第36話:『舞-HiME、最終回のアフレコ、そして放送も終わり打ち上げです!』
2025年2月のある日、「舞-HiME」第26話最終回のアフレコです。
舞衣と命のバトル、第1話のときのアフレコではなつきと命のバトルがいきなり始まり、舞衣は巻き込まれての悲鳴が満載でした。
すでに25話経験した舞衣も命も手慣れての戦闘の声出しとなりました。
「はああああぁぁぁ~~」と大剣を振り回す命。
舞衣も「カグツチ!!!」の掛け声や決め台詞なども感情豊かに演じていました。
今年夏だったか知り合いが「舞-HiME」のラストがハッピーエンドで締めるので、見ていて助かると言われました。当時、鬱展開と言われたストーリーでしたが、ラストを見てほっとしたと言うことのようです。
2004年のあのあたりから、辛い展開のアニメはあまり見たくないと言った声が多くなったように思います。
主人公たちが大きな障害を乗り越えて行くことにドラマがあるので、その部分をなくしてしまったら波風の立たない平坦なストーリーになるので、さすがにそれは出来ないと考えました。でも、世の中は癒やしを求めている時代になっているのも感じるのです。と言っても、わたしは、艱難辛苦が待っている物語が好きなので、変えることなく企画をすると覚悟を決めていきました。
さていつも通り、アフレコ収録は進んで無事に終わりました。
媛星に向かうHiMEたち、清姫に乗った静留の「かんにんえ」で済ますノリは、シナリオにはなかった部分です。これは、多分監督が絵コンテ時に入れたカットです。シリアスなシーンに、このコメディバランスは小原監督の真骨頂に感じます。
さて、わたしたち各プロデューサー陣は、裏方としてドタバタしています。
声優さんたちに見えない場所に花束を用意し、テーブルにはお菓子などもいつも以上に用意しています。
アフレコ本番、Bパートの最後の収録が終わると、わたし、国崎プロデューサーが用意してあった花束を持って、アフレコブースに入って行きます。
大きな声で「アフレコお疲れ様でした」と挨拶をし、まず、舞衣役の中原(麻衣)さん、なつき役の千葉(紗子)さん、命役の清水(愛)さんに感謝を込めて花束を渡します。
そして、声優さん全員に「ありがとうございました」との意味合いで花束を渡していきます。
7~8ヶ月間、26話数とCDドラマのアフレコを無事に終えたので、中原さん千葉さん清水さんは、ホッと安堵の表情でした。主役として半年間付き合ったわけですから、色々な感情があったのかなと思います。わたしが、声優さんにインタビューするなんてことはありませんので、最終回を終えた後の感想は知りません。
わたしは、無事に終えたことの喜びとともに、何だか言い得ぬ寂しさを感じていました。
始まりがあれば必ず終わりもあります。そうして、また始まりがあるのです。その始まりを期待するしかないと思うのです。でも、このテレビシリーズ「舞-HiME」のアフレコは二度とないので、一期一会なんだなって思うし、感慨深いのです。
制作現場は、絵コンテ、演出、レイアウト、原画、動画、色指定、仕上げ、背景、撮影、編集、ダビング、ビデオ編集、納品と終わりました。
制作デスクは、「舞-HiME」から組んだ初めましての制作さんです。
わたしは、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」から「舞-HiME」までほぼ制作デスクが変わっています。
デスクが変わると、その彼らの付き合いでクリエイターも作り方も変わるのです。
当然、わたしもデスクもお互いのことを知りませんので、人となりを知るのにある程度の時間もかかりますし、試行錯誤を繰り返し正直終わる頃になって、やっとしっくりと来ることもあるです。ですから、総務には、デスクは変えないで欲しいと何度お願いしたのですが、毎作変わっていたので、色々辛かったりもします。
そしてついに、「舞-HiME」から「宇宙をかける少女」まで同じデスクが続いたのは、総務の配慮だったのかも、知れません。
ふと、思い出すことがあります。
当時、テレビ東京さんに完パケのビデオ納品に、わたしが持って行くことが多いのですが、局のプロデューサーさんに白箱(VHSテープ)を渡すのですが「見るのが楽しみなんだ」と言って受け取ってくれるのです。
白箱は、パカチェックや諸々のチェックのために見てもらうのですが、楽しみと言って待ってくれるプロデューサーさんって、初めてだったので、何だか嬉しかったのです。局のプロデューサーは、納品関係はポーカーフェイスで受け取ることが多い印象だったので、ニコニコ笑顔だったのを覚えているのです。
でも、「舞-HiME」が終わると退職したのでとても残念でした。
実は、「舞-乙HiME」の担当になったプロデューサーも、リアクションが大きく、楽しみに待ってくれていたので、ふたりも似た感じの方が続くとは不思議だなって思っておりました。また「舞-乙HiME」のときのプロデューサーとは、いまも情報交換などやっているので、面白い縁だなって思っております。
2025年3月末、ついに「舞-HiME」の最終回第26話放送が終わりを迎えました。
実際、放送が始まると、あっという間に最終回はやってきます。
色々試したいことをやりました。
DVDの売上げも、CDアルバム、コミック、各グッズともに、好調であると言う報告が耳に入ってきます。
ホッと胸をなでおろしている自分がいます。
でも、ここからが肝心なのです。
放送が終わると言うことで、視聴者、お客さまの心が離れてしまう恐れがあるからです。そうなると、発売中のDVDの売れ行きが止まるかも知れません。
