記事: 第118回:『アウトロースター、浪漫溢れる宇宙翔ぶ腕付きグラップラーシップの殴りあい!!』
第118回:『アウトロースター、浪漫溢れる宇宙翔ぶ腕付きグラップラーシップの殴りあい!!』
メカデザイナー河森正治さんが描いたメカデザイン「グラップラーシップ、アウトロースター号」、主人公ジーンが乗ることになる宇宙船。
高機動型の2本腕の生えた宇宙船。
その腕で殴り合うのだ!!
わたしは、ナンセンスでワンダーなSFアニメ「星方武俠アウトロースター」は、超浪漫溢れる物語だと思うのです!!
浪漫溢れるエーテル宇宙をアウトロースター号と敵グラップラーシップがガッツンゴッツン泥臭く殴り合う奇天烈な発想!わたしは超イケてると思ったものでした。
「伊東さん、ナイスアイデア素晴らしい!!」と。
「河森さん、腕付きのかっこいい宇宙船をありがとう!!」なのです。
そんな、イメージボードを見たのです。
ギャグにならず、リアリティもありかっこいいのです。
さすが、「超時空要塞マクロス」でジェット機を人型ロボットに変形させた、いわゆるバルキリーのメカデザイナーの河森さんです。
わたしは、すでに「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」において、各マシンを描き直してもらうので河森さんと打ち合わせ済でした。
ですから、お会いしても、「サイバーではありがとうございます」的な挨拶をかわします。
実は、「星方武俠アウトロースター(今後アウトロースターと表記)」のメインスタッフに知り合いと言うか前に一緒に仕事をやった方がほぼ誰もいないのです。
そのなかでも、河森さんひとりだけが知っている人でした。
少しホッとした記憶があります。
しかし、この宇宙空間で殴り合う船のアイデアは面白いです。
伊東(岳彦)さんのアイデアなのでしょうね。
実は、わたしこの辺り聞くのを忘れました。
素敵な宇宙船に付いているのは、腕です。そうなのです、腕のある宇宙船が殴り合うのです。
だから「グラップラーシップ」です。
宇宙空間で、天地関係なく自由自在にグラップラーシップが飛び回り、殴り合うのが面白かったです。画面がぐるぐる回ります。
第1話から、グラップラーシップ戦があります。
それらのシーンは、アクションの上手なアニメーターさんに担当して描いてもらっています。
実は、わたしがいつもお願いしているロボットバトルの原画が得意なアニメーターさんは別作品をやっています。
さらに「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」にもメカバトルの得意なアニメーターさんがいますが、その方々を引っ張ってくるわけにもいきません。
だから、実はここでも「初めまして」のアニメーターさんが参加してくださいました。
制作デスク補が連れてきてくれたと思います。
とても、助かりました。
サンライズでロボットやモビルスーツ戦を描いているアニメーターさんではなく、別な制作会社でアクション系のアニメの作画を担当していたのです。
だから、いつものサンライズっぽいアクションになっていなかったと思います。
わたしは、このアクションシーンが好きでした。
あと、間違っていなければ「アウトロースター号」のモチーフは「X-15」だったと思います。
軽く説明します。
「X-15」は、アメリカで開発された高高度極超音速実験機です。ノースアメリカン社によって3機が製作。ジェットエンジンではなくロケットエンジンにより高高度まで上昇出来る能力を持つロケットプレーンであり、この機体で得られた極超音速下での空力特性や熱力学的影響などの研究結果は、スペースシャトルの開発にまで貢献したとのことです。
色々、宇宙にまつわることがベースになっていたりします。
また、「エーテル宇宙」と言う設定も盛り込まれていました。
さて、「エーテル宇宙論」とは何でしょうか?
