記事: 第75回:『舞-乙HiME、声優さんたちの思い出を書きます』
第75回:『舞-乙HiME、声優さんたちの思い出を書きます』
今回は、声優さんたちとの印象的な思い出を書きたいと思います。
まずは、主人公アリカ・ユメミヤ役の菊地(美香)さん。
当時、菊地さんはミュージカル、テレビドラマが中心で、少しずつアニメのアフレコが増えてきた頃だったと思います。
日々のアフレコは本当に頑張っていた記憶しかないです。
本人は声優仕事を楽しんでいたことは伝わっていました。
何度かお茶など行きましたが、アフレコ現場ではのびのびと自然体でいられるのが嬉しいみたいなことを話していました。
テレビなど芸能方面はいつも緊張と言うか気を張っていたみたいです。
確かに、アフレコ現場に来る声優さんにマネージャーさんが付いて来ないこともありますし、割合自由な感じです。
ちなみに先日9月20日「舞-HiME&舞-乙HiME20周年フィルムコンサート」で、挿入歌とエンディング主題歌をお客さまに披露出来たことは本当に嬉しかったし、ひとつ夢が叶ったと話していました。
トークタイムでは、「当時古里さんが「舞-HiME」を見ては駄目って命令をくだしており、いまも守っています」と話していました。
「もう、見て良いですか?」と言われたので、「はい」と答えたわたしです。
そして、「どうして見ちゃ駄目ったんですか?」と言われたので、「え、だって、「舞-HiME」を見たら「舞-乙HiME」の辛い展開がバレてしまうじゃないですか?」と答えました。
そうなんです。とっても真面目な菊地さんでした。
あと、放送当時、「舞台やりましょう!」「イベントやりたいです!」と、そこでエンディング主題歌「乙女はDO MY BESTでしょ?」を歌いたいとわたしに話していたのです。
でも、なかなか実現出来ずにおりましたので、20年経った今回の「フィルムコンサート」は楽しかったとのことです。
「舞-乙HiME」のミュージカル舞台があるなら、「わたしアリカをやります!」と何度も言われました。
ニナ・ウォン役の小清水(亜美)さん。
当時まだ20歳前の参加でした。
すでに、他作品で主人公経験者でしたからマイク前での普通の演技は問題ないのですが、難しい揺れ動く感情表現になると悩みながら演技をしていたことを思い出します。
小清水さんは普段はとても明るく元気キャラなんです。
でも、色々お話をしていると悩みを抱えているなぁと、感じることがありました。
当然、深くは聞きませんが、その二面性が小清水さんの魅力のひとつになっていたように思います。
あと、わたしは声優として生きる!と言う信念があり、それも小清水さんの個性を際立たせていたように思います。
ネットTVの収録時のハッチャケぶりに対してヤレヤレ困ったなの菊地さんのふたりの表情がとても印象的にわたしの記憶に残っています。
「舞-HiME&舞-乙HiME20周年フィルムコンサート」のトークタイムでも、どんどん突っ込んで来るし、時間も押しているので、困ったわたしがいました。
でも、機転の利く方で、トークのラストに「マテリアライズ」と締めの言葉をの提案をして、アリカとニナのふたりで叫んでくれて本当に良い締めになりました。
マシロ役のゆかなさん。
ゆかなさんとは「出撃!マシンロボレスキュー」から出演してもらっています。
とても頼りになるお姉さんです。
アリカ役菊地さん、ニナ役小清水さんが新人さんに近かったので、そのふたりを引っ張っていく頼もしい先輩声優さんでした。
ゆかなさん自身も学生時代から声優をやっていたので10代からの大変さを知っているのが、その頼もしさに繋がっていたようにも思います。
ゆかなさんとの会話で面白かったのは「わたし、省エネ声優なの」と。
普段の声はそれほど大きな音量で話す人ではないです。
でも、マイク前だと何だか効率良く声をマイクに届けることが出来ると話すのです。
それは、「技(テクニック)」なんですか?のわたしです。
本人は「ん?」と首をかしげます。
何となくですが、ゆかなさん自身が持っている才能と何年かやってきた技との合わせ特技なんだろうなと思うことにしました。
「舞-HiME」の二三さんに真白は静かなキャラクターでしたので、「舞-乙HiME」ではめちゃくちゃ元気キャラを、演じてもらいました。
本当に上手でいつも安心してアフレコに立ち会えました!
