第38話:『子供向けアニメGEAR戦士電童が始まりました!』
新世紀を迎えた2000年10月4日木曜日夕方「GEAR戦士電童」の第1話放送が始まりました!!
な、なんと今年2025年秋「GEAR戦士電童」は25周年を迎えます。
と言うことで、「GEAR戦士電童」のことを思い出して書きたいと思います。
わたしは、サンライズに入社し「ミスター味っ子」のあと「勇者エクスカイザー」から、勇者シリーズを6作6年担当しました。7作目「勇者司令ダグオン」は、3話くらいまでの付き合いでした。トータルで280本近くの話数の経験をしました。
と言うことで、わたしのサンライズのアニメ制作歴は勇者シリーズで出来ています。
つまり、アニメ制作に対する考え方、企画、キャラクターデザイン、ロボットデザイン、シナリオから絵コンテ、作画、動画、仕上げ、納品までノウハウが満載なのです。
勇者シリーズのアニメは、ターゲット子供向けのオリジナルアニメ、ジャンルとして変形合体ロボットアニメです。
わたしは、制作デスクとして勇者シリーズ第2弾「太陽の勇者ファイバード」から、企画段階から吉井(孝幸)プロデューサーの脇で考え方、進め方を見たのです。
わたしがプロデューサーになったら、担当したいと願っていたのが、子供向けのロボットアニメです。
そのジャンルのアニメの企画制作の仕事がついにやってきたのです。
多分1999年春頃に、吉井社長に呼び出されて、バンダイが新しい男児玩具を開発するので、そのアニメ化をやれ!と言う流れだったと思います。
バンダイ側が描いたイメージイラストをもらって、そこから、企画ネタを考えました。
最初に考えた物語は、まったく違うものでした。
並行して、スタッフワークとして、監督、ライター、キャラクターデザイナーをどうするか?を考えました。ロボットデザインは、バンダイ側のオーダーで、阿久津(潤一)さんが描くことになりました。
さて、一番重要なスタッフは監督です。
わたしとしては、最有力候補は福田(己津央)監督です。
でも当時は、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN」をやっていましたので、並行して進めることになります。最終巻の第5巻の発売が2000年3月17日なので、1999年はガッチャンコなのです。
福田さんとは、何度か会話を重ねて、企画の意図や状況を伝えました。
そして、やることになりました。正直、スケジュールの不安はあります。でも、子供に向けた良いものを作りたいと考えるわたしは、福田さんを監督に迎えたかったのです。
そして、シリーズ構成の候補出し、キャラクターデザイナーの候補出し、諸々も考えました。
まず、シリーズ構成については、福田監督が出したライター氏はスケジュールの都合でNGでした。わたしとしては、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA・SIN」のシナリオを書いた両澤(千晶)さんで行きたいと話して、打診しました。
OVAだった「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA・SIN」の経験はあってもテレビシリーズは初めてなので不安はあるとのこと。
子供向けアニメは、1話完結が多く、コメディ感が強めとなりますので色々な方向のライター諸氏をセッティングするべきだろうと考えました。
そこで、各話ライターとしてバラエティ豊かなメンバーを揃えることにしました。
SFが得意、コメディが得意、女性ライターで実写が得意など、様々な方々です。
キャラクターデザインは、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA・SIN」を経験し、また勇者シリーズで作画監督になった久行(宏和)さんを起用したいと思いました。しかし、久行さんも福田監督同様に「新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN」の仕事がありますので、並行してデザインがやれるのか?となりました。
久行さんと、相談し、やる方向になりました。
いま、考えると無謀感はありますが、無茶ぶりをしました。でも、そんな時代だったのです。パッツンパッツンに仕事を入れるのが普通でした。
手を空けさせないと言うか、です。25年前、みんなが若かったのもありますね。
わたしは、いまでも思い出すのは、福田監督が子供たちに見せるアニメは、例えば、7歳の小学1年生の子供が大人になる頃の将来、未来に明るい展望があるような世界であり、大人になりたいと思わせるような世界を見せたい!と言いました。
どんよりと暗く、終末感のある将来、未来は見せたくないと話したのです。
改めて、この1999年はどんな年だったのか?です。
