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記事: 第42話:『GEAR戦士電童、音楽・主題歌・挿入歌のことを思い出します』

第42話:『GEAR戦士電童、音楽・主題歌・挿入歌のことを思い出します』

シリーズ構成両澤(千晶)さんを始め、ライター陣がそれぞれのキャラクターの性格、行動力など、どんどん肉付けして各話のシナリオも上がっていきます。

メカ作画監督の重田(智)さんの描く電童のアクションポーズなども上がってきました。

そして、久行さんが描くキャラクターデザインも、ゲストキャラや表情集もそろってきました。

絵コンテも出来上がり、作画に入っていきました。

 

次に決めるのは、音楽をどうするか?

作曲家を誰にするのか?となります。

 

福田監督と相談しました。

 

そこで、音楽は「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGASIN」で参加した作曲家の佐橋(俊彦)さんで行きたいと提案を受けました。

 

わたしは、すでに「星方天使エンジェルリンクス」も佐橋さんに音楽をお願いしていましたので、4度目の付き合いとなります。

 

福田監督は、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGASIN」で一緒に組んだ佐橋さんが担当すると、お互いが音楽世界を知っているが故にプランニングが非常にやりやすくなるのでやってもらいたいと言うことです。

 

世の中の各作品を観ても、監督と作曲家は何度も組んで仕事をやることは多いです。

例えば、宮崎駿監督と久石譲さん。山崎貴監督と佐藤直紀さん。ジョージ・ルーカス監督&スティーブン・スピルバーグ監督とジョン・ウイリアムズさん。

やはり、互いのことを良く知っていることのメリットが大きいのでしょう。

 

そして、福田監督は、「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」において佐橋さんと改めて組んでいるのは、わたしにとっては当然の流れに感じておりました。

 

また、「GEAR戦士電童」の音楽メーカーは、ビクターエンタテインメントさんです。さらに音楽プロデューサーは、野崎(圭一)プロデューサーに決まりました。

わたしは、すでに「星方武俠アウトロースター」で一緒にやっている音楽プロデューサーなのです。

そして、この野崎プロデューサーは、「機動戦士ガンダムSEED」の音楽プロデューサーでもあるので、福田監督と組んでいく流れになるのです。

 

都度わたしは、アニメに付ける音楽ってなんなのか?を良く考えます。

意味や理由ですね。

アニメ(絵、動画)を「音楽の持つ力」で魅力を倍増させることが出来ると思うのです。

音楽がつくことで、よりキャラクターの感情がわかりやすくなったり、そのシーンの楽しさや恐さが明確になったりすると思うのです。視聴者の子供たちに、そのシーンの意味合いがより伝わりやすくなると思っています。

 

色が着いて絵が動く、セリフ(声)・効果音も入り、どんどん出来上がって行くのですが、そこに音楽が加わることで、目から入る情報とともに耳からも情報が入り、脳をより刺激し、視聴者の感情をより動かすことになるのだと思うのです。

 

あと、佐橋さんの曲を「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」から聞いていて、思うことがあります。佐橋さんの作る音楽と音色は、明るく陽のイメージなのです。

きらびやかで、気品があるのです。

前の原稿でも書いたように、福田監督のメッセージとして、子供たちには明るい未来が来る、でした。わたしは、久行さんが描くキャラクターにも明るく陽のイメージを感じるのです。

 

世紀末も終わり新時代に入った200010月放送ですので、明るい未来を感じさせるような音楽を用意したいと思っていましたので、尚更に佐橋さんの音楽は必須に感じました。

 

と、考えましたので福田監督が佐橋さんとやりたいと言ったことに反対する理由はありません。

 

「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGASIN」は、それぞれの絵コンテに合わせて曲を書いてもらいましたが、「GEAR戦士電童」は、絵コンテが用意できる話数までとして、中盤以降後半はシナリオから曲を書いてもらうことになります。

 

「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」で一緒に仕事をした藤野(貞義)音響監督と福田監督とわたし、そして、野崎(圭一)音楽プロデューサーが集まり打ち合わせを行います。

 

そして、藤野さんにBGMメニュー(どんな曲が必要か?の説明書)を書いてもらうことになります。BGMメニューが書き上がると、福田監督に見てもらって、佐橋さんと打ち合わせを行います。

 

打ち合わせメンバーのスケジュール調整をして会議室に集まります。

音響監督も、音楽プロデューサーも、福田監督も、わたしも、すでに何度も佐橋さんと仕事をしていますので、「やあやあ」みたいな軽い挨拶で打ち合わせが始まるのです。

 

福田監督から物語のあらすじ、音楽の使い方などを話し伝えます。

佐橋さんは、福田監督の言葉から必要な音楽のコンセプトになる種(要素)を見つけ出します。

それは、物語からなのか、キャラクターからなのか、ロボットからなのか?あるいは、福田監督が「例えば○○○みたいな」と話したことからなのか?