エルスティン・ホー役の栗林(みな実)さんは、「舞-HiME」からオープニング主題歌を歌ってもらっています。
「舞-乙HiME」では、歌だけでなく声優もやってもらいたいと考えました。
そこで、声質など聴いてハマるのはエルスだなって考えました。
儚さとか切なさを持った声だと思うのです。
2話のアフレコで、エルスのなかにある何処か自信のなさ、何かを隠しているが故の大人しさなどが良いなぁと思いました。
でも、主題歌の作詞のためにすでにエルスの運命を知ってる栗林さんは、色々考えながらアフレコをやっていたことを思うと、頭が下がります。
イリーナ・ウッズ役の比嘉(久美子)さん。
比嘉さんも「出撃!マシンロボレスキュー」で男の子と女の子の二役をやってもらっていました。その時の凛とした女の子の声、お調子者の男の子役の少しカスレの入った感じがイリーナを作ってくれると思ったのです。
はい、バッチリでした。
トモエ・マルグリット役の田中(理恵)さん。
田中さんは当時、色々な作品でヒロインをやっていました。
特に「機動戦士ガンダムSEED」のヒロインはアイドル風味で、でも芯のあるザ・ヒロインと思いました。
トモエは先々悪い方、敵側に行くキャラクターなのに、正統派ヒロインを多く演じている声優さんがある意味真逆の役を演じる、そのギャップが良いのではないかと考えました。
敵として現れたときの演技と声は目を見張るものがありました。
マリア役、松岡(洋子)さん。
わたしにとって、サイバーフォーミュラのランドルであり、「GEAR戦士電童」の銀河くんです。その頃のアフレコ本番の前に、控え室にいるときに何度も会話をしています。
そこで、普通の会話時の声も知ってますし、少年の役になった時の声も知っています。
「舞-乙HiME」のアフレコになるとマリアの持つ厳格な先生、先輩としての立ち居振る舞いがはまっており、若きオトメたちの先生役としてぴったりだったと思うのでした。
さらに、最終回あたりに若かりし頃のオトメの姿にマテリアライズして登場させたいと考えました。多分、ランドルがもう少し大人になったような金髪の麗人として存在するだろうと思っていましたら、キャラクターデザインの久行さんのデザインはわたしの考えなど上回る素敵な上がりでした。
ちなみに、若い時代の声を出すのは苦労していたことを思い出します。
後で聞いたら、最近は中年、初老の役が多くて、声と言うか喉がそっち向けになっていて、色々難しかったと教えてくれました。
でも、考えると、マリア先生の若い頃の活躍を見てみたいなと思う古里がおります。
セルゲイ役の小西(克幸)さんは、音響監督サイドからの提案だったと思います。
わたしは、「星方天使エンジェルリンクス」で準レギュラーとして何度も会っていましたので知っていました。誠実さを感じさせる声だなと言うのがわたしの印象です。
確かに、ナギに仕えるセルゲイには合うなと感じましたね。
サラ・ギャラガー役の沢城(みゆき)さん、今はとても大人の女性役として活躍しています。当時もその片鱗は感じさせる声と演技力でした。
わたしには、当時、少し性別不明なクリスタルボイスだなって感じたのです。
だから、ゲゲゲの鬼太郎役を射止めたのは、当然だなって思いました。
ちなみに、サラは、GEAR戦士電童にも出ています、探してみてください。
マーヤ・ブライス役の小林(由美子)さん、わたしは小林さんがデビューしたての頃にお会いしたこともあり、元気良さ満点で少年役が似合いそうだなって感じました。
などもあって、いつの日にそんな元気っ子を演ってもらいたいと考えていました。
不思議と縁がなかったので、やっと出演してもらったなって記憶があります。
ロザリー・クローデル役の高橋(美佳子)さん、実は高橋さんが高校生時代にビクターの知り合いが絡んでいるイベントで会っていました。
声優になるために、いまは色々勉強させているんだと、話していました。
わたしの印象は、ちょこまかと走り回っていたので、快活な娘さんだなって思いました。
その時の挨拶の声、その特徴のある声が耳に残っていました。
そして、声優デビューし、マーヤ役の小林さんと組んで色々お仕事をしていました。
