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記事: 第41話:『GEAR戦士電童のタイトルがどうやって付いたのか?その裏側を書きます!』

第41話:『GEAR戦士電童のタイトルがどうやって付いたのか?その裏側を書きます!』

「メインタイトル」を決めることは、とても大変であり、重要です。

会議してもすぐには決まりません。

昔、勇者シリーズの設定制作、制作デスクのときに、タイトル案をたくさん考えて提出した記憶があります。他の方の案も含めて、3050案くらいになることは良くあります。

残念なことに、わたしの案は起用されませんでした……。

 

GEAR戦士電童」の前に、サンライズでは諸先輩から伝わるまことしやかな噂があります。

メインタイトルのヒットの法則です。

 

・濁音がある。

・名称のどこかに「ン」が入っている。

・ア行の母音で始まる。

 

例として、濁音があるタイトルは、「ザンボット3」「ダイターン3」「ガンダム」「イデオン」「ボトムズ」「ザブングル」「ダンバイン」「エルガイム」「ガリアン」「バイファム」「エクスカイザー」「サイバーフォーミュラ」「ライジンオー」「ビックオー」等々、まだまだあります。

 

「ン」が入っているタイトルは、「ガンダム」「イデオン」「ザブングル」「ダ・ガーン」「マイトガイン」「ライジンオー」等々。

 

ア行の母音で始まるタイトルは、「ガンダム」「ダンバイン」「ガリアン」「バイファム」「サイバーフォーミュラ」「ダ・ガーン」「マイトガイン」「アイアンリーガー」「サムライトルーパー」「ワタル」「ライジンオー」「舞-HiME」等々。

 

こうやって書いてみると、重複しているタイトル(ロボットの名称等)が多いことがわかります。いかに、この法則に則って作られているのか?です。

濁音は強さを出し、ア行の母音から始まるなどは、声にした時に、音が耳に届きやすいなどあるかなと思います。テレビ放送のため、文字そのものも大切ですが、テレビのスピーカーから聞こえる音も重要です。「ン」は、何でしょう?音の収まりが良いから?

主人公が、ロボットの名前を呼ぶ、それは視聴者の子供たちの耳に届くと言う意味にもなります。

 

小説や漫画は、印刷されて本屋に並ぶことが多いので、表紙に載るメインタイトルの文字のインパクトや文字自体の綺麗さ、格好良さなどが重視されると思います。

と言うように、使用目的によって、考え方が変わるのです。

 

改めて、「GEAR戦士電童」のメインタイトル決めのことを思い出してみます。

バンダイさんから届いた企画用のイメージボードにすでに「電童(仮)」と書いていたような気がします。

間違っていたら、ごめんなさい。

 

わたしが覚えているのは、肩タイトルについては打ち合わせを何度かやったことです。

肩タイトルとは「GEAR戦士」の部分のことです。

 

子供向けアニメ、玩具連動アニメは、肩タイトルがあって、商品名の名称が続きます。

例えば「機動戦士ガンダム」の「機動戦士」です。「勇者エクスカイザー」の「勇者」も肩タイトルとなります。

 

ですが、「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」の場合、アプローチが違います。肩タイトル「新GPX(フューチャーグランプリ)」はありますが、名称の付け方が違うのです。

主人公ロボットではなく、主人公名、世界観だったりロボット全体を表す名称となります。

例えば、「魔神英雄伝ワタル」、「装甲騎兵ボトムズ」、「疾風!アイアンリーガー」などがこれに当たります。いわゆる主人公ロボットの名称ではないですね。

 

バンダイの担当氏、福田監督、わたしで色々話し合ったと思います。

ただし、肩タイトルは玩具にそのまま使用されるので、バンダイ側が主になって進めていたと思います。

 

各店のおもちゃ売り場に並んだときに、子供たちの目に止まりやすい名称とその文字、意味、音などを考えます。そして、他の玩具とはっきりくっきり違う名称でないと駄目です。

でも、新しい玩具はどんどん発売されますので、みんなが知っているような名称は使われて行きます。

となると、どうしても造語になっていきます。造語は、初めて聞く、見る、知るものになりがちなので、諸々の訴求が難しかったりします。

 

あと子供は、パパ(大人)が使うものを使いたいと言う気持ちがあります。

少しだけ背伸びしたいと言う欲求も大切にしたいのです。だから、大人が使うリアルな物からの玩具コンセプトとなることも多いです。

 

このような考えのなか、用意した玩具に合っている、アニメ作品の内容に合っているタイトルをみつけないと駄目なのです。

 

肩タイトルにある、「GEAR(ギア)」は道具、歯車です。「戦士」は見た通りです。

この「GEAR」は、放送局が変わりますが、「激闘!クラッシュギアターボ」につながります。

いわゆる、「GEARシリーズ」となるのです。

子供たちが手に取って欲しい「GEAR(ギア)」。

新しい道具になって欲しいと言う願いとなっています。

 