この○○○が、映画などのタイトルだったり、歌手名だったり、ジャズやクラシック名だったりします。

佐橋さんは、ニコニコしながら、質問したり、例え話をしたり、曲を書くために必要な種(要素)を拾い集めて行きます。

 

藤野さんが書いたBGMメニューを見ながら、例えば「Mナンバー1は、地球に落ちてくる電童、そのなかには幼いベガが眠っている」みたいなシーンに流す曲なので、ベガの星の曲として民族調にしたい、女性スキャットを入れたいとか。色々会話しながら進んで行くのです。そうすると、佐橋さんが具体的に示す場合もあるし、ちょっと考えますね、の場合もあります。

 

放送が始まる前、放送後中盤の2回に分けての収録となります。

記憶だと、約30曲×2回で、計60曲くらい作ってもらった気がします。

 

わたしは、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」から、佐橋さんの書いた曲の収録は全て参加していますので、「GEAR戦士電童」の収録も参加しました。

 

演奏家さんたちの奏でる素晴らしい演奏を聞いて、トラックダウンも参加しました。

聴きながら、絵コンテのことを思い出して、この曲はどこに使えるかな?あそこかな?と考えます。

合わせて、サントラアルバムとして、CDをいつ発売するのか?どんな表紙にするのか?なかのライナー・ノートはどうするか?なども考えます。

 

そして、福田監督に出来上がった音楽を届けるのが楽しみでした。

 

 

オープニング主題歌「W-Infinity」のデモ曲が上がってきましたので、選びました。

タイトルからのメッセージは、銀河と北斗のふたりが力を合わせると無限大の力を発すると言う意味合いになりますので、オープニング主題歌は、三重野瞳さんと影山ヒロノブさんのふたりで歌っています。

仮歌ができると、そこから福田さんが絵コンテ作業に入ります。

 

エンディング主題歌「COUNT DOWN」は、イントロが本編に食い込むパターンになります。

「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」でずっとやってきた作法です。

このイントロが本編に食い込むパターンは、わたしも、以降「舞-HiME」などでもやりました。

 

カップリング曲になるデモ「Over the Rainbow」のメロディがとてもきれいでドラマチックなのです。

少し大人っぽい曲ではありましたが、本編に挿入歌として使いたいので、福田監督に相談して、4話、10話、24話に使いました。バトルシーンに流すとハマる不思議な歌だなって思いました。

 

これらデモは、Little Voiceさんが担当しています。

この原稿を書くために調べてわかったのですが、作詞・作曲・編曲・歌とひとりの方がやっていました。あと、わたしの生まれた青森県八戸市出身なので、親近感が湧きます。いまなら、ググることが出来ますが、2000年はそこまでインターネットが普及していませんでしたので、知りませんでした。

当時、知りたかったですね。

 

透明感があって、癒やしボイスでありつつも、強さも感じさせる歌声だと思うのです。

ボーカリストさんには当時会えなかったのです。

可能なら、お会いしたかったなと思います。

 

また、野崎プロデューサーに、本編内に登場する中学生の3人アイドルグループ「C-DRiVE」のことを相談しました。この「C-DRiVE」は、本編中銀河が大ファンで応援しているグループなので、可能なら歌を作りたいと話しましたら、前向きに考えてくれたのです。

そして、歌を作ることになりました。

デモ「HEART DRIVE」、「Brand New Mermaid」の2曲をもらって進めました。

さらに、この歌は、声優さんが歌うのではなくオーディションで3人のボーカリストを選んで歌ってもらおうとなりました。当時、千葉県松戸市にあったバンプレストの小会社であるミューラスのなかにあるミューラスアクターズスクールの生徒たちに参加してもらったと思います。

 

野崎プロデューサーは、「マクロス7」の音楽プロデューサーですので、声バサラ(演技で声をいれる声優が担当)と歌バサラ(歌を歌うボーカル担当)と言った仕掛けをやった方です。

と言うことで、「C-DRiVE」も歌C-DRiVEと声C-DRiVEが生まれました。

ちなみに、歌C-DRiVEのことは、別の回で書きたいと思います。

 

 

来たるべき第1話のアフレコ、ダビングが近づいてきました。

次回は、声優さんのことを書きます。

 

 

🔻ふるさとP写真録:今週の一枚 

 

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古里尚丈(ふるさとなおたけ)

196153日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

20112月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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