わたしとしては「GEAR戦士電童」で3人組アイドルグループ「C—DRiVE」のなかの「サキ」ちゃんを演ってもらっており、その縁からも「舞-HiME」にも参加して欲しかったのですが、スケジュールが合わず、やっと「舞-乙HiME」での出番となりました。
アリカのお母さん、伝説のオトメ、レナ・セイヤーズ役は櫻井(智)さん。
ほんの少しだけの出演でしたが、伝説のオトメと言うオーラを放ってくれる声と包み込むような暖かさを感じる演技だったなって思い出します。
わたしは、「舞-乙HiME」の格闘ゲームのアフレコ時に色々お話をしましたが、とても朗らかで陽気な方でした。
アイドル声優の先駆者でもあると思うのですが、そんなこともあってレナ役には合ってるなと感じました。
そして、先日の訃報。本当に驚きました、とても残念です。合掌。
後は、「舞-HiME」から出て下さる方々、キャラクターの性格は変わっていなくても、置かれた立場、背負っているドラマが全く違っているなどで、ミドリ役の田村(ゆかり)さんは大変だったと思います。
シホ役の野川(さくら)さんも、妹キャラではなくなり先輩キャラになりましたので、あれ?と思ったのではないでしょうか?
また、「マキマキ」と呪文を唱える不思議ちゃんでしたので、野川さんは何だろう?と思いながらアフレコしていたのではないだろうか?と思います。
一度キャラについて質問された記憶があるのです。わたし、何と答えたのか?の記憶がなく、です。ごめんなさい。
シズル役進藤(尚美)さんは安定の京都弁だし、ナツキ役千葉(紗子)さんを守っているし。
ナツキ自身はいつも悩んでいるし、キャラクターの立ち位置が変わっても、何だか与えられている性格があまり変わっていないなって思います。
その代表は、ハルカちゃんです。
性格は「舞-HiME」と変わらず、それ以上にパワーアップしたキャラクターでした。
声優の柚木(涼香)さんとは、「星方天使エンジェルリンクス」の主人公リ・メイフォンを演ってもらってその時の声質、演技力、そして、本人が持っているおおらかさがとても印象的だったのです。
絶対に「舞-HiME」の遥役には適任だと思っていましたので、決まった時はホッとしました。
そんなハルカが、ピンチのアリカを助けるために現れるシーンは、絵も良いのですが、声優さんの演技も良かったです。
あと、印象的なのは、ミユ役の浅井(清己)さんです。わたしと会話をした時に、「アリッサお嬢様がいないのが寂しいです」と言われました。
「今回は鳥さんがアリッサなのでごめんなさい」と返しました。
浅井さんは、深優&ミユのような役はあまり演ったことがなかったとのことで、楽しんでやってくれていました。
いつだったか、「舞-HiME」のパチンコかパチスロの発売記念のイベントでゲスト出演してくれた時に、色々話した記憶がります。
とにかく、女性声優さんがどんどん増えてきていましたので、声がぶつからないように、なるべく声質の違う声優さんを起用しないといけないので、それは大変でした。でも、音響監督、バンダイビジュアルの国崎(久徳)さん、ランティス井上(俊次)さんの力を借りて、色々乗り切ったなって思います。
でも、アフレコ現場に30人近く揃った時は、とても壮観でした。
全員スタジオに入って、アフレコをやれたそんな時代。
コロナ禍のなかのバラバラで収録するアフレコを思い出すと、理想的な収録の出来た時代だったなって思います。
最後、小清水さん曰く「舞-乙HiME」のアフレコは朝10時で、台本を読んで朝からどんよりとした気分で行くのは大変だったと、とても辛かったと、「舞-HiME&舞-乙HiME20周年フィルムコンサート」のトークタイムでガンガンと攻め込んできました。
「ごめんなさい」と謝るしかない、わたしでした。

古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』制作統括として参加。現在、ゲーム等参加、新企画を準備中。
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