CDも単行本も同様に売れなくなる可能性があります。
そこで、バンダイビジュアルの国崎プロデューサーと考えて行動したことが、「舞-HiME」シリーズ第2弾としての「舞-乙HiME」の発表なのです。
早めの発表をしました。
シリーズ第2弾があると言う発表をすることで、「舞-HiME」は終わっていないと言うことになります。
その昔、良くやったのは、同タイトルの映画化の発表でした。
次は、シリーズ第2弾の発表です。これで、作品自体が終わっていないと言うアプローチになりますので、視聴者、お客さまは「続きがあるなら、ちょっとだけ待ってやるか」と思ったり、「とりあえず見てやるか」だったり、「いつやるんだよ!」だったり、です。
ただ、この放送枠のこと、放送スケジュールについてはテレビ局の決められたルールに則って動くしかないのです。
放送局によっては、2~3ヶ月前にならないと発表出来なかったするのです。ですから、半年前は、「アニメ化決定」としか明記出来ません。実は、放送局名も出せないのです。
昔は、テレビなのか、映画なのか、OVAなのかの発表も出来ませんでした。
ですので、2004年春に発表した「舞-HiME」も、最初は「アニメ化決定」、そして、ある程度の時期が経ったら「テレビアニメ化決定」、「テレビ東京にて放送」と言うような変化があったと思います。
「舞-乙HiME」に至っては、どうしたってテレビ東京さんで放送でしょう?と分かっていても、2004年春の告知では「アニメ化決定」としか書いていなかったと思います。
結局、テレビ局も時間枠として完全決定するのは、放送間近にならないと決まらないので、仕方がないのです。さすがに、決まる前に発表してから事情があって放送日が先延ばしになったり、もしかすると放送自体なくなる可能性だってあるのですから、やはり正式に決まってからの発表が望ましいです。
など、色々あって、現場は動いておりました。
実は、放送も半年しか空いていなかったため、制作体制も「舞-HiME」から続行でしたので、皆さん休みなしで作業をすることになりました。
今考えると、無謀なことをやったと反省しています。
あの頃は、「GEAR戦士電童」は38話数。「激闘!クラッシュギアターボ」は68話数。
「出撃!マシンロボレスキュー」は53話数制作、放送していたのです。ジャンルは子供向けで「舞-HiME」とは違うのですが、それでも、勇者シリーズも毎年46~48話数を制作していたし、あの時代は、長く作り続けることが普通だったのです。
今なら、1年後の放送にするなど、色々考えるとは思うのですが、「舞-HiME」から「舞-乙HiME」と、間髪入れずに制作しました。スタッフの皆さん、無理をさせてしまって、本当に申し訳なかったと思います。
「舞-HiME」最終回を迎えて、打ち上げがセッティングされました。
多分4月だったと思います。
100名を超えるスタッフが参加となるので、新宿のお店を貸切となりました。
いま、思うと、どのお店でやったのか?忘れています。
でも、けっこう広い場所だった記憶があります。
現場スタッフだけでなく、外部の作画さん、背景会社、仕上げ会社、撮影さん等々、バンダイビジュアル、ランティス、秋田書店、マーベラス、テレビ東京、音響会社、声優さんたちが集まりました。
「ヒット」しているニュアンスが漂っているタイミングでした。
今でも思い出すのは、バンダイビジュアル国崎プロデューサーと轟宣伝プロデューサー、ランティス井上社長、局のプロデューサー、スポンサーの方々もみんなハッピーな笑顔だったのです。
わたしもステージに上って挨拶をしたのですが、何を話したのか?覚えていません。かなり舞い上がっていたことを覚えています。
特に、国崎さんがいつも以上にホットに見えたのがとても印象的でした。いつも国崎さんは冷静です。そんな国崎さんが本当ににっこにこなのです。そんな姿を見れたわたしもとても幸せでした。
外部スタッフのクリエイターさんたちからも、笑顔で声をかけて頂きました。
関係者に「舞-HiMEは面白かった」と、参加して面白かった、テレビを見て面白かったと二重の意味合いで言われたのです。
もう、わたしとしては、感動しかないです。
何度も最終回を経験していますが、終わり良ければ全て良し、なのです。
終わりのタイミングで、ニコニコ笑顔で終わるのがベストです。
ちょうど、この第36話ブログ原稿の公開が、2024年ラストになります。
5月から始めた「ふるさとPアニメ道」のブログでしたが、株式会社いいじゃん鈴木社長のお力添えもあり、何とか毎週書いてこれました。
そして、読んでくださるお客さまがいることで、書くことが出来ました。
「ありがとうございます」。
読んで下さっている皆々さまに良い年が訪れることをお祈りします。
🔻ふるさとP写真録:今週の一枚
追伸:
YOUTUBE「ふるさとPアニメ道」もスタートしましたので、ぜひぜひチャンネル登録の上、ご覧くださいませ。
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古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。
1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。
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