第57回:『勇者エクスカイザーのテーマは「宝ってなあに?」です』
前回のコンセプトに続いて、今回は「エクスカイザー」の『テーマ』について書きます。
そう「勇者エクスカイザー」のテーマは【宝】なのです。
地球上にある「宝」は何なのか?
お母さんお父さんにとって「宝」は何なのか?
子供にとって「宝」とは何なのか?
本当にたくさん「宝」はあります、改めてその「宝」って何だろう?と考えてもらいたい、そんなアニメなのです。
当時、とある話数は、「母の日」がテーマでした。
敵ロボットたちガイスターが、大切な宝物「お母さん」を盗むのですが、大好きなママがいなくなって子供たちは困ります。
主人公コータのママさんが敵ガイスターに捕まってしまいます。
そして、助けに来たコータの前にガイスターが近づくとママさんが叫びます。
「うちの子に何するの!!」と。
※セリフが違っているかも知れません。映像を見直せないのでごめんなさい。
その声にビクッとして、コータを手放すのですがとっさにエクスカイザーが助けます。
ラスト、ママさんがコータを抱きしめて「わたしにとってあなたが宝物よ」と言うのです。
「母の日」の物語ですから、子供たちにとってお母さんは宝物であるのは事実ですが、その話数のメッセージでは、母親から見て子供は宝物です。
この話数を観ている親子が互いに何かしらの会話につながると嬉しいなと思って我々はアニメを作っておりました。
「勇者エクスカイザー」は、確かにロボットバトル物ですが、親子で会話の出来るそんなアニメにしたいと願っていました。
だからこそ、子供たちが玩具屋さんで「勇者エクスカイザー」の玩具を欲しいとねだったとき、前向きに両親や祖父祖母が子供たちの各種イベントである誕生日、こどもの日、クリスマスや元旦などに買ってやろう?とその選択肢に入るようなアニメになれれば幸いだと考えていました。
各話のテーマである「宝物」は、色々あって面白かったです。
敵の恐竜型ロボットたちガイスターが地球上にある宝物を探します。
とっても大切なものの場合もありますし、すごい頓珍漢なものまで様々な宝物を提示します。
音楽、時間、遊園地、電気、橋、花嫁さん、パンダ、オリンピック、遊園地、アイドルなど色々なアプローチがあります。
地球上には、宝物がいっぱいあるのです。
そこで、好きな話数はたくさんありますが、そのなかでも「たばこ」を宝物とした話数はちょっとシニカルで面白いのです。
ある日、敵ガイスターが、宝物のたばこを盗むのです。
たばこ好きなパパさんは禁煙になってイライラします。
でも、ママさんと主人公のコウタくんは、パパの健康を気遣ってなくなって良かったね、となります。
最後に、ガイスターが一生懸命集めたたばこを火山口に捨ててしまうのです。煙モクモクとなってガイスターたちがゴホンゴホンと咳をします。
パパの立場、ママの立場、子供の立場で変わってしまうのは、皮肉で面白い話だなって思いましたね。
ちなみに、わたしはたばこを吸ったことがありませんのでママさん、子供たちの目線でしたね。
音楽が宝物の話数。
これは、勇者ロボたちの合体時にBGMとして流れる勇壮な音楽が宝物と言うお話。
空にカメラを向けるとキングエクスカイザーの合体が見えます、そこからカメラを下げて街に向くと、そこでは指揮者が熱心に棒を振り、リアルに楽団の演奏家さんたちが様々な楽器を奏でているなんて話でした。
毎話テレビで勇者ロボたちの変型合体・必殺技のときに、作曲家田中公平さんが書いた曲がかかるのか?を、谷田部監督的アンサーでもありました。
いわゆる、リアルに楽団の応援でもあったわけなのです。
メタフィクション風であって、少しだけSFでしたね。
時の記念日から、時間が宝物の話数。
パパさんは時計が壊れてしまって時間が分からなくなってしまい、朝も昼も夜も次の日もずっと仕事をするのです。
家では、コウタくんとママさんが庭で日時計を見て、時間を判断するのです。
自然に寄り添い、自分を見失わずにいれば時間がわかる方法があるのですが、仕事に囚われてしまって時間を感じる余裕がないパパさんです。
そんなパパさんを見ると、これも皮肉なお話だなって思った次第です。
上記の他に、電気がない、とか、なくなって困るものがたくさんあります。
日々当たり前だと思っているものが、盗まれてなくなることで気がつくのです。
「宝物」って何だろうと、親と子供が一緒に考えることのできるアニメだったと思うのです。
ちなみに、お気づきの方がいると思いますが、「勇者エクスカイザー」のスポンサーは「タカラ」さんです。
とても、うまいテーマだと思います。
当時、企画書を見て深いなって思った次第です。
笑点ではないですが、「ざぶとん1枚やって」です。

古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。
1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。
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