:
鉄拳プロジェクトには、ありがたいという気持ちしかありませんね。改めてですが、「いいじゃん」さんの全キャラTシャツは、ビジネス的に「頭おかしい」し、正気の沙汰じゃないと思いました(笑)

鈴木:
嬉しいことおっしゃる。その「頭おかしい」っていうのは、むしろ褒め言葉だと思ってるから(笑)
B君:
いや、もう、全ユーザーのために全キャラグッズを出すってのは、スゲーなって思いました。
鈴木:
わたしはゲーマー出身というか今も現役プレイヤーだと思っているんですけど。だとしたら、この発想は本当はおかしくないよっていうことで。
よくある、ビジネス的に売れなさそうなキャラはやめようって経営判断は普通の会社なら当たり前ですよね。
でも、TEKKENシリーズのテーマというかサブタイトルみたいなのにあるじゃないですか「FATE(宿命)」みたいな。可能な限り、全ユーザーを満足させる、「いいじゃん」の宿命として。だから迷わず全キャラのTシャツを作らなければいけないなと。
B君:
これ、当たり前じゃないですよ、ユーザー目線で寄り添うことが宿命とか。やっぱり嬉しいですよ。
鈴木:
B君がこんなに褒めてくれると嬉しくてまた泣きそうになるんだけど(笑)
実際、グッズを作る際にこういう「宿命」エピソードが他にもたくさんあって、「いいじゃん」ならではのエッセンスをいつも企画に込めています。
それがわたしたちが「グッズクリエイター」と名乗っている所以です。
(後編につづく)
⭐️今回の対談でB君選手と鈴木が着ているシャツは2025年の新作商品です。
⭐️お求めは「EVOJAPAN2025」に出店しているTEKKEN SHOP店頭にて!
【後編】 元ゲーセン店長と、神社の息子・ライセンス選手の二刀流から見た鉄拳esportsの世界とは。

取材・文・撮影/まさかり仁
モデル撮影/中村ユタカ
TEKKEN™8 & ©Bandai Namco Entertainment Inc.
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