第48回:『クロスアンジュ、アニメ制作が始まりました』
キングレコード水樹奈々さん主役とし、ロボットアニメのサンライズとコラボしたオリジナルアニメの企画のオーダーがありました。
そこで、2010年秋に企画案をいくつか提出し、ライター樋口(達人)さんが書いた案が起用されました。
改めて、樋口さんに企画書用に物語、キャラクター、世界観などを詳しく書いてもらうことになります、その理由は企画書用に「絵」の発注をするための文章が必要なのです。
樋口さんが文章を書いている間、わたしは、企画書用にキャラクターデザイン、イメージボード、メカデザインなどを描いてもらうクリエイターを誰にするのか?を考えます。
世界観に合っている方。
ある意味面白いアプローチで絵を描いてくださる方など、自問自答します。
2011年明けて樋口さんから上がった文章を読んで、さらにわたしのなかにイメージの妄想をします。キャラクターデザインについてはデザインオーディションではないのですが、新しいアプローチのデザインが集まると良いなあと考えて数名に発注しようと考えたのです。
メカデザインは、ある意味恒例の阿久津(潤一)さんにお願いしたいと思ったのです。「GEAR戦士電童」から「舞-HiME」「舞-乙HiME」などで味方側、敵側と変化球的デザインを描いてもらっていますが、「クロスアンジュ」についてはオーソドックスな飛行形態から人型に変型するロボットデザインを描いてもらいたいなって思ったのです。
ちなみに、阿久津さん以外にも数名に声をかけて描いてもらっております。
そして、「クロスアンジュ」において、キーポイントになる「竜(ドラゴン)」を描いてもらいたいのは、スタジオぬえの宮武(一貴)さんです。
「舞-HiME」「舞-乙HiME」のときの、チャイルド、オーファン等のデザインを描いていただいたときに、モンスターでありながらもしっかりとキャラクターとして個性豊かなデザインを見て、都度感動していたのです。
そして、イメージボードは、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA・SIN」「GEAR戦士電童」のメカ作監の重田(智)さんです。飛行形態や人型形態のロボットとドラゴンのバトルなどの絵を数点描いてもらうことになります。
樋口さんの文章も何度か打ち合わせをしブラッシュアップしました。
とても良い感じの物語、キャラクタースペック、世界観が出来てきたと感じたので、デザイン発注をしようと思った矢先いまでも思い出すと震えがくる、あの大災害が起きます。
2011年3月11日「東北大震災」。
わたしは、「クロスアンジュ」の企画書を作るための打ち合わせをセッティングしていたのですが、すぐには入れないと判断し少しだけ先延ばしとしました。
少し落ち着いてきた春5月くらいから、色々な方々に発注をしました。
そして、絵が集まってきますので、さらに打ち合わせを重ねて改稿をお願いすることもありうますし、また、別なクリエイターに発注することもあります。
特に、キャラクターデザインは上がった絵を見て、「クロスアンジュ」のキャラとして起用するには、何かが違うと感じるデザインは、クリエイターさんにきちんと理由を話して理解してもらい、今回の企画では恐縮ではありますが起用ならずとしました。
ちなみにメカデザインも同様です。
毎回、新しい企画、新しいデザインを模索するにあたり、デザイナー選びは難航します。
名のある有名な方が良いのか?
無名だけど個性的な絵を描く方が良いのか?
アニメーターに描いてもらうのか?
イラストレーターや漫画家さんに描いてもらうのか?
わたしは、割合無名なデザイナー及び新人デザイナーを選ぶ確率が高いです。
それは、誰も見たことのない絵になるから、です。
でも、知名度がないので、スポンサーの立場からすると嫌がります。スポンサーは、名のある方、知名度が高いとそれだけでファンがいますので、宣伝効果が高いし訴求度がありますので。
でも、すでにどこかで活躍しているデザイナーさんの場合は、その絵に新鮮さがなかったりしますが、プロとしての安定からの安心感はあります。
という感じでいつも悩みます。
ちなみに、「クロスアンジュ」がアニメになったとき、キャラクターデザインコンセプトとして松尾(佑介)さんがおりますが、実際現場でアニメ用の設定を描いているのは小野(早香)さんです。
わたしは、小野さんがショートのPVアニメでキャラクターデザイン、作画監督を担当している作品を観て、名前を知っていました。
良い絵を描くアニメーターさんがいるなあと、思っていました。
このおふたりは、わたしが企画書を作成している段階では、参加していません。
2011年夏くらいに、まずは企画書用に、キャラクター、メカデザイン、イメージボードなど揃いました。
さらに、樋口さんの書いてくださる文章もかなりブラッシュアップされました。
下記、少しだけ当時の企画書のとあるページの文面を載せてみたいと思います。
ちなみに、物語や世界観設定ではなく、コンセプト、テーマにあたる一部分をコピペしてみます。
『コンセプト』
◆地に堕ちた主人公の、『立身出世』と『復活』の物語!
