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記事: 第74回:『舞-乙HiME、声優さんたちの思い出を語ります』

第74回:『舞-乙HiME、声優さんたちの思い出を語ります』

「舞-HiME」の声優さんの大半は、「舞-HiME」から続けて出る方々が多いのです。

それは、キャラクタースターシステムを用いているので、「舞-HiME」に出たキャラクターが名前の一部が変わったり、役どころが少し変化していたりしますが、基本同じ声優さんに参加してもらっているからです。

 

当時の大きな課題は何と言っても、本当にこれらの声優さん全員アフレコ時に呼べるのか?でした。

それぞれのスケジュールが、合わさるのか?

音響スタッフさんからの返事待ちとなり、連絡が来るまでドキドキとなりました。

 

当然、声優さんだけでなく音響監督のスケジュールが最優先ですし……。

兎にも角にも、テレビ放送を観てもらえば分かるように、奇跡が起きたのです。

アフレコは、抜きはほぼなく声優さん全員が揃って収録出来ることになりました。

 

「本当に!」と、音響スタッフさんに聞き直してしまいました。

なんと嘘ではなく本当に集まってくださったようでした。疑心暗鬼なわたしです。

 

そして、第1話のアフレコも始まり、最終回の第26話まで収録していくことになります。

 

アフレコ会場は、とても広いブースを持っているアオイスタジオです。

「舞-HiME」と同じ場所です。

1話のアフレコ時、新番組のはずなのに、どこかで「お久しぶり」とか、「ちょっと懐かしいね」などの不思議な会話が行われるのです。

「舞-HiME」の声優さんが多いので、そんな会話でした。

 

そんな中で、主人公のアリカ役の菊地(美香)さん、ニナ役の小清水(亜美)さんたちが初参加、緊張しています!のムードを出しています。

そこに、3人主人公のひとりとして、マシロ役のゆかなさんが、「舞-HiME」からのつなぎ役ともなり、菊地さんと小清水さんを引っ張っていきます。

 

ちょっと面白く感じたのは、「舞-HiME」で主役のひとりだったなつき、ある意味強者の静留が、「舞-HiME」のストーリー上で、学園長(先輩格)としてと、アリカ、ニナの憧れのオトメとしてその立場などが微妙にリンクしているのです。

玖我なつきから、ナツキ・クルーガー役として千葉(紗子)さんが、藤乃静留からシズル・ヴィオーラ役として進藤(尚美)さんがそれぞれ、アフレコ時に新しいキャラクターの演じる方向を探り、音響監督や監督の考えに近くなれるように演技をしていきます。

このアフレコ風景も、アリカ役の菊地さんとしては、ニナ役の小清水さんはどう見ていたのか?です。わたしは、さすがにインタビューしたことがないのですが、一度は聞いてみたいものですね。

 

声優さんがたくさん揃うのは、第2話からになります。

学園編が始まることで、アリカたちのクラスメイトとして、今回「舞-HiME」からの参加である、エルスティン役の栗林(みな実)さん、イリーナ役の比嘉(久美子)さん、トモエ役の田中(理恵)さんなど数名います。

 

なんと第2話では、ゲストも含めて28名もの声優さんがマイク前に立つことになりました。

改めて考えてみると、第2話では約10人だけが「舞-HiME」初参加で、18名ほどの声優さんは「舞-HiME」から出演しているので、何かしら現場のムードを知っているのです。

 

と言うことで、不思議なアフレコとなりました。

集合写真も撮ったのですが、第2話だったのか?第3話だったのか?が忘れています。

ポスターを持ったマシロ役のゆかなさん、ニナ役の小清水さんの間に、アリカ役の菊地さんが笑顔で写っています。

そんな前列の右にナツキ役の千葉さん、左にエルスティン役の栗林(みな実)さんです。後ろに、ナギ役の石田(彰)さん以外、全員女性の声優だと言うことに気が付きました。あれ?セルゲイがいない、どうして?