これは、19世紀末まで主流だった光を伝える媒質「エーテル」が宇宙を満たしているとする仮説です。しかし、アインシュタインの特殊相対性理論や「マイケルソン・モーリーの実験」により、媒質としてのエーテルの存在は完全に否定されています。
SFのなかでは、このエーテル宇宙を使った物語があるようです。
そのなかのひとつの物語が「星方武俠アウトロースター」なのです。
実は、わたしはこのエーテル宇宙と言うネタは知らなかったので、当時少しだけ勉強した記憶があります。
だからなのか、「星方武俠アウトロースター」では、宇宙船にスクリューがあってそのスクリューが回り始めると、水流が生まれるのです。
放出流、あるいは航走波が何もない宇宙に見えるのです。
これは、面白い表現だと思いました。
漫画家の松本零士さんの描いた「宇宙海賊キャプテンハーロック」では宇宙のことを「海」と言います。確かに宇宙「船」だし、宇宙を海と言い換えるのは言い得て妙だと思います。
話しが逸れましたが、当時のわたしは、これら踏まえて「浪漫溢れる設定」だと思った次第です。
わたしのなかのSFは科学、未来、過去、タイムトラベルなどと言ったことが主だったのでエーテル宇宙のことは知らなかったのです。
この仕事で知りました。
ちなみに、わたしは日本アニメーション時代に超能力アニメ「超人ロック」の映画を作りましたし。また、スタジオジブリ時代に「天空の城ラピュタ」を作りました。これらも、SFです。
「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」だって、SFかもと思うとSFです。
SFの幅の広さにわたしは驚くわけです。
空想科学設定(SF考証)は、ライターも兼任の 堺(三保)さんに参加してもらいました。
堺さんには、「星方武俠アウトロースター」の小説も書いてもらいました。
テレビ本編のストーリーではなく、小説用のオリジナル展開の内容です。
タイトルは、「星方武俠アウトロースター 雲海のエルドラド」(集英社スーパーダッシュ文庫)から発売しました。堺さんと色々打ち合わせをした記憶があるのですが、どんな話をしたのか?は忘れています。でも、このことで、以降の「GEAR戦士電童」「舞-HiME」「舞-乙HiME」などでたくさん小説展開をしましたが、その考え方のスタートになるのが、この小説でした。
ノベライズ小説として、オリジナルストーリー作りの勉強になりました。
堺さんとの会話は楽しかった記憶が薄っすらあります。
書き下ろしの小説化をやりましょう、と言ってくれた集英社スーパーダッシュの編集さんにも感謝しています。
SFと言えば、エンディング主題歌に合わせたイラストは、田中光さんに描いてもらいました。
田中(光)さんは、SF業界ではSFのイラストレーターとして有名なのです。
田中さんが描いたイラストは、宇宙と少女だが、その少女が「星方武俠アウトロースター」のヒロインのメルフィナか?と思ったのですが、実は、メルフィナを演じていた声優の川澄(綾子)さんに似ているのが不思議でした。
田中さんが、川澄さんの写真をゲットしてイラストを描いているとは思えないのです。いまのように、インターネットで調べると写真がすぐに出てくる時代ではないのですから、とてもワンダーです。
田中さんのイラストのアンニュイな少女は、新居(昭乃)さんの歌うエンディング主題歌に寄り添う素晴らしいものでした。
田中さんに描いてもらった理由のひとつは、エンディングが素敵なSFイラストで終われると後味が良いなと思ったのです。
次回は、「宇宙の龍脈」の設定のことを少し書きます。
これも、とても面白い設定だと思ったのです。本当に、斬新な設定のアニメなのです。
わたしとしては当時SFアニメを観たことがないお客さんに、理屈抜きにかっこいいアニメを是非観てもらいたいなと思って制作しました。でも、いまも観てもらいたいと思うのです。
1961年5月3日生まれ。青森県出身。
1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力。2024年5月から『ふるさとPアニメ道』ブログ&YouTube動画配信中。2026年3月末からコミックノーラにて「貴姫さまの憂鬱~あやかし探偵事件簿」連載中。



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