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記事: 第62回:『太陽の勇者ファイバード、キャラクターデザインオーディションについて』

第62回:『太陽の勇者ファイバード、キャラクターデザインオーディションについて』

「太陽の勇者ファイバード」は、オリジナルアニメーションとして、キャラクターデザインも広く集めるオーディションとなりました。

 

わたしは、初参加です。

日本アニメーション時代、ジブリ時代、サンライズに入社してからの「ミスター味っ子」「勇者エクスカイザー」は、わたしが参加した頃にはすでにデザイナーもデザインも決まっていたので、スタート前から決まるまでのシーンを見ることはなかったのです。

 

「太陽の勇者ファイバード」では、新しいことを知るチャンスを迎えました。

 

色々なアイデアを元に谷田部(勝義)監督とシリーズ構成平野(靖士)さん、吉井(孝幸)プロデューサーが打ち合わせをしてテキストを作っていきます。

 

その企画書資料&キャラクター設定等を書いたメモを元にしてキャラクターデザインのオーディションが動きます。

 

吉井さんが発注、そして監督の要望を踏まえての発注。

古澤(文邦)デスクが発注。

ちなみにわたしも若干名発注しました。

 

会議室のテーブルの上に、本当に多くのラフデザインが揃いました。

その場には、吉井プロデューサー、谷田部監督、古澤デスク、わたしと設定制作の浅井(薫)さんはコピーを用意したりメモを取ったりします。

記憶のなかで、10人を超えたアニメーターさんにキャラクターデザインを描いてもらって、そこから植田(均)さんが残りました。

 

わたしは、植田さんに決まるまでの進み方を見ました。

最初は、主人公として違うと思うデザインをテーブルから取り出し、減らして行きます。

監督が、プロデューサーが、躊躇せずにどんどん減らすのです。

そして、10枚あったものが、3枚くらいにして、そこからは、残ったデザインに対してそれぞれの意見を言い合います。

さらに、絞って1枚にします。

 

「勇者エクスカイザー」のキャラクターデザインはポップでデザインに振っています。第2作目は、リアリティが増す方向にデザインになったと思いました。

 

わたしも23名のアニメーターさんに企画用のキャラクターデザインを描いてもらいました。

まずは興味があるか?と確認して打ち合わせを自分なりにやりました。

さすがに発注するところは見たことはありませんので……自己流です。

実は、声をかけたそのなかのふたりは、後にキャラクターデザイナーとして勇者シリーズに参加になるのです。

さて、誰でしょう?

 

答えは、「勇者特急マイトガイン」オグロアキラさんと「黄金勇者ゴルドラン」の高谷(浩利)さんなのです。

 

ですので、声をかけて行くことはとても大切なことだと思います。

 

キャラクターデザインの選び方は、「太陽の勇者ファイバード」が後々まで自分のガイドライン(指針)となっています。

 

諸々選ぶにあたり、わたしが考える下記3つの条件を持っているアニメーター(デザイナー)さんが望ましいと思うのです。

 

・デザインの幅がどれくらい持っているか?

・スケジュールを守れるか?

・個性的なデザインかどうか?

・華があるデザインか?

 

デザイン幅とは。

1話数にゲストキャラクターが3名出るとして、1年間52話数と換算すると「156人」になります。

これに、メインキャラクターとして「10人」いるとして「合計166人」くらい描くことになります。

他にも、コスチュームチェンジ、犬や猫たち動物。

さらに小物、小道具、自転車なども描く場合があります。

 

つまり、赤ちゃん、子供、若者、OL、サラリーマン、中年、老人の男女。様々な動物たち。内容によっては宇宙人?まで描くことになります。

それらを、ひとりのデザイナーがご自身のなかから、絞り出して設定を描いて行くのです。

 

絵のデザイン幅を持っていないと、デザイナーになったご本人が苦しむことになるのです。

 

さらに、絵の枚数・点数をスケジュールを遵守し描いて行くことが必須です。スケジュールが遅れると、各分野のスタッフが徹夜作業となり日々苦しむことになります。

 

最後に、個性的デザインであり、オリジナリティ豊かなのか?です。

また、新しさがあるか?

