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記事: 第81回:『サイバーフォーミュラSIN、マシン凰呀は河森正治さんのデザインです』

第81回:『サイバーフォーミュラSIN、マシン凰呀は河森正治さんのデザインです』

「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA(以降、サイバーSAGA)」と「新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN(サイバーSIN)」にも新型マシンがいくつかあります。

 

当時、福田(己津央)監督からテレビシリーズからOVAシリーズ「11」「ZERO」までメカデザイナーの「河森(正治)」さんにマシンデザインを描いてもらっています。

そこで、「サイバーSAGA」も「サイバーSIN」も河森さんにお願いすることになりました。

 

「サイバーSAGA」では、「νアスラーダ」、「ガーランド」、「アルザード」、「エクスペリオン」、「イシュザーク」、「ミッショネル」、「エル・コンドル」、「カウンターアロー」、「ストラトミッショネル」など描いてもらいました。かなり主要マシンが一新されたのです。

1年以上かけて描いてもらったと記憶しています。

 

福田監督、河森さん、設定制作、わたしの4人で打ち合わせをして、ラフ画がたくさん上がってきました。

また、1台のマシン案として数種類描いているマシンもあるので、その場合福田監督が見て、セレクトとなります。

またそれぞれに意見とかお願いメモを作成します。

そして、打ち合わせをしてクリンナップに進みます。

 

例えば、「アルザード」は5種類のラフ画があります。そのなかから、福田監督がセレクトします。わたしは、「アルザード」のどのデザインも見て感じたのは、映画「エイリアン」に出てくるエイリアンみたいだなって思いました。

そして、決まったデザインがさらに、ヌメッとしていて気持ち悪いんです。

ナメクジのような、です。

キャノピーがボディと同じ色味で質感なのもよりエイリアンになっている気がします。

ライト?がひし形で4つあるのも、気持ち悪さを醸し出しているのかも知れません。

 

さらにさらに「アルザード」が良いなって思ったのは「敵マシン」の存在感があることです。

速そうだし、強そうだし……??、宇宙人ぽいし。

 

でも、これって後の無人攻撃戦闘機(プレデター、リーパー)のようなニュアンスで、人が乗っていないように見えるのもポイント高いデザインだと思います。

実際、フィルが薬でマシンに対応してるので、ある意味マシンに制御されているのが見え隠れしたデザインが秀逸だと思うのです。

 

どのマシンも、しっかりキャラクターがあるのが素晴らしいと思うのです。

車なのに顔があると言うか、個性があると言うか、です。

 

さらに、それぞれのチームカラーをしっかり残しつつ、企業体としても新型マシンとして開発している風になっているデザインなのも、わたしの推しポイントです。

いわゆる、時間が経っていると言う、きちんと進化しているのが見て取れるのが素敵です。

 

さて「サイバーSIN」では、新型マシンの新デザインは、「シュピーゲル」、「凰呀」です。

わたしは、「シュピーゲル」を見たときに思ったのはこれです!

「絶対に乗りたくない!!」です。

だって、ほとんど寝てる体勢で乗って(?)いるんですよ。

いくら補助カメラが付いていても、顔の角度から走っているコースが見えるのか?です。

これは、あまりにも低重心すぎると思いました。

もうね「グーデリアン、あなたは偉いよ」と思いましたよ。

 

ちなみに、どのマシンにせよ、もし本当に存在していて乗れるとしても、乗れません。

もし、ちんたらちんたら走って良いなら、乗りますけど……、でもやはり怖いね。

 

さて、「サイバーSIN」の主役マシンと言っても良い、名雲が加賀に渡すべく「凰呀」の登場です。これは、「νアスラーダ」に匹敵するマシンとしてデザインされているので、素直にカッコいいですね。

 

「サイバーSAGA」に出てきたマシン「アルザード」のオリジナルマシンが「凰呀」です。

そして、この「凰呀」こそが、名雲のお兄さんが作ったマシンです。

コンセプトとして、「アスラーダ」の兄弟車なので、フォルムなども似ています。

でも、「アルザード」のプロトタイプだと思わせるデザインでもあります。

この絶妙なバランスが本当に上手だなって思います。

 

デザインから、ストーリーが透けて来ると言うか、見えて来るんですね。

本当に絶妙です。

あと、河森さんは、シナリオに書いていなくとも、レースのルール(レギュレーション)変更案を考えてくださったりします。その新しいルール(レギュレーション)に従って、レースの内容が変わったりもします。これもきちんと時間が経っており、進化しているリアリティが出る要因だと思うのです。

 

とにかく、わたしが感心したのは、河森さんは「サイバーフォーミュラワールド」において、自動車の各メーカーの役割をひとりで担っていると言うことです。

 

「サイバーSAGA」の原稿でも書いたと思いますが、河森さんと電話をしたときに日本や海外の車メーカーの話色々で盛り上がってしまいました。

わたしも車は好きですが、河森さんには全く敵いません。

本当に、メーカーのこと、車デザイン、車の歴史など良く知っています。

あと、車の構造なども詳しいです。

 

あと、当時の電話で話したことで覚えているのは、わたしが好きな「ジョルジェット・ジウジアーロ」のデザインの話もしました。

特に、「ジウジアーロ」は、マーチやピアッツア、アルシオーネSVX、フロンテクーペなどの名称を出して、良いデザインですよね、と話した記憶があります。

あと、カメラメーカーのニコンから、F3EMF4F5などのデザインもやっています。ちなみに、わたし「ニコンEM1980年発売)」を持っています。20歳頃のときに買ったカメラです。

いまでも、シャッターが切れますし、棚に飾って眺めています。古いカメラは中身が金属なので重いのです、それが良いのです。

わたしは、ジウジアーロのデザインでは、直線の使い方が好きなのです。

 

それと、「ルイジ・コラーニ」も話もしたと思います。こちらもキャノンのカメラ「T-901986年発売)」通称タンクのデザインを手掛けているので後のキャノンのデザインの方向を作ったカメラだったことなど話ました。ちなみに、ルイジ・コラーニさんのデザインは、曲線(曲面)の方向だったなと思います。

 

河森さんが、若い頃にクルマメーカーで車のデザインをしたかったなんてことも話していた記憶があります。でも、その若い頃ってすでに「マクロス」の「バルキリー」を描いていたのでは?と思ったのは内緒です。

 

本当に河森さんってメカが好きなんだなって思いました。さらに、世界観を作るのも好きなんだと思います。そして、デザインセンスの源は、「好きと知識欲からの感性の感度の高さ」なんだろうなと勝手に思います。

 

あと、福田(己津央)監督と河森さんのデザインのことを話しているときに、サイバーマシンに翼を付けてタイヤを取るとジェット機になるね、と。

「なるほど、座布団1枚」と言いたくなりました。

 

 

おまけ

メガハウスさんが発売しているヴァリアブルアクション「凰呀」や、サイバーフォーミュラコレクションマシンの商品群は、どれも設定に準じておりかなりカッコいいですね。

 

 

  

古里尚丈(ふるさとなおたけ)

196153日生まれ。青森県出身。

1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。

20112月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、漫画原作、新企画を準備中。

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