第68回:『舞-乙HiME、メインタイトルを「マイオトメ」と読むのは難しい?』
「舞-HiME」に続き、第2弾。
シリーズ物第2作目として、メインタイトルをどうするか?です。
コンセプトとして「キャラクター・スターシステム」を使うので、「舞」は残したと考えました。
そうなると、「舞◯◯◯◯」として、◯のところにどんな言葉が来るのがベターなのか?です。
いわゆる、「姫(HiME)」の次は何?です。
そこで、当時、姫に似たニュアンスの単語を色々出してみました。
「少女」「ガール」「ギャル」「天使」「エンジェル」「アンジュ」「ジェンヌ」「プリンセス」「アイドル」「巫女」「メイド」「乙女」「お嬢さん」「お嬢」「令嬢」「マドモアゼル」「ハイカラさん」「姉御(あねご・あねき)」「妹」「シスター」「娘(むすめ・こ)」「弁天様」「ヴィーナス」などなど。
当時すでに「星方天使エンジェルリンクス」で、「天使=エンジェル」を使っていました。後々で、「アイドル」「少女」「アンジュ(天使)」を使いました。
そして、いま、新しい企画「おゆみこ」では、「巫女」を使っています。
どんどん、使えるネタがなくなっていきますね。
当時、最初に選ばれたのは「舞☆MAiD」でした。
読み方は「マイスターメイド」です。
きちんと「i」が小文字です。
これは、シリーズ構成&シナリオライターの吉野(弘幸)さんのアイデアだったと思います。
しかし、2005年春頃だったと思いますがテレビ東京のプロデューサーに呼ばれました。
「古里さん、舞-HiMEの次の企画を動かしていることは知っています」。
「そこで、次の企画のメインタイトルについて相談があります」と。
テレビ東京のプロデューサーは「古里さん、大変申し訳ないですが、メインタイトルを変更してもらえないですか?」と言ってきました。
わたしは、「え?、どうして」となりまして、色々説明を受けました。
2005年春、「メイド」について、色々トラブルがあったのです。
正直、その説明を受けても、理由が良くわかりませんでした。
このメインタイトルだと、放送出来ないと言われたので、変えるしかありません。
スタジオに戻り、シナリオ打ちのタイミングで、メインスタッフに状況を話して納得してもらい、メインタイトルを変えることにしました。
ライターの吉野さんが「考える時間をください」、と言うことで持ち帰りになりました。
他のスタッフも、良案が生まれたら提出することとしました。
そして、次の打ち合わせに、吉野さんが持ち込んだタイトルが、「舞-乙HiME」でした。
吉野さんの提案に対して、出席者のみんな、「ん?」「これはなんて読むんだ?」とハテナになりました。
吉野さんは、厳粛に「マイオトメ」と読みます、と。
誰かが、「オツヒメ」いや「オトヒメ」となら読めるけど……と、言います。
吉野さんは、改めて説明を加えます。
これはある種造語になりますが、「オトヒメ」でなく「オトメ」と読んでもらう、のだと。
さらに説明が続きます。
「乙」について、です。
この「乙」は「2」の意味合いがあります。いわゆる「甲(こう)乙(おつ)丙(へい)~~」と。
つまり、「舞-HiME」の2作目の意味で、「舞-HiME乙」も考えたが、文字の並びは「舞-乙HiME」、こちらの方が良いと思う、でした。
ちなみに、余談なのですが、サンライズでは、2作目に「Z(ゼット)」を付けるのがひとつのパターンでもあります。
また、この「Z」が「乙」にかたちが似ています。
さらに数字の「2」にも似ています。
だから、「舞-HiME」の2作目として、「乙」が入り、「HiME」はそのまま使うこととしたのです。
ただし、読み方が大きく変わるのです。
「マイオツヒメ」or「マイオトヒメ」でなく、「マイオトメ」となりました。
とにかく慣れてもらうしかないですし、関係各社さんには、企画書を持って行き、説明しました。
皆さんになんて読むの?と言われて「実はですね」と、説明が始まるのでした。
だから、20年経ったいまでも、「マイオトヒメ」と呼ぶ人もいます。
また、「マイオツ」と呼ぶ人もいます。
OVA「舞-乙HiME~Zwei」は、「乙」でなく英文字の「Z(ゼット)」も加わりました。
これで、「乙Z(オツ・ゼット)」となります。
さてさて、これって、なんとなく見覚えがありませんか?
はい、3作目として「ダブルゼータ」にあやかっております。
正直、「メイド」に変わる王や大統領のために闘うスーパー少女たちのネーミングとして、「オトメ」と言うのは有りだと思ったのです。
と、2005年秋、放送が始まる頃になると、タイトルにも慣れたし、わたしは「メイド」ではなく、「オトメ」に変更して良かったと心の底から思っていました。
オリジナルアニメのメインタイトルを決める作業は、本当に難しいですし、辛い作業です。
OVA「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」であっても、OVAシリーズ3作目として、「SAGA」に決まるまで色々ありました。「SIN」も同様です。
「ファイ・ブレイン~神のパズル」「クロスアンジュ~天使と竜の輪舞」も、色々悩んで決まりました。
メインタイトルは、そのアニメの顔のひとつです。
テーマやコンセプトを言い表していることも多いです。
よってとても、重要です。
だからこそ、悩みますし、色々提案して絞っていきます。
「舞-乙HiME」は、吉野さんの提案でしたが、素晴らしいタイトルをいただいたと思っています。
わたしの中では、最初のタイトルを忘れてしまうくらい、馴染んでおります。
「舞-乙HiME(マイオトメ)」は、本当に良いメインタイトルです。

古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。
1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。
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