第91回:『ファイ・ブレイン~パズルデザイナーさんのお話』
今回は、それこそ「パズルタイムの始まり」なのです!
正しくは、パズルを作ってくださるスタッフ探しの始まりなのです。
放送時、オープニング映像のなかのスタッフテロップとして「パズルデザイナー」と表記されました。
これは、テレビアニメーションでは世界初の表記ではないでしょうか?
それくらい新しい取り組みのオリジナルアニメーションでした。
2010年梅雨時期から夏にかけて、わたし非常に悩んでいました。
まだあの頃は、「パズルデザイナー」と言う言葉はありませんので、あえて言うなら「パズルを考えて作ってくださるスタッフ」さんを知らないし、近くにはいないのです。
メカデザイナーさんはいますし、知っています。
お料理デザイナーさんもいます。「ミスター味っ子」をやったとき料理デザインを描いてくださったアニメーターさんがいました。
当然、美術デザイナーさんもいますし、知っています。
でも、「パズルを考えて作ってくださるスタッフ」は、アニメの制作現場にはいません。
悩みました。
高野さんにも相談しました。
そして、たどりついたのは、パズル関係の書籍を出している出版社はどこ?でした。
「そうだ、学研さんがパズル本を出している」となりました。
わたしは、「舞-HiME」や「舞-乙HiME」でとてもお世話になった学研「メガミマガジン」の初代編集長の織田(信雄)さんとは良くご飯を食べていましたので、素直に聞いてみることにしました。
開口一番、「パズルの編集部を紹介してやるよ」と言うことになりました。
わたしと高野さんとふたりで、学研、パズルの編集部に行きました。
織田さんの紹介もあって、当時の編集長さんは、企画の意図を汲んでくださり柔軟にアイデアを出してくれる人材は誰だろう?と考えてくださりました。
編集長さんは、となりに座っていた担当編集さんと顔を見合わせて「郷内(邦義)さんだね」と言うのです。
「誰です、その方は?」と、問いかけるわたしたち。
郷内さんは、数少ないプロのパズル作家だと、教えてもらいました。
学研さんから郷内さんに連絡をしてもらいました。
数日後、学研さんから郷内さんが興味があると連絡が来ました。
「是非会いましょう」と言うことになりました。
ここからが問題でして、どこで会ったか?の記憶がないのです。
学研で出会ったのか?
郷内さんのパズルの部屋に行ったのか?どこかの喫茶店で会ったのか?上井草に来てもらったのか?
覚えていないのです。
ちなみに郷内さんの仕事部屋は、パズルだらけなのです。
想像よりたくさん置いていました。思い出すと懐かしいです。
兎にも角にも、郷内さんに改めて企画書を見てもらい、説明しました。
郷内さんは、ニコニコしながら「面白そうなのでやります」と言ってくださいました。
それから、郷内さんは全てのシナリオ打ち合わせに参加しました。
どうしても、締切があるときは来れないこともありましたが、ほぼ皆勤賞だったと思います。
郷内さんはアニメのシナリオ打ち合わせに参加したことがないので、シナリオ打ち合わせで何をやるのか?を知りません。
さらに、郷内さん自身なにをやるのか?何を望まれているのか?などを、知る必要があります。アニメ制作現場側も手探りでしたし、郷内さんも色々考えてくださいました。
進み方としてシリーズ構成が書いたメモがあって、各話のライターがそれぞれプロットを書くのですが、どのタイミングでパズル案を考えるのか?作るのか?です。
最初郷内さんは、メジャーなパズルをいくつか用意してくれました。
使えるパズルがあれば、使ってください、とのことです。当然、アレンジはします、と。
そして、用意したパズルが消化されることで、新しいパズルを考えるシーンが増えていきます。「ファイ・ブレイン」のためにどんどん新しいパズルを作ることになったのですが、実際いくつ作ったのかしら?
10話くらい進んだ頃には、郷内さんも各話ライターも、どう進めるのがベストなのか?をみつけていました。
シリーズ構成の関島さん、各ライター、佐藤監督から主人公のカイトたちにやらせたいアクションや事件などの提案を説明してもらうことで、郷内さんが家に持って帰って幾つかのパズルを考えて次週にアイデアメモを提出することもあります。
実際、厚紙を切って、発泡スチロールなどを用いてパズルを作って持ってくることもありました。
慣れてくると、関島さんの書いた構成メモから幾つのかのアイデアを郷内さんが先に考えて来ることもありました。
パズルが物語やキャラクターの魅力を引き出せるのか?
また、そのパズルが絵にしたときにアニメ的面白さが出るのか?
など踏まえて、意見、感想をみんなで話し合った記憶があります。
中盤、後半になると、佐藤監督、シリーズ構成の関島さん、各話のライター氏も、遠藤(広隆)シリーズディレクターも梅崎(淳志)プロデューサー、高野さん、Eテレの関係者の皆さまも、パズル案を考えることがありました。はい、古里は、無理でした、とほほ。
そうなると、郷内さんがみんなを見てパズルを作れるようになってきましたね、と、笑顔で話すことがありました。
正直、世界で初めての「パズル」を解くアニメなのですから皆さん模索だらけなのです。
色々な「解」をみつけながら、75話数作ったと思い出します。
ちなみに、当時、毎週のシナリオ打ち合わせの恒例行事が生まれました。
毎回、郷内さんが、ご自身が持っているパズルを打ち合わせ時に持ってくるのです。
そのパズルを手にとって遊び方を教える郷内さん。
おずおずとパズルをさわる監督、ライターたち、「解」が分からず四苦八苦することになるのです。
その様子を、優しく見ている郷内さんの笑顔が忘れられません。
実は、数年前に天に昇ってしまった郷内さんは天国で色々なパズルを作っているに違いないと思うのです。
世界でも類を見ないパズルを作って、パズルを解く主人公やライバルたちの物語作りが始まりました!!
「パズルタイムの始まりだ!!」
主人公カイトの決め台詞があります。
これは、言いえて妙だなって、いまでも思います。
まさにこの作品にぴったりなキャッチコピーです。

古里尚丈(ふるさとなおたけ)
1961年5月3日生まれ。青森県出身。
1982年日本アニメーションに制作進行として入社。1985年スタジオ・ジブリ『天空の城ラピュタ』制作進行。1987年サンライズ入社『ミスター味っ子』『勇者シリーズ』等、制作進行・設定制作・制作デスク・APを務め『新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA』からプロデューサー就任。『星方武俠アウトロースター』『GEAR戦士電童』『出撃!マシンロボレスキュー』『舞-HiME』『舞-乙HiME』他、オリジナルアニメーションを14作企画制作。
2011年2月企画会社、株式会社おっどあいくりえいてぃぶを設立。『ファイ・ブレイン~神のパズル』や『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』で企画・プロデューサー。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』企画協力、『グレンダイザーU』アソシエイトプロデューサーとして参加。現在、漫画原作、新企画を準備中。




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