全てを失った主人公の姫・アンジュ
彼女が、自分の心を失わず、諦めず、強く生きてゆく物語。
◆支配者が造った偽りの『社会』をぶち壊し、希望ある『未来』を切り拓く、新世代のリーダーの創出!
支配者、権力者が造った都合の良い世界に閉塞感を抱きながらも何も出来ない我々に「閉塞した社会を壊し、変革してくれる、強くて魅力的なリーダー」を創出・提示。
彼女は希望の導き手か、それとも破壊の御使いか!?
◆魅力的なアルケミライズワールド(新・錬金世界)の構築、そして、新機軸の人型ロボット兵器アクション!!
産業革命の時代のようなヨーロッパと現代の日本が融合した舞台「アルケミライズワールド(錬金世界)」で、変形型特攻ロボット兵器「パラメイル」に搭乗し、片道切符の命を燃やして戦う「猟機兵(りょうきへい)」となった少女達の、熱き魂のロボットバトル!
『テーマ』
◆『こころをつなぐ』物語。
と、テーマについて本当は1ページになる文章が書いているのですが、1行目の大切な部分をコピペしてみました。
「クロスアンジュ」の「クロス」は、「×(かける)」の意味であり、誰かと主人公アンジュを「×(かける)」ことで何かが起きる、そんな物語を作りたいと思ってのタイトルなのです。
当時、いやいまもかな?
インターネット、SNSなどでたくさんの人々とつながっていると思っている若者。
でも、心の奥底で欲しているのは、上辺だけではなく嘘偽りなくリアルにつながりたい!と願っているように見えるのです。
そんなことを考えて、樋口さんにまとめてもらいました。
人はひとりでは生きていけない。
ひとりは寂しすぎる。
だから誰かとつながりたい。
でも、つながることで知る嫌なこともある。
人は孤独であり、となりに誰かがいる安心感を欲すると思うのです。
けれど、その誰かに裏切られたときの悲しさつらさなど、真の友情とは?本当の仲間とは?
人の持つ普遍的な想い。「クロスアンジュ~天使と竜の輪舞」では、これらをちょっとシニカルにアプローチした物語でもあります。
もし、「観ていないよ!」と言うお客様がおりましたら、是非とも観てもらえると嬉しいです。
◆下記、「告知」となります。わたしが昔関わったタイトルのイベントです!
【祝20周年!あの日の感動をみなさんと一緒に!】
「舞-HiME」 TV放送20周年を記念して『フィルムコンサート』の開催が決定しました!
本イベントは、TVアニメ『舞-HiME』&『舞-乙HiME』の名場面の数々を、映像と劇伴の生演奏で体感していただくコンサートです!作品内で流れる“劇伴”を作曲した梶浦由記氏をむかえて、劇伴の魅力をより深く体感していただきます。さらに、主題歌アーティストによるOP/ED曲の歌唱やキャストを交えたトークなど、改めて作品の魅力を深堀りしていただけるような企画もご用意しております。また、本イベントの開催記念グッズの販売も予定しております。是非、コンサート会場でお楽しみください。皆さまのご来場をお待ちしております。
※劇伴=劇中伴奏音楽の略。映画やアニメなどの作品に合わせて流される音楽。BGM。
<公演概要>
【タイトル】TVアニメ『舞-HiME』&『舞-乙HiME』20周年記念 フィルムコンサート
【日時】2025年9月20日(土)
昼の部|12:00開場/13:00開演
夜の部|16:30開場/17:30開演
【場所】松戸・森のホール21 大ホール
【チケット】全席指定 10,800円(税込)入場者プレゼント付き
【出演】
<演奏>
梶浦由記(Piano)
Vocal:戸丸華江, KAORI, YURIKO KAIDA, Joelle
MUSICIAN:FRONT BAND MEMBERS
是永巧一 (Guitar), 佐藤強一 (Drums), 髙橋“Jr.”知治 (Bass), 今野 均 (Violin), 奥泉貴圭 (Cello),赤木りえ (Flute), 中島オバヲ (Percussion), 大平佳男 (Manipulator)
<アーティスト>
栗林みな実,美郷あき ほか
企画 バンダイナムコフィルムワークス/バンダイナムコミュージックライブ
制作 バンダイナムコミュージックライブ/ハートカンパニー
協力 おっどあいくりえいてぃぶ/HIGHWAY STAR
🔻ふるさとP写真録:今週の一枚

追伸:
YOUTUBE「ふるさとPアニメ道」もスタートしましたので、ぜひぜひチャンネル登録の上、ご覧くださいませ。
🔻リンクはこちら
HTTPS://WWW.YOUTUBE.COM/CHANNEL/UC_JRVVLJSFUHGMXPCVYUQ5A
古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。
1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。
コメントを書く
このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。