また、ロボットなので身体の中に歯車が入っているよね、です。

と言うこともあって、「激闘!クラッシュギアターボ」は、マシン(ギア)のなかにある歯車がキーポイントになっている玩具となります。

 

名称「電童」は、漢字の意味の通りで、「電気の童(わらべ)」なのですが、これは割合企画当初から企画メモに書いてあった気がします。ちなみに、「わらべ」とは子供のことです。

でも見た目で言うと、「童(わらべ)」ではないですよね。

どちらかと言うと筋肉質なおっさんです。

 

そして、「電童」は、濁音と「ン」は入っていますが、始まりは「デ」なので、エ行になりますね、ここは残念です。

 

あと、「電童」の読み方をどうするか?について、何度も打ち合わせをやった気がします。

いわゆる、「デンドウ」なのか「デンドー」なのか?です。

最終的に「デンドー」になりました。なぜ、こちらになったのか?の理由を忘れています。なんで、こうなったのかしら?

「デンドウ」だとそれこそ「童子」なので、日本ぽく感じる。

「デンドー」だとグローバルに感じるから?でしょうか。

また、「凰牙(オーガ)」については、なぜか「新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN」のアオイのマシン名「凰呀(オーガ)」と同じになりました。

しかし、「ガ」の漢字は少し違いますね。あと、「オウガ」なのか「オーガ」なのか?については、「電童(デンドー)」の読み方に準じています。

「凰牙」について誰の命名だったのか?やっぱり福田監督だったかな?

それとも、バンダイ側からの提案だったのか?これも、また忘れています。

25年も経つと、細かい部分の記憶が消失しています。とほほ。

 

メインタイトルの他、主人公ロボットの名前、ライバルロボの名前について。

主人公たちキャラクターの名前の付け方も、ここまで書いたことと近い部分もあります。

補足すると、主人公ロボットの場合は、何をやるロボットなのか?何がモチーフになっているのか?

強さを押し出すのか?

スピーディーさを押し出すのか?

変型を押し出すのか?

見た目の格好良さを押し出すのか?

 

いわゆる名前は色々なメッセージを発信しているのです。

 

主人公たちキャラクターも同様です。

キャラクターの動機とゴールに向けて何をやるのか?を具体的に書くことが多いです。

ハヤトの命名、由来は知らないのですが、わたしが勝手に思うのは、「速(早)い人」、「隼の人」などのようにスピードを想像させます。未来のレースアニメの主人公なのでハマっている気がしつつも、単なる思いつきで決まったかも知れないので、あとで福田監督に聞いてみたいです。ちなみに、「ハヤト」はア行から始まっていますね。

 

さて、「GEAR戦士電童」のキャラクター名にあるのは?

草薙北斗は、北斗七星からもらっています。どうして、北斗と付けたのか?実は、忘れています。天体、星から付けようと決めたのは覚えているのですが、北斗七星を選んだ理由を覚えていないのです。

出雲銀河は、銀河系からもらっています。銀河のように大きく。

ベガ(織絵)さんは、こと座から、七夕の織姫からもらっています。声優さんが三石琴乃さんだからってことはないです。

アルテアさんはわし座のアルタイルからで、七夕の彦星からもらっていますが、ベガとは兄弟であって恋人通しではありませんが……。

スバルくんのすばるは、プレアデス星団の和名です。

と、主だったキャラクターは、宇宙、星などをモチーフにしています。

視聴者である子供たちに、宇宙について魅力的世界なんだと言うことを伝えたいと思っていました。

 

また敵側で月に降り立った螺旋城は、DNAの螺旋、宇宙(銀河)の螺旋など踏まえて、宇宙の真理のような考えから付けていますが、実際は、月にネジを回して差し込むと言うことになっていますね。

 

ガルファ皇帝は、「アルファ」をモチーフにして悪そうな音として「ガルファ」にしました。また「アルファ」とは「物事の始まり」の意味ですので、この電童と言う物語の始まりに起因している存在なのです。

 

また、草薙は日本神話の草薙の剣から。

出雲は出雲地方からで、こちらも日本神話と親和性が高い名称です。

これらも、新しい神話が始まる的な意味合いもあります。

 

キャラクター名、ロボット名、メインタイトルと、色々なメッセージが入っています。

コンセプトであったり、テーマが入っているので、とても重要です。

と言うことで、オリジナルアニメを見る場合、監督たちがキャラクター名などに込めた想いを読み取るのも面白いことだと思っています。

 

是非、表読み、裏読み、直感など駆使して、読み取って最終回まで答え合わせを楽しんでもらえると嬉しいです。

🔻ふるさとP写真録:今週の一枚 

 

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古里尚丈(ふるさとなおたけ)

196153日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

20112月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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