1999年と言うと、「ノストラダムスの大予言」において、世紀末は世界が終わると言われた年でした。
わたしが子供の頃「ノストラダムスの大予言」の本がめちゃくちゃ流行っていたのです。
五島勉と言う方が書いた同書籍が大ヒットしたのが、1973年秋です。
いま思い出しても、1973年以降の自分が中学・高校時代、1999年に地球は滅ぶと信じていました。
この日本もきちんと滅亡してしまうと考えていたのです。
青森県の田舎にいたわたしは、都会のニュース、当時は光化学スモッグ、工場の化学物質の汚水排水、自動車の排気ガスなどを見て、そうなんだって思っていました。
実際、高校を終えて東京に来て見上げた空の色がグレーだったことを思い出します。
いま、東京の空って、あの頃より青いです。色々環境が変わっているのを感じます。
20歳を迎えて大人に仲間入りしてからも、1999年に何かが起きると信じていたのです。
わたしなど40歳になれないと思っていたくらいです。
そして、ついに「1999年」がやって来たのです。
来たるべき「1999年」は、何も起きませんでした。
やれやれ、ノストラダムスさんの予言は外れてしまいました。
これって、本来嬉しいはずなのですが、でもホッとするより、少しだけ悲しいのがお笑いでした。
1999年、地球は滅亡しませんでした。
日本が沈没したり、なくなることもありませんでした。
と、なると、きちんと2000年以降も元気に生きないといけません。
明るい未来のことを考えないといけません。
特に、子供たちが生きる未来は良い未来にするのが、大人の役目だと思うのです。
わたしは、アニメを通じて子供たちにメッセージを送ることができます。
暗いメッセージは嫌です。
よって、福田監督の考え方に共感しました。
見てくれる子供たちに、明るい将来、未来を提供したい。
ロボットアニメは、どうしても戦いの物語になりがちです。
「ロボット」=「兵器」の面が強いからです。
「GEAR戦士電童」も、はやり、敵との戦いが中心になりました。
さらに、主人公たち子供をロボットに乗せて戦いに出すのですから、より、大人がサポートしないといけません。
そこで、ベガさんがバイクで颯爽と登場しサポートします。
仮面のベガさんは、北斗くんのお母さんです。
自分の子供を戦場に送り出さないといけない訳ですし、となりの家の銀河も電童に乗ってしまったので、母親としては、気が気ではなくなります。
母親の愛情を感じるアニメになってるのは、シリーズ構成の両澤さんが、小学生の子供を持つお母さんだったのも関係あるのでは?と当時思っていました。
わたしは、世の中的に「母は強し」なので、問題ないと思ったりします。
また、敵が暴れて破壊された街の復興も早かったと思います。
ここも、福田監督の想いが反映しているのです。
2000年3月に開催した「2000東京おもちゃショー」のバンダイブースで、新しい玩具&テレビシリーズ「GEAR戦士電童」のPVが発表することになったので、バタバタと作った記憶があります。
ちょうど、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN」の最終巻の発売とぶつかっているので、福田監督のチェックや久行さんの作監をたくさん入れることが出来ず、他の作画の方々と一緒に作ったのです。あのときは、本当にありがとうございました。
さらに、まだ電童専用のBGMがありませんので、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA・SIN」のなかから使用しで、入れ込みました。
作曲家佐橋(俊彦)さんつながりです。
ナレーションもバンダイの社員で都度ナレーションをやっている方に出張ってもらい、バンダイのなかにあるスタジオで収録しPVに入れ込み自分たちで作ったのです。
立ち会った福田監督が「やれやれ」と言った顔をしていた気がします。
のちに、DVDに収録したときは、音響はやり直しているので、おもちゃショーでしか見れない、聞けない、レアなものとなっています。もし、あの時、東京ビックサイトで観た方がおりましたら、超々レアな手作り感満載な映像だったのです。
と、言うことで、次回も「GEAR戦士電童」のことを書きますので、応援のほどお願いします。
🔻ふるさとP写真録:今週の一枚
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古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。
1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。
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