 

 

ちなみに、「舞-HiME」から参加しているキャラクターであっても、かなり役割が変わっていることもあります。

例えば、ミドリやラドは相当違っています。まず、シリアスなドラマを背負い、超シリアスキャラになりましたしね。ラドは特に、レイトではなく名前も違っていますし、顔も姿も変わっています。でも、中の人は「舞-HiME」の神埼黎人ですので、関(俊彦)さんが演じています。

 

一番の変化は、「舞-HiME」の命でしょう。

「舞-HiME」においては、「猫」です。

黒猫のミコトになったのです。これは、さすがにキャラクタースターシステムではない気がしますが、でも、猫がどんどん美袋命に見えるのが不思議でした。

 

ストーリー上、マシロのそばで飼われている猫です。

この猫は、人間の言葉を話したりはしません。

「にゃあ」と鳴くだけです。

ミコト役の清水(愛)さんは当時、猫を見て、鳴き声を聞いて勉強していると話していました。

テレビ本編26話、CDドラマ、OVA「舞-HiMEZwei」などで猫語として、「にゃあ、にゃお」と演技をしていましたので、いつでも猫役はやれますね、と話した記憶があります。

 

わたしは、基本声優さんには、先々のお話は教えないようにします。

これは、「舞-HiME」だからとか「舞-HiME」だからではなく、オリジナル作品を担当する場合はとにかく教えないようにします。

わたしたちが、生活するにあたって、明日のことがわかっている人はいないと思うのです。

だから物語であっても、先のことを知らずに演じた方がリアリティが増すと考えます。

 

でも、エルスティン役の栗林さんは、オープニング主題歌の作詞を書くために、設定、シナリオなど渡しているので、エルスティンがどうなるのか?を知っていたのです。

栗林さんは自分のラストアフレコ話数を知って、2話から参加しているのです。

そして、アリカ役の菊地さんたちと仲良しになっていくのです。

 

わたしは、そんな姿を脇から見て、本当に栗林さんに「ごめんなさい」と心のなかで叫んでおりました。第16話のアフレコ時、ついに第17話のアフレコ台本が配られました。台本を手にした菊地さん、小清水さんはなかを読んで唖然です。

 

ただ、勘の良いミコト役の清水さんや「舞-HiME」経験者の声優さんの一部の方は、我々スタッフが普通に作るわけがない、絶対に何かを仕掛けて来るに違いないと思っており、この話数の前に予測として会話しているのを聞いた記憶があるのです。

 

そして、来る第17話のアフレコ当日、いつもよりピリッとした空気の中でアフレコ開始です。

でも、始まると皆さんプロですから、一生懸命に演じてくれます。

エルスティン役栗林さんの悲鳴が轟きます。

ニナのつらい想い。

アリカのどうしてこうなるの!の想いがアフレコ会場を支配します。

熱のこもった演技を収録出来ました。

 

毎回アフレコに参加しないキャラクターもいます。

ですので、何本かアフレコがお休みになって、久しぶりの参加で、顔ぶれが変わっていると、「わたしが休んでいる間に何があったの?」と起きたドラマを聞いている声優さんもいます。

声優さんが、疑問に思ったり、興味を持ったりしてくれるのは嬉しいことです。

視聴者のお客さんの前に、映像を観てくれた方々ですので!!

 

「舞-HiME」も「舞-HiME」もですが、わたしは、「GEAR戦士電童」と作ったときに、福田監督とシリーズ構成の両澤(千晶)さんとオリジナルアニメの作り方としての考え方や方法論を学びました。

それは、視聴者さんの思っていること、考えていることの少し先を走らないといけないと教えられました。

数歩先を走りすぎていると、表現したドラマが分からなくなる可能性があります。

でも、ほんの少し先を走りだと読まれてしまうことになります。

だから、塩梅は難しいですが、良い意味で視聴者さんを裏切りながら、ドラマを作っていくことを教えられたのです。

 

わたしは、「舞-HiME」と「舞-HiME」は、「GEAR戦士電童」のときに頂いたノウハウ、テクニックはとにかく使いまくってアニメを作ると決めていました。

ちなみに、「GEAR戦士電童」は、「ジェットコースタームービー」と言われたことがあります。

展開が早く、先が読めないとお客さんに感想をもらったことがあるのです。

シリーズ構成の吉野(弘幸)さんも「GEAR戦士電童」でシナリオを書いていますので、このあたりのニュアンスは伝わっていました。

 

「舞-HiME」では、第16話のカラオケ回が終わるとバトルロワイヤルが始まりました。

つまり第17話からHiMEたちの辛い物語が動き出します。

そして、「舞-HiME」でも第17話を経て、第18話から大きく物語が動き出します。

 

今回、当時のアフレコ風景など思い出して原稿を書いているのですが、やはり20年も経っているので色々忘れておりまして、一生懸命思い出して書きますので、時間をください。

 

920日土曜日の「舞-HiME&「舞-HiME20周年記念フィルムコンサートで、アリカ役の菊地美香さん、ニナ役の小清水亜美さん、エルスティン役の栗林みな実さんに会うので、色々思い出したいと思います。

 

と言うことで、次回後編をお待ち下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

196153日生まれ。青森県出身。1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

 

20112月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。

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