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記事: 第59回:『勇者エクスカイザーの面白さを知り「オリジナルアニメ命」の古里になりました…』

第59回:『勇者エクスカイザーの面白さを知り「オリジナルアニメ命」の古里になりました…』

わたし古里は、「オリジナルアニメ命」で生きております。

 

これは、「勇者エクスカイザー」に参加したことから始まりました。

あの頃のわたしは、オリジナルアニメの制作が当たり前であり普通のことでした。

 

改めてわたしの当時の作品歴です。

日本アニメーション時代は原作物2作「不思議の国のアリス」「超人ロック」です。オリジナルアニメ1作「ミームいろいろ夢の旅」。

スタジオジブリ時代、オリジナルアニメ「天空の城ラピュタ」。

 

サンライズに入社して最初のアニメ「ミスター味っ子」は原作物でした。

 

そして、2作目の仕事が「勇者エクスカイザー」、オリジナルアニメだったのです。

以降さらに、オリジナルアニメが続きます。

そうなると、わたしはよりオリジナルアニメの面白さにハマる訳です。

 

周りを見ると原作物アニメがたくさんあり、それも素敵なアニメばかりです。

でも、自分のところにはオリジナルアニメの仕事がやってきます。

 

そこから、いまに至るまで、原案からのオリジナル展開のアニメ数作はありますが、基本オリジナルアニメを多く担当させてもらいました。

 

さてオリジナルアニメを作ることでメリットとは何か?です。

 

テレビや映画、配信などのメディアに対して常に「最適化」出来ることです。

つまりアニメーションは、絵でありカラーで動いて、声や音楽、効果音がつきますのでこれらのメリットを最大限利用して表現を享受出来ることです。

 

そのためには、監督、ライター、キャラクターデザイナー、美術の方々もオリジナル慣れと言うかテクニックは必要です。

 

絶対に必要なのが「監督、ライターたちの個性(オリジナリティ)」です。

「監督、ライターたちの趣味嗜好」です。

さらに、「監督、ライターたちの生き方」「哲学」が出るのです。

 

つまり、「監督、ライターたちがどれだけ自分をさらけ出すことが出来るのか?」なのです。

 

自分を出すと言うのは、恥ずかしいことです。

でも、それが監督、ライターたちの仕事だと思うのです。

 

そうなのです。

 

おおよそオリジナルアニメの主人公は監督の人間性が反映されます。

俯瞰で物語を見るキャラクターがライター担当になる可能性が高いです。

プロデューサーも俯瞰で見ているキャラになる場合が多いですね。

 

とにかく、監督イコール主人公の生き様と物語上の行き着く先へ、どうやって行くのか?です。主人公の生き様は、監督たちの生き様が反映されるのです。

 

主人公が艱難辛苦を歩むのか?運命に翻弄されるのか?

意気揚々、元気に明るく行くのか?などが面白さにつながると思うのです。

 

基本ドラマとしては、それぞれの高い障害(ハードル)をどうやって進むのか?となります。

主人公が誰かに助けられながら前に進む愛らしいキャラなのか?

主人公の無茶な行動で転びながら進むのか?

周りのキャラクターと連携して行くのか?

敵などにだまされて遠回りするのか?などなど。

 

さらに、オリジナルアニメの面白さは、次回がどうなるのか?分からないことにあります。

それは、わたしたちの人生そのものが分からないのと同じだからです。

 

でも、この考えが変わりつつあります。

2000年代中盤頃、若い視聴者から「オリジナルアニメの先が分からないのが嫌なのです」と聞きました。

原作物は、ページを読み進めることで先々が分かるので、「原作物のアニメが好きです」と。

 

オリジナルアニメのような、先が分からないものを見ること自体時間の無駄だと考えるようです。

 

原作物のメリットは、漫画、小説を読んでおけば面白いかがすでに分かることにあります。

タイパ、コスパを優先するようです。

 

タイムパフォーマンスが重視されるようです。

有限の時間を無駄なくそのアニメを見たことで楽しめるのか?楽しめたのか?です。

そこに、保険をかけておきたいとの、ことです。

 

いわゆる、「安心感」が欲しいとのことです。

 

物語を構築するには、主人公の生き様をより強調し「嘘」を本当のように描くことが醍醐味だと思っていたわたしにとって、先が分からないそのドラマを見ることが楽しいことでなく苦痛だと言う考え方を知ったときは驚きました。

 

しかし、いまじっくり考えて見ると「なるほど」と思ったのです。

だから、アニメを見ることに先の分からない辛さなと必要ない!とのこと、少し理解出来ます。

 

思い返すと、1990年頃にバブルが弾け、2000年代に突入して世の中の景気がドンドン悪くなり、なくならない戦争、オゾン層の破壊、目に見えない恐怖がジワジワと押し寄せてきます。

 

特に、2020年のコロナ禍の目に見えない恐さは半端ないものでした。

漫画を見ると、闇に蠢くモンスターが人を脅かす内容が多い気がします。

コロナが流行ったとき、コロナこそその代表格だなんて感じました。

それだけでなく、世の中に見えない怖さがたくさんあると思うのです。

愉快犯もそうだし、今年75日に何かしら、例えば大災害が起きると言う都市伝説もそんなことの現れかなと思います。

 

 

でも、それでもわたしとしては、オリジナルアニメの持つ面白さ、楽しみ方が、少しでも若い視聴者に広がると嬉しいなと思います。

 

 

あと、オリジナルアニメを作るときに重要なこと、大切なことを知りました。

それは、「価値観の共有」です。

 

わたしは、「勇者シリーズ」に関わることで、プロデューサーと監督、プロデューサーとライター、プロデューサーとキャラクターデザイナーやメカデザイナーとの間に必須として、「価値観」の共有が特に大切だと知りました。

アニメーションはたくさん人が集まってつくることとなります。

スタッフは、百人以上になります。

 

そんな中で、プロデューサーとメインスタッフの間に目に見えないけど、同じような価値観が共有されていれば安心して任せることが出来ます。

 

漫画家、小説家はご自身の考えがそのまま反映させられるメディアです。

でも、アニメーションはたくさんの人が関わるが故に、こんなことを考えますし、知りました。

 

さらに、各スタッフの持つ才能と才能がぶつかり「化学反応」を起こすことも楽しみです。

この化学反応を見ることもプロデューサーの楽しさのひとつでもありますね。

と言っても、ドキドキの方が強いですが!!

 

 

  

 

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

196153日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

20112月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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