 

個性的、オリジナリティを持っている、については、本人の趣味嗜好、性格なども反映されるので、そのアニメーター(デザイナー)さんのことを知る必用があります。

ですので、お仕事をしたことがあるのが一番ベストですが、それが無理な場合はとにかく噂を聞きまくります。そのアニメーター(デザイナー)さんのことを知っている人に根掘り葉掘り聞きます。いわゆる情報を集めます。

 

当然、キャラクターデザイン(絵)そのものが、新しさがありとても魅力的であり、その企画をより活かし、視聴者に好意的に受け取ってもらえるだろう!と予想することになります。

いまで言う、視聴者さんに推してもらえるキャラクターになれるか?を考えて選ぶことになります。

 

オーディションは、会議室のテーブルの上に数名のアニメーター(デザイナー)が描いた主人公のデザイン画をたくさん並べて、絵を見て決めて行くのです。

描いたアニメーター(デザイナー)の名前を教えないで、基本「ABCD……」と表記して進めます。

これは、「ハロー効果」に左右されないようにしたいからです。

 

※ハロー効果とは、ある対象を評価する際、一部の特徴的な印象に引きずられ、全体的な評価が歪んでしまう現象を指す言葉です。たとえば、難関大学卒ならば仕事でも優秀だろうと判断してしまうなどです。

社会心理学の専門用語で、ハロー効果(halo effect)のハロー(halo)とは、「聖人の頭上に描かれている光の輪」を指します。

 

 

 

純粋に、そこのテーブルにある絵だけの評価で決めて行くのです。

企画にあっているのか?を「直感」で決めるような部分があります。

このデザインの主人公で子供たちに受けるのか?

監督たちがそのデザインを好きになれるのか?

1年間付き合うデザインですので、好きになれることは大切な要素です。

 

など、テーブルを囲み、監督、プロデューサーが話しているのを脇で聞くことが出来たわけです。これは、わたしにとって、どのアニメーター(デザイナー)さんと組むのがベストなのか?と、色々な角度で知ることとなり、わたしなりのルールが生まれました。

 

比喩になりますが。

主人公キャラが、テーブルの上で光っているのです。

絵に描いたキャラクターなのに、まるで実写、アイドルオーディションとか俳優オーディションに選ばれる後のスターになれる逸材は、光っているように見える気がしますが、それと同じように感じるのです。

 

絵なのに、生きている人間、スターと同じように思えるのです。

ここにきちんと言語化の出来る理屈があるようで、ないなって思うのです。

 

わたしが企画協力で参加した「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」では、主人公が立つ「0番(ポジションゼロ)」を競い合うオーディションをレヴューと称し、舞台少女たちのキラめきを燃やしてトップスタァになる、とあります。

舞台に立つ者は全てキラめきを放ち、一所懸命に生きる姿が美しいのです。

 

でも、どうしても誰か(主人公)が選ばれると言う事実があります。

 

歌が上手だから、ダンスが上手だから、演技がうまいから、顔立ちスタイルが良いから、など要素はたくさんあるのですが、でも、それらさえ凌ぐ魅力がキラキラと見える人が選ばれる気がするのです。それを「華」があると言うのでしょうか?

 

人間も絵に描いたキャラクターデザインも同じように思えるのが、この仕事(オーディション)を何度やっても不思議だなと感じます。

 

わたしは、自分がプロデューサーになってから、何度もキャラクターデザインオーディションもやりましたし、デザイナー選びも行いましたが、毎回無事にやれているのは、「太陽の勇者ファイバード」の時のルールがあるからです。

 

直に経験出来たことに、感謝します。

 

 

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

196153日